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人材流出著しいJリーグが目指すべき道は。サッカーはある条件が整えば低レベルでも面白い

杉山茂樹スポーツライター
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 天皇杯決勝。今季のJ1リーグ9位チーム(川崎)対17位(柏)チームの対戦と聞けば、心はあまり踊らない。トーナメントの頂上決戦には好カードを期待する。理想は1位対2位。せいぜい5位以内同士の戦いであってほしいと考える。だが11月に行われたルヴァンカップ決勝も7位(福岡)と9位(川崎)の対戦となったように、それこそが国内のカップ戦“あるある”なのだ。

 決勝進出を果たした下位チームのサポーターにとっては晴れ舞台となる。決勝が上位対決であってほしいと願う第3者とは裏腹に、国立競技場で行われる一戦をこのうえなく待ち焦がれる。

 6万余人の観衆が埋めた当日のスタンドは、青系(川崎)と黄色系(柏)にわかりやすく2分されていた。第3者は不在。介在する余地がなかった。彼らはNHKの画面に目を凝らしたと思われる。

 優勝した川崎のファンはさぞ満足しただろう。敗れた柏のファンも、結末がPK負けという美しい散り方だったことに、満ち足りた気持ちで帰路に就いたに違いない。気になるのは圧倒的多数を占める第3者の反応だ。3時間に及んだこの天皇杯決勝にどれほどよいイメージを抱いただろうか。

 川崎対柏の2者間の関係に支配された国立競技場という大きな器の中にいると、第3者の目は気にならない。自分たちのサッカーを世間にご披露する感覚が薄れても不思議はない。

「我々を応援してくださる方に勝利をお届けすることができて嬉しい」とは、日本代表の森保一監督が試合後の勝利監督インタビューでお約束のように口にする台詞だが、W杯本大会ともなると、現地のスタンドは日本のファンでも対戦相手のファンでもない中立的なファンが多数を占める。テレビ観戦者にも同じことが言える。絶対的な数で外国人が勝る。そこで世界のサッカーファンに見られているという意識を持てるか。それが出し物を披露する感覚を醸成させる。W杯が世界のサッカーの品評会と言われる所以だ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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