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ロシアW杯13日目。アルゼンチン戦のジャッジに疑問、大会初のスコアレスドローはやっぱり、あの試合

木村浩嗣在スペイン・ジャーナリスト
サイドに張ってる選手は誰?と思ったら監督だった。やる気満々がいじり過ぎの結果に(写真:ロイター/アフロ)

マッチレビューではなく大きな視点でのW杯レポートの12回目。観戦予定の全64試合のうち大会13日目の4試合で見えたのは、アルゼンチンを敗退寸前に追い込んだジャッジ、引き分けOKの試合はやはりスコアレスドロー、ペルー40年ぶり勝利……。

解釈が厳密過ぎたPK、流血を放置

ナイジェリア対アルゼンチン(1-2)でのアルゼンチンは勝利にふさわしかった。最大の敵はモーゼスではなく……主審だった。

レフェリーを批判したり、ミスジャッジをあげつらうのは好きではない。サッカー界の“弱者”――スペインの週末のグラウンドに行けばこう形容する理由がわかる――審判には特別の思い入れがあり、南アフリカW杯、ブラジルW杯に続き、今大会もプレーとは別に審判の裁きぶりもチェックしている。

この試合の主審チャキルはFIFAにもUEFAにも高く評価されているのだが、ナーバスさが笛に影響しているような気がしてどうも好きになれない。今大会の初ジャッジ、モロッコ対イランでも良くなかったが、ナイジェリアに与えられたあのPK、マスチェラーノが相手をつかんで倒したという解釈はどうなのか? 相手をつかむ行為は反則だが、あの程度の軽微なものはこれまで見逃されてきたはずだ。

VARはプレーの解釈には介入しない。よって、審判が不要と思えばVARを頼らなくても良い。

チャキルはよっぽど自信があったようで、盛んにVARルームとコミュニケーションを取っていたようだが、最終的にはVARを見なかった。もう1つ、流血しているマスチェラーノをプレーさせ続けさせたのは完全に理解不能。こちらは解釈の問題ではなく明らかにルール違反なので、今後ジャッジさせないなどの処置が取られる可能性がある。

実験の末に、結局オーソドックスが正解

PKで1点を挙げたことでナイジェリアは勢い付き、勝ち越しのチャンスを何度もつかんだ。引き分けでも敗退だったアルゼンチンは土俵際まで追い込まれた。あの劇的な幕切れの下準備をしたのは主審だったわけだ。

PKのショックが尾を引いた時間帯を除き、内容的にはアルゼンチンが圧倒していた。

もうオーソドックスな[4-2-3-1]、2ボランチはバネガとマスチェラーノという、誰でも考える布陣・顔ぶれでいいではないか。サンパオリ監督はスターティングメンