久保建英に、レアル・マドリー復帰の可能性はあるのか?「久保のためのチーム」という幻想と蜃気楼。
欧州のフットボールシーンは、折り返し地点を迎えた。
リーガエスパニョーラ第20節終了時点で、首位を走っているのはレアル・マドリーである。今季、カルロ・アンチェロッティ監督が就任したマドリーだが、夏の移籍市場では目立った補強を行わなかった。それでも、フリートランスファーで加入したダビド・アラバの活躍があり、ラ・リーガでトップのポジションをキープしている。
そのマドリーで、2021−22シーズン、レンタル放出されている選手がいる。ブラヒム・ディアス(ミラン)、アルバロ・オドリオソラ(フィオレンティーナ)、ヘイニエル・ジェズス(ボルシア・ドルトムント)、ボルハ・マジョラル(ローマ)、そして久保建英(マジョルカ)だ。
■レンタル移籍の日々
まずは状況の整理が必要だ。久保は今夏、1年のレンタルでマジョルカに加入した。2019−20シーズン以来、久保にとっての二度目のマジョルカでの挑戦だった。
19−20シーズン、久保はマジョルカでインパクトを残した。最終的にマジョルカは降格を免れなかったが、シーズン終盤戦で久保が攻撃を牽引していたのは間違いなかった。
マジョルカでの活躍が、複数クラブの関心を引きつけた。2020年夏の移籍市場で、スペイン国内外のおよそ30クラブが久保の獲得を検討していた。その中で、久保が選んだのはビジャレアルだった。
ビジャレアルへのレンタル移籍当初は、若手育成に定評があるクラブで、久保は良い選択をしたと見られていた。だが蓋を開けてみれば、成功とはほど遠い日々が待っていた。久保がビジャレアルで成功を収められなかった要因はいくつかある。ただ端的に言えば、ウナイ・エメリ監督とウマが合わなかった。
エメリ監督は度々久保を左MFで使っていた。その起用法は、日本のメデイアで、幾度となく批判の対象になった。だがエメリ監督が久保のことを全く考えていなかったわけではない。例えば、先のアトレティコ・マドリー戦で、左MFのアルベルト・モレノが輝きを放っていた。
A・モレノに与えられた役割は、「偽インサイドハーフ」である。【4−2−3−1】の左MFに位置しながら、中央とゴール前に自由に動き、フィニッシュワークに絡む。空いた左サイドのスペースを、左SBが使う。このようなタスクを、将来的に久保に期待していたのではないかと思いながら、私はその試合を観ていた。
ビジャレアルでの日々は、半年と保(も)たなかった。次の決断は、2021年1月の移籍市場におけるヘタフェへのレンタル移籍だった。
エメリ監督に冷遇されたことを思えば、ヘタフェ加入は、なおさら不可解だった。ホセ・ボルダラス監督は、ラ・リーガ屈指の守備的な指揮官だ。【4−4−2】の3ラインで、全体をコンパクトにして戦う。前線から激しくプレッシングを行い、ショートカウンターとセットプレーで相手を仕留めるというのが基本スタイルだ。
当然、そこで久保は苦しんだ。1部残留を決定付けるゴラッソを沈めたものの、それ以上のインパクトを残せなかった。同時期に加入したカルレス・アレニャがレギュラーポジションとレンタル契約後の完全移籍を勝ち取ったのとは対照的だった。
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■久保のためのチーム
東京五輪の“ブーム”があり、人々は忘れてしまったのかも知れない。久保はまだ、ラ・リーガ1部でほとんど結果を残していない。
久保をめぐる日本のメディアの“ポジティブキャンペーン”には気が滅入るばかりだ。若い選手というのは、未来がある。未来という希望を売りに出せば、その記事はよく読まれる。今風に言えば、PV数が稼げるのだ。
現在、浦和レッズで監督を務めるリカルド・ロドリゲスが、スペインメディアのインタビューで興味深いコメントを残している。
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