新聞の部数減少「デジタル化」で生き残れるのか
例年の傾向と同じく、2022年も新聞の発行部数が減少したことが話題になっています。
「紙」の部数が減っている中、「デジタル化」によって新聞は生き残れるのでしょうか。日本経済新聞が発表した最新のデータから考察していきます。
日経電子版は伸び悩み?
日本新聞協会の発表によれば、2022年の新聞の発行部数は約3085万部、昨年から6.6%減となり、減少傾向が続いていることが分かります。
スマホ時代に紙の発行部数が減るのは想定の範囲内といえますが、ここで気になるのは「デジタルへの移行は進んでいるのか」という点です。
デジタル移行の成功事例とされる日本経済新聞は、半年ごとに部数や会員数などのデータを発表しています。2023年1月16日には最新の数字が明らかになりました。
まずは朝刊販売部数について、2017年からのデータを並べたのが以下のグラフです。こちらは紙なので、減少傾向が続いています。
これに電子版を加えたのが以下のグラフです。傾きは緩やかになるものの、減少傾向にあることは変わりません。日経新聞の購読数は、紙と電子版の合計でも減り続けているというわけです。
電子版の有料会員数を示したのが以下のグラフです。これまで伸び続けてきたものの、紙の減少ペースを補うほどではない、ということが読み取れます。
また、2021年7月に80万を超えたあたりから増加ペースは緩やかになっており、伸び悩んでいるように見えます。
日経電子版には「無料会員」も存在しています。無料会員を含めた会員数全体としては、順調に増加が続いています。
このことから、無料会員の増加に有料会員の伸びが追いついていないことがうかがえます。2023年1月の会員数594万に対して、有料会員は82万。有料会員の割合は13%台で、これは2017年1月の15%から下がっています。
一方、1月19日に最新の数字を発表した朝日新聞デジタルでは、会員数580万に対する有料会員は30.5万と、有料会員の割合は5%強にとどまっています。これと比べれば、日経電子版はかなり健闘しているといえそうです。
無料会員の制限は厳しくなる?
紙の減少ペースが止まらない以上、各社は生き残りをかけてデジタルへの移行を進めていくと考えられます。筆者の注目ポイントは「無料会員」や「料金プラン」です。
以前の日経電子版では、無料会員が読める記事の本数は「月に10本」でした。しかし2022年11月ごろから、アカウントによっては月に1〜3本に減ってしまったとの報告がSNS上に相次いでいます。
他社の例では、朝日新聞デジタルが2022年8月に無料会員を廃止しています。このように、無料会員を制限、あるいは廃止する動きが今後加速するかもしれません。
料金プランはどうでしょうか。日経電子版は月額4277円で、それより安いプランはなく、なかなかの強気です(ポイント還元を得られる契約方法はあります)。
一方、朝日新聞デジタルは有料記事を50本まで読める月額980円のコースなど、複数の料金プランを提供しています。
海外では、アップルによる月額9.99ドルのサブスク「Apple News+」が複数の新聞と提携しています。サブスクに一部記事を提供することで読者層の拡大を狙う新聞が日本でも現れるかどうか、注目しています。
これらを踏まえた上で、そもそも新聞というパッケージが本当にデジタルに向いているのか、という疑問を感じるところはあります。
ネット上では、新聞のそれぞれの「面」に特化したコンテンツが提供されています。象徴的な事例としては、元日本経済新聞の後藤達也氏が月500円のサブスク登録者を大きく伸ばしています。
スマホ最適化が進む中では、AIを駆使して個人の興味関心に沿ったコンテンツを見せる競争が始まっています。新聞で例えるなら、各家庭に異なる内容の新聞が届くようなものです。
新聞は「幕の内弁当」に例えられるように、自分が興味のない情報も目に飛び込んでくることがメリットとされています。しかし、現時点ではそれが弱みになりつつあるように思います。
「配達」には新たな可能性も
新聞の発行部数は減っているものの、「新聞配達」には別の視点から注目しています。それは物流におけるラストワンマイルを担う役割です。
Eコマースの拡大によって荷物の量は増え続けているものの、より早く、より安くという消費者の要求になかなか追い付けない状況になっています。
その中で、アマゾンは町の商店などに荷物の配達を委託する「Hubデリバリー」を始めており、対象として「新聞販売店」も入っています。
このように、新聞が減ることで配達に余裕が生まれるなら、別のものを運んでほしいというニーズが高まりそうです。