ルイス・ネリが始動。17勝16KO無敗の新鋭とスパーリング。復帰戦はどうなる?
まずは地元ホープと手合わせ
スーパーバンタム級4団体統一チャンピオン、井上尚弥(大橋)に5月、東京ドームで挑戦した元2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)がジムワークを開始した。ネリのプロモーター「サンフェル・ボクシング」が公式フェイスブックで伝えた。
筆者はネリに井上戦の1ヵ月後インタビューしたが、その時ネリは「1ヵ月か1ヵ月半後にトレーニングを始め、10月か11月にリングに上がりたい」と言っていたから相当遅れたことになる。だが、その時のネリの雰囲気から「スタートは遅れるだろう」という感触があった。まずは納得できる動きではないだろうか。
フェイスブックでは井上を初回に左フックで倒したシーンの映像とともにジムでサンドバッグを叩く姿が発信されている。それを見る限り、始動したばかりとはいえコンディションは良好に思える。写真では少し老けた印象もあるが、井上と激闘を繰り広げたパンチをバッグに叩きつけている。
ネリは今回、地元メキシコ・ティファナ出身のスーパーバンタム級、セバスチャン“ローガン”エルナンデス(メキシコ)のスパーリングパートナーを務め、徐々に復帰の準備を進めている。エルナンデスは元4階級制覇王者エリク・モラレス氏(メキシコ)を生んだ「ヒムナシオ・ソナ・ノルテ」(ソナ・ノルテ・ジム)でトレーニングする24歳。現役時代のモラレス氏とコンビを組んでいたフェルナンド・フェルナンデス・トレーナーの指導で汗を流す。
同じく同ジムを拠点にトレーニングを行う元WBO世界スーパーウェルター級王者で、現在スーパーミドル級上位のハイメ・ムンギア(メキシコ)とはフェルナンデス氏の兄弟弟子でジムメイトの関係。ムンギアが9月20日、米アリゾナ州グレンデールで行ったエリック・バジニャン(アルメニア/カナダ)戦の前座カードにエルナンデスは出場。相手のヨンフレス・パレホ(ベネズエラ)をめった打ちにして4回終了TKO勝ち。ちなみにパレホは2021年12月、メキシコで亀田和毅(TMK)と対戦し12回判定負けした選手。エルナンデスはこの勝利で17勝16KO無敗。IBFスーパーバンタム級14位にランクされる。
スーパーバンタム級で4団体統一王者目指す
地元のプロスペクトに胸を貸すネリはどんなかたちで復帰を考えているのだろうか。
井上に敗れた後、1階級上のフェザー級進出が有力視されたネリは、9月のランキングでWBCではスーパーバンタム級3位を占めていたが、WBAとWBOではすでにフェザー級でそれぞれ3位と5位にランクされていた。
ところが10月発表のランキングではWBCは変わらなかったものの、WBAはネリをスーパーバンタム級4位にシフトしている。WBOはフェザー級6位なのだが、WBAがクラスをまたスーパーバンタム級へ移したのは気になるところだ。
ネリは筆者に「復帰戦は126ポンド(フェザー級)になるだろうが、もう一度122ポンド(スーパーバンタム級)で王座を狙う願望がある」と明かした。その時「モンスターが去った後、スーパーバンタム級へ戻ってベルト獲得を目指すのか?」と聞き返したが、ネリは「そういう状況になるかもしれないけど、俺はイノウエに借りを返したい気持ちが強い」と返答。ダウン応酬戦ながら最後は惨敗を喫した相手にリベンジしたい意志を強調した。
さらにネリは「仮にイノウエが126ポンドへ舵を切るならば、(スーパーバンタム級で)4団体統一チャンピオンに君臨する目標がある。イノウエがいなれば彼より強い選手は122にはいないだろう。もしイノウエとの再戦が実現したら第1戦を超える、ハポン(日本)とメヒコ(メキシコ)両国にとって歴史的なイベントになる」と高らかに宣言。ネリ節は健在だった。
日本で悪役のキャラクターで売ったネリだが「もう俺は日本のファンにもボクシング業界にも借りはない」とアピール。「状況が許せば、ハポンの新鋭の相手を務めてもいいよ」とも話す。もちろんそこには高額ファイトマネーが見込まれる日本リングという背景がある。リップサービスしながら彼が再来日する日は訪れるのだろうか。悪童のアフター・モンスターに注目が集まる。