6賢人の叡智を結集した一夜限りのディナー 山梨に焦点が当てられた理由とは?
フルーツ王国
フルーツ王国といえば、山梨です。昼夜の寒暖差が大きかったり、日照時間が日本で最長規模に長かったり、降水量が少なかったりと、農作物をつくるのに適した気候となっています。ブドウ、モモ、スモモは全国で最大規模の収穫量となっており、海外にも輸出されているほど。
ブドウの名産地であることからもわかるように、ワインも非常に有名です。山梨は日本のワイン生産の発祥地であり、現在は約80社のワイナリーを擁し、国内における約20%のワインを生産しています。ワインはフランス料理をはじめとする美食と相性が抜群なだけに、山梨では美食=ガストロノミーも発展しました。
この山梨の素晴らしい魅力を、東京にいながらにして存分に体験できる機会があります。
山梨を堪能する晩餐
それは、パレスホテル東京で2023年5月16日の一夜限りで開催される「Essence of Japan-山梨を堪能する初夏の晩餐-」。
「Essence of Japan」は、パレスホテル東京が、日本の豊かな地域文化の魅力を発信するイベント。これまで2回行われて大変好評を博し、今回で3回目を迎えます。
・日本の名旅館の魅力
2022年1月14日~3月18日、合計8回
・伝承すべき日本の伝統と芸術
2022年5月31日~7月1日、合計4回
・山梨を堪能する初夏の晩餐
2023年5月16日
テーマは初夏の山梨で、地域に焦点を当てるのは初めてです。
イベントの目玉として、世界で評価される中央葡萄酒株式会社の醸造家三澤彩奈氏によるグレイスワイン、山梨県が擁する2つの名店、「La Cueillette」オーナーシェフ山田真治氏と「TOYOSHIMA」オーナーシェフ豊島雅也氏を招聘しました。
さらには、パレスホテル東京で総料理長を務める齋藤正敏氏と統括ペストリーシェフの窪田修己氏がコラボレーションして、山梨の魅力を存分に伝えるガラディナーとなっています。
コース内容
「Essence of Japan-山梨を堪能する初夏の晩餐-」で提供されるコースは次の通りです。
料理
・アミューズブーシュ
「杜苑と山梨の野菜達山梨産山羊のミルクのブランマンジェ」/パレスホテル東京 総料理長 齋藤正敏氏
・前菜
「甲斐路シャモと小松菜のショーフロワ」/「La Cueillette」山田真治氏
・前菜
「山のパテ アンクルート ジビエ サラダ ピクルス」/「TOYOSHIMA」豊島雅也氏
・魚料理
「八ヶ岳湧水鱒の低温調理アスパラガスとブラッドオレンジ2種のソース」/山田氏、豊島氏合作
・肉料理
「甲州ワインビーフフィレ肉のローストキュヴェ三澤赤ワインのエッセンス山のアクセント」/山田氏、豊島氏合作
・デザート
「山梨産さくらんぼのデクリネゾン」/パレスホテル東京 統括ペストリーシェフ 窪田修己氏
ワイン
・グレイス ロゼ 2022(三澤農場/メルロ、カベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン)
・Grace Blanc de Blancs 2015(三澤農場/シャルドネ)
・あけの 2020/グレイスワイン 100周年記念ラベル(三澤農場/メリタージュ)
・三澤甲州 2021(三澤農場/甲州)
・キュヴェ三澤 プライベートリザーブ 2009(三澤農場/カベルネソーヴィニヨン)
八ヶ岳湧水鱒や山羊のミルク、甲州ワインビーフやジビエなど山梨食材をふんだんに用いたメニューなので、同じテロワールを有するグレイスワインがぴったりマリアージュします。
この中からいくつかのメニューを紹介しましょう。
アミューズブーシュ
杜苑と山梨の野菜達山梨産山羊のミルクのブランマンジェ
齋藤氏いわく「この後の料理を邪魔しないように意識しました」というアミューズは、2品構成。
右手にある山羊のミルクのブランマンジェはオリーブオイルの香りと海の塩がアクセントになっています。
左手にある山梨の野菜をたっぷりと使ったサラダは、シーザーサラダのように混ぜてからいただきます。チコリ、ビーツ、ペコロス、新ジャガイモ、クレイジーピーなど色とりどりの野菜に、ビオラ、ペンタス、ボリジといったエディブルフラワーで華やかに。フォームは柚子風味で、ヤマメのアンチョビやパルメザンチーズ、シーザードレッシングが添えられ、ブラックオリーブと焦がしたタマネギのパウダーをトッピングして旨味も加えています。温もりある木製のフォークとスプーンで食べると、野菜がもつ土の風合いが伝わってくるようです。
前菜
