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阪急NYフェアに、世界が見逃せない最旬ストリート&サステイナブルブランドがやって来る

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
「無駄にしないファッションデザイナー」ダニエル。(c) Kasumi Abe

機内でもどこでも気にせず熟睡できるという強者でもない限り、14時間もの空の旅は長い。しかしそんな長旅をがまんしてニューヨークまで行かずとも、日本で当地の最新かつ、クリエイティブな風にあたることができる。

食やファッションの最先端を体感できる、毎年恒例の「ニューヨークフェア」。5月8日(水)~14日(火)、大阪の阪急うめだ本店で今年も開催される。

2011年にスタートし8回目を数える今年は、ストリートスタイルやスポーツをテーマにしたグルメやファッションがフィーチャーされるそうだ。フードは、ヤンキーススタジアムの「ベアバーガー」が関西初登場するほか、キャビア付きのロブスターロールなども上陸するという。

最旬ストリートスタイルとして、フェアに初登場するのは、ブルックリン発のゼロ・ウェイスト・ダニエル(zero waste daniel)

自身がモデルにもなっているzero waste daniel。さまざまなメディアにもフィーチャーされ注目されている。
自身がモデルにもなっているzero waste daniel。さまざまなメディアにもフィーチャーされ注目されている。

ゼロ・ウェイスト・ダニエルはただカッコイイだけのストリートブランドではない。ニューヨークの意識が高い層から特に支持されている「ゼロウェイスト」(廃棄ゼロ、モノを粗末にしない)に取り組んでいる、新進気鋭の循環ファッションだ。

ブランドがスタートしたのは2017年夏。近年、当地でお決まりとも言えるポップアップ形態で始め、翌18年に店内をリノベーションして本格的にスタートした。

Tシャツ($45)、フーディー($165)、パンツ($130)などすべて一点モノ。(c) Kasumi Abe
Tシャツ($45)、フーディー($165)、パンツ($130)などすべて一点モノ。(c) Kasumi Abe

廃棄ゼロのファッションとは? 「無駄にしないファッションデザイナー」ダニエル・シルバースタイン(Daniel Silverstein)に、彼が目指すもの、そしてフェアへの意気込みについて聞いた。

ダニエルのショップ兼作業場にて。壁にあるのはスクラップ(端布や不要になった素材)。(c) Kasumi Abe
ダニエルのショップ兼作業場にて。壁にあるのはスクラップ(端布や不要になった素材)。(c) Kasumi Abe

無駄にしないデザイナーが考える廃棄ゼロファッション

── ブランドのポリシーは、その名の通り無駄にしないってこと?

その通り!「再利用、再考、リロール*、サステイナブルな服とファッション小物、リサイクル素材、ハンドメイド、すべての人に」をスローガンに掲げてやっている。ファクトリー(縫製工場)数社と提携し、そこで不要になった裁断後の生地やスクラップ(捨てられようとしている素材)をもらってきて、ここで洋服づくりに利用したり、パッチワークに使ったりしている。

僕が知る限り、 100%ゼロウェイストで洋服をつくっているのは、国内ではここだけだと思う。

(* reroll: パッチワークを使った彼独自の循環技法)

このデニムジャケットは、古着にスクラップ(不要になった生地や素材)をアレンジしたもの。どれも一点モノ。(c) Kasumi Abe
このデニムジャケットは、古着にスクラップ(不要になった生地や素材)をアレンジしたもの。どれも一点モノ。(c) Kasumi Abe

── モノづくりに目覚めたのはいつ?

子どものころからモノをつくるのが好きで、僕が11歳のとき、家族ぐるみの付き合いをしている方がミシンを買ってくれたんだ。それで13歳ぐらいから本格的にドレスやバッグを自分で作り出した。

── 大学もファッション系?

そう。14歳のときにFIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)の土曜日のデザインコースに通うようになって、大学もFITに入学。在学中、ドレスブランドのキャロリーナ・ヘレラ(Carolina Herrera)でインターンをして、そのときに生地をどこも捨てることなく裁断する方法を自分で考案した。でもドレスやガウンは消費者が限られるけどフーディーやTシャツは性別や年齢関係なくすべての人が着てくれる。だからストリートファッションに転向したんだ。

機械を買ったときにボックスに付いていたプロテクションも「捨てない」。(c) Kasumi Abe
機械を買ったときにボックスに付いていたプロテクションも「捨てない」。(c) Kasumi Abe

── ゼロウェイストに注目するようになったきっかけは?

もともと子どものころは、どんなモノにも価値があると教えられて育った。でもプロとして洋服をつくるようになると、周りから、スクラップには価値がない(だから捨てられる)と聞かされるようになって、そうじゃないよな〜って内心思っていたんだ。ニューヨークは市が2030年までに埋立地に廃棄されるゴミ量をゼロにするという目標を掲げているけど、僕からしたら「なぜ今じゃないんだ?」って思っちゃう。

切れ端でデコレーションされた店の試着室。(c) Kasumi Abe
切れ端でデコレーションされた店の試着室。(c) Kasumi Abe

僕は基本的にモノをリサイクルするから、うちの店にはゴミ箱というものはないんだよ。商品のタグも再利用し、買い物袋も用意していない。もちろんホコリなどが出るからゴミ袋はあるけどね。完璧とまではいかないけど、僕なりのベストを尽くしているよ。

「僕にとって、作業は料理をしているようなものさ」。(c) Kasumi Abe
「僕にとって、作業は料理をしているようなものさ」。(c) Kasumi Abe

潮流として、リサイクルとかサステイナブルをファッションにまで求められていない傾向が実際のところ「まだ」ある。人々が価値をわかるようになり認識がどう変わっていくか、それが僕に課されたチャレンジさ。ヨガの練習のようだと思っている。みんなそれぞれのスタイルがあるよね。僕も完璧ではないし、みんなもそうだと思う。ゴミを減らすために頭を固くしてただ闇雲に取り組めばいいものでもなく、それぞれのスタイルで柔軟に向き合えばいいんじゃないかな。

タイヤを再利用した「Alchemy Goods」などもお店で取り扱っている。(c) Kasumi Abe
タイヤを再利用した「Alchemy Goods」などもお店で取り扱っている。(c) Kasumi Abe

── 大阪でのフェア楽しみだね。ところで日本には行ったことある?

実は、日本はもとよりアジア自体が初めてなんだ。日本の皆さんにブランドを紹介できるのを、とても楽しみにしている。それと、どこの店がおいしいかぜひ教えてほしいな。

「初の日本が楽しみ」とダニエル。この笑顔に会いに行こう!(c) Kasumi Abe
「初の日本が楽しみ」とダニエル。この笑顔に会いに行こう!(c) Kasumi Abe

── 今後の抱負は?

まずは大阪でのポップアップを成功させること。それとまだ発表ができないんだけど、9月にワクワクすることが待っているんだよ。時期がきたらお知らせするからね。楽しみだな!

zero waste daniel

369 Hooper St., Brooklyn, NY 11211 U.S.A.

Instagram

New York Fair2019

5月8日(水)~14日(火)、大阪、阪急うめだ本店9階催場

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zero waste danielで買い物予定の人はトートバッグなどを準備して臨もう(名刺交換もなし!)。

(Interview, text and photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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