Yahoo!ニュース

都会の川の見えない危険 横浜市の川で小学5年が溺れた水難事故 何が起こったか? #専門家のまとめ

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
都会の川(写真:イメージマート)

 横浜市で小学5年男児が川で溺れました。各メディアの現場写真を見比べると、都会ならではの川の特徴が見て取れます。その特徴はそのまま見えない危険となり、今回の事故につながった可能性があります。都会の川は、私たちがイメージしている自然の川とは異なり、防災施設だと認識しなければなりません。

ココがポイント

▼現場は住宅地を流れる川、でも上空からは何か水路のように見える

【速報】川遊びをしていた小5男児が溺れ死亡 横浜市(日テレNEWS 7/5(金) 18:43配信)

▼絶望的な斜面、水面からほぼ垂直に立ち上がるコンクリート壁面で、これでは這い上がれない

【速報】「川に流されたかも…」119番通報 小5男児死亡 友人4人と川遊び中か(テレビ朝日 7/5(金) 20:43配信)

▼写真中央には床固(とこがため)工。この前後で深さが急激に変わるため、水難事故が起こりやすい

横浜・旭区の帷子川で小5男児死亡 友達4人で川遊び中、深みにはまって溺れたか(神奈川新聞社 7/5(金) 19:20配信)

▼親水目的で所々に川に下りることのできる階段がある。階段がエントリーポイントか?

水質向上で生物増加(タウンニュース 2021年5月20日)

エキスパートの補足・見解

 現場となった帷子川は洪水時に大量の水を流すために水路化されています。ほぼ垂直に切られた壁面は防災施設と言えます。人が常に川の中にいることは想定されていません。床固工のすぐ下流は洗堀という現象で急に深くなることがあります。これまで、歩きながらの沈水事故の多くが床固工のすぐ下流で発生しています。深さに気が付かないためです。その一方で親水目的で階段施設も併設されています。ここがエントリーポイント、つまり川に入った場所となりえます。防災と親水、この両立施設が今回の事故にとって見えない危険となりました。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

斎藤秀俊の最近の記事