山のパテ アンクルート ジビエ サラダ ピクルス
山のパテは、豚肉2割、羊肉1割、あとは鹿肉や鴨などのジビエといったバランス。胡椒の代わりに山椒を使い、フランスの伝統料理を和のニュアンスに仕上げました。生地の焼き加減もしっかりめで、食欲をかきたてる香りとさっくりとしたテクスチャが味わえます。
豊島氏は「しっかりと血抜きしているので、ジビエは全く臭みがありません。そのため、あえてレバーを多く入れて野性味をだしています。三澤さんのお母様がつくった干し柿が、よいアクセントです」と説明します。
魚料理
八ヶ岳湧水鱒の低温調理アスパラガスとブラッドオレンジ2種のソース
山田氏と豊島氏の合作料理。塩漬けにしてから燻製した八ヶ岳湧水鱒は、身の鮮度が感じられるミキュイ状に。山田氏によるさわやかな山梨市・矢崎屋ファームのブラッドオレンジのソースと、豊島氏による「甲州」を隠し味にしたオランデーズのエスプーマを添えました。旬のアスパラガスは、シャリシャリ感を残した半生のグリルと、ニンニクとパルメザンチーズと合わせたピューレに。鱒子のプチプチっとした食感が癖になり、クルミとコリアンダーのパウダーも香り高いです。
山田氏いわく「野山の風景をイメージした一品です。八ヶ岳湧水鱒はきめこまやかな肉質。柑橘類と合わせて、さわやかに仕上げました」ということです。
デザート
山梨産さくらんぼのデクリネゾン
窪田氏が「サクランボの様々な可能性を引き出しました」というアシェットデセール。
フレッシュなまま、コンポート、ソルベ、グラサージュでコーティングした球体ムース、豊島氏から提供された蜂蜜とキルシュを効かせたなめらかなクリームと、様々な調理法によって、サクランボの魅力を引き出しました。
底にあるのはクランブルのクッキー。ほんのりと差す塩味が、サクランボの甘味をより際立たせています。
グレイスワイン
料理にペアリングされたグレイスワインも紹介しましょう。
最初に供される「グレイス ロゼ 2022」は骨格を大切にした辛口のロゼワイン。華やかな色合いも春に相応しく、フレッシュさと厚みを兼ね揃えた一本です。三澤氏いわく「3月に瓶詰めしたばかりです。5月という暖かくなってくる時季にご提供したいと考えました。単一畑のブドウを使っているロゼはとても希少です」。
「あけの 2020」はボルドーブレンドの赤ワイン。ベリー系のアロマが豊かで、パテアンクルートのジビエにぴったりな味わいです。グラフィックデザイナーの原研哉氏が、2023年の創業100周年を記念した特別ラベルを製作。金箔をわずかに腐食させ、歴史の積み重ねを感じさせるデザインに仕上げています。
「三澤甲州 2021」は、これまでの甲州とは一線を画する白ワイン。味わいも違うので、2020年からラベルも名前も刷新しました。ふくよかな香りと複雑な深みがあり、八ヶ岳湧水鱒の味わいをより曲線的に膨らませます。
三澤氏は「シェフにも相談して赤ワインの後に白ワインにしました。魚料理にはシャルドネを合わせることが多いですが、あえて甲州をマリアージュさせています。私自身も父も祖父も甲州に捧げてきました」と思いを吐露。
2014年に「キュヴェ三澤 明野甲州2013」が世界最大のワインコンクールで日本ワイン初の金賞を受賞。これにより、甲州というブドウ品種が世界から評価されるようになったという背景があるだけに、三澤氏の甲州へのこだわりは並々ではありません。
山梨の魅力を発信
パレスホテル東京総支配人の渡部勝氏は振り返ります。
「パレスホテル東京は開業以来、日本ならではの様々な文化にクローズアップしたイベントを実施してきました。昨年リニューアル10周年を記念して、日本の地域文化の魅力をもっと伝えていこうと『Essence of Japan』を始めました。今回はこの東京で、山梨の魅力を大いに発信したいです」
最初に山梨にフォーカスしたのは、山梨県生まれの飲食店プロデューサー宮下大輔氏と縁があったからだといいます。山梨を皮切りにして、他の地域についても焦点を当てていく予定です。
「Essence of Japan-山梨を堪能する初夏の晩餐-」開催について、宮下氏は「山梨の食をもっと充実させていき、みなさまに知っていただきたいです」といいます。
これを受けて、三澤氏は「記憶に残る会にしたいですね」、山田氏は「山梨の食材をアピールする場があるのは嬉しいです」、豊島氏は「山梨らしさを表現できれば」と力を込めます。
ゲストが待ちに待った第3弾ということで、予約は既に満席となりました。「Essence of Japan」は今後も続いていくので、次回以降の開催を心待ちにしたいです。