フルトンの復帰が決定。8月17日フロリダでアフマダリエフと戦ったリオスと対戦
井上尚弥戦から13ヵ月ぶり
昨年7月25日、現スーパーバンタム級4団体統一王者井上尚弥(大橋)の挑戦を受けた元WBC・WBO世界同級統一王者スティーブン・フルトン(米)がリングに戻ってくる。フルトンは8月17日、米フロリダ州オーランドのザ・カリブ・ロイアルでロニー・リオス(米)と対戦する運びとなった。同日のメインは元IBF世界スーパーミドル級王者カレブ・プラント(米)がトレバー・マカンビー(米=WBA同級11位)と対戦する。フルトン戦はセミファイナル格で行われる。
井上戦から13ヵ月ぶりの登場となるフルトン(21勝8KO1敗=29歳)は1ヵ月前の6月15日、ラスベガスで行われたジェルボンテ・デービスvs.フランク・マーティン(ともに米)のWBA世界ライト級タイトルマッチのイベントに当初出場を予定していたが実現しなかった。以前の記事でその経過について触れたが、やはり一番の理由は井上戦で高額ファイトマネーを得たことが大きいと推測される。よって復帰戦を急ぐ必要がなかったのである。
それでも復帰にあたり並々ならぬ決意を明かしたフルトンにファイターとしてのプライドを感じる。トレーナーのスイッチもその表れだろう。これまでフルトンは、井上戦の前、井上のバンテージの巻き方にいちゃもんをつけたワヒド・ラヒーム氏とコンビを組んでいたが、同氏はマネージャー的な役割へシフト。代わって先週土曜日13日、地元フィラデルフィアでIBF世界ウェルター級王座の防衛に成功したジャロン・エニス(米)の父でトレーナーのボジー・エニス氏がメイン・トレーナーに就任した。
トレーナーをチェンジ
もともとフルトンとエニスは親友同士で、同じジムで練習している。以前からボジー氏からもフルトンはアドバイスを受けていた。バックアップ体制がより強固になったと見ていいだろう。
クラスをスーパーバンタム級122ポンド(55.34キロ)リミットからフェザー級126ポンド(57.15キロ)へ上げるフルトンは前回も指摘したようにフェザー級でまだ1試合も行っていないのにもかかわらず、WBA1位にランキングされている。WBAのみならず、WBO8位、IBF15位を占める。今回イベントを主催するPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)はタイトル承認団体と強いパイプを構築している。率直に言えばフルトンを再び世界タイトルへ挑戦させたいのである。一度2団体のベルトを保持し、モンスター井上と戦ったネームバリューは抜群だ。もう一つの最大勢力を誇るWBCも今後の動向次第でフルトンをランキング入りさせるだろう。
2度世界に挑んだリオス
世界挑戦の前哨戦と位置づけられる今回の一戦で相手を務めるリオス(34勝17KO4敗=34歳)はこれまでスーパーバンタム級で2度世界挑戦している。初めは2017年8月、WBC王者レイ・バルガス(メキシコ=現WBC世界フェザー級王者)に判定負け。そして22年6月、WBAスーパー&IBF統一王者だったムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に12回TKO負け。アフマダリエフ戦は途中まで健闘したが、最後はウズベキスタン人の執拗なボディー攻撃に屈した。
リオス自身もメキシコ系ボクサーらしいボディー連打が武器。アフマダリエフ戦から再起した今年4月の試合でも腹を攻めてTKO勝ちしている。ただし4敗中3つがストップ負けと耐久力には疑問がある。
おそらく試合はボディー打ちで仕掛けるリオスに対し序盤、慎重に対処するフルトンが徐々にペースアップしながらポイント奪取のボクシングに徹するのではないか。フルトンがスーパーバンタム級2団体統一王者に就いたブランドン・フィゲロア(米=現WBCフェザー級暫定王者)戦のような一進一退の攻防が展開されるかもしれない。
リオスは格好な相手
だがリオス(WBAフェザー級13位)にはフィゲロアのような強引さやパワーはない。執拗なアタックがどれだけ巧者フルトンに通用するかわからない。一方フルトンはブランク明けのせいで技巧がさび付いている懸念がある。それでもフルトンの復調ぶりと2階級制覇の成否を占うにはうってつけの相手ではないだろうか。
ランキングの位置から今後フルトンがターゲットに据えるのはWBAとWBO王座ではないかと思われる。現在WBA王者はニック・ボール(英)、WBO王者はラファエル・エスピノサ(メキシコ)。ボールは身長157センチ、エスピノサは世界フェザー級王者歴代最高の185センチを誇る。その差は何と28センチ。リオスの身長は171センチ。169センチのフルトンよりやや高い。リーチは170センチで179センチのフルトンが大きく勝る。かけ引きに長けたフルトンが中差の判定勝ちというのが私の予想だ。