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使い捨てプラスチック製レジ袋廃止へ ー NYでも進む「脱プラ」「廃棄ゼロ」の動き

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
茶色の紙袋を提供するスーパーも多くなったが、プラ製レジ袋をいまだ使っている店も。(写真:ロイター/アフロ)

ニューヨーク州で、スーパーやドラッグストアなど小売店でのプラスチック製レジ袋やポリ袋の提供を禁ずる法案が、先月31日に可決された。

2016年より実施のカリフォルニア州に続いて全米で2つ目の州として、2020年3月から法律が施行される。(脱プラ化が進むハワイも、州独自の規制でプラ製レジ袋を禁止している)

法案可決における民主党のトッド・カミンスキー上院議員の談話:

「ビニール袋はたった一度使用した後、とてつもない量のゴミになっている。(ゴミになるまでの)使用される平均時間は約12分」

出典:CNN

ニューヨーク市民は、21世紀に入り(特にここ5〜10年は顕著に)、脱プラ化へ向け少しずつ歩み寄ってきた。買い物袋を紙製にシフトした店も増えており、中には紙製の袋を有料提供する強気の店もある。また、飲食店では食べ残しを「お持ち帰り」するのが一般的だが、こちらも紙製の入れ物や、最近ではシュガーケーンから作られたコンポスト可能な入れ物などを提供する店が増えている。

とはいえ、庶民的なスーパーや量販店ではプラ製の袋がまだ一般的。またプラ製袋は薄くて破れやすく、補強のために「2枚重ねが普通」なのもこれまた現実。(頼まなくてもだいたいのスーパーは2枚重ねにする)

今回可決した法案には、スーパーの売り場に設置された野菜やフルーツを入れるビニール袋や、ドライクリーニングの袋は適用外。また紙袋に対して5セントの課税案も盛り込まれている。

地元の人々の反応は、「環境保全のために取り組まないといけないことなので、心待ちにしている」という賛成派から、「ゴミ袋として再利用していたのに」「ドアノブにかけてゴミ捨てに利用していたのに」と複雑な心境を露呈する人までさまざま。

歩いているとよく見かける、NY名物とも呼べるような枝にかかったレジ袋。「こういう醜い光景も見納めね」と、揶揄する声も。(c) Kasumi Abe
歩いているとよく見かける、NY名物とも呼べるような枝にかかったレジ袋。「こういう醜い光景も見納めね」と、揶揄する声も。(c) Kasumi Abe

アメリカではスターバックス社が、2020年までにプラスチック製ストローを全廃するという脱プラ化への意欲をみせ、これに追随する企業も増えている。ニューヨークで同年に始まる今回の措置も、脱プラ化&ゴミ削減化へ向けた、大きな一歩となるだろう。

プラ製レジ袋のみならず包装自体をなくし、ゴミ削減に取り組む店

ブルックリン区では、プラ製レジ袋のみならず、包装自体を排除したバルクフード*のグロッサリーマーケットがオープンし、地元の人々に支持されている。

  •  *バルクフード:量り売りで必要な分だけ買える食べ物。日本でもアメリカでも昔は一般的だった。
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

「市内初のゼロウェイスト専門のグロッサリーマーケット」を自負するオーナーのカテリーナ・ボガティレヴァさんは、事業を通して、ゼロウェイスト(廃棄ゼロ、モノを粗末にしない)運動に取り組んでいる。

ある日、自宅で排出されたゴミの量を見て唖然とし、「過剰包装されていないものを売る店、必要のないゴミを出さない店を作ろう」と誓ったそうだ。そうしてオープンしたのが「Precycle」(プリサイクル)だった。

まず奥の計りで、持参した容器の重さを測る。(c) Kasumi Abe
まず奥の計りで、持参した容器の重さを測る。(c) Kasumi Abe

プリサイクルは、米、パスタやマカロニ、小麦粉、油、豆、ナッツ、スナック、スパイス、発酵食品、茶葉、野菜、そのほか歯ブラシや石鹸など生活用品を販売している。値段は重量で決まる。顧客は自身で容器を持参し、必要な分だけを入れてレジへ持っていく。

「ここで買い物するのは2回目。好きな量だけを買えるのは助かる」と地元客。(c) Kasumi Abe
「ここで買い物するのは2回目。好きな量だけを買えるのは助かる」と地元客。(c) Kasumi Abe
各種食用油もこの通り。(c) Kasumi Abe
各種食用油もこの通り。(c) Kasumi Abe

包装サービスは一切ないので、支払い後はそのまま自分のバッグへ。慣れないうちは少し違和感があるのだが、日本もアメリカもひと昔前まではこのような買い物が普通だっただろう。また、少量のみ必要なスパイスや調味料、味を試すために買うときなどは特に便利だ。

カテリーナさん。この日初めて会ったが名刺交換のかわりに、情報を書いた紙をお互いがスマホで撮影する、という徹底ぶり。(c) Kasumi Abe
カテリーナさん。この日初めて会ったが名刺交換のかわりに、情報を書いた紙をお互いがスマホで撮影する、という徹底ぶり。(c) Kasumi Abe

「廃棄ゼロに取り組んでいるとは言え、配送用の箱などがあるから、ゴミがまったく出ないわけではない。それでも開店から1カ月ちょっとの間に出たゴミは1袋分のみだった。これからも同業他社が出す平均量の10%以内のゴミ量に保ちたい」とカテリーナさん。

ニューヨークは今年1月より、お持ち帰りでよく見かけた使い捨ての発泡スチロール容器の使用も法律で禁止したばかり。サステイナブル(持続可能)な社会の実現に向け、今後進んでいく「脱プラ」化とともに、このような「廃棄ゼロ」化への取り組みにも期待がかかる。

(All photos and text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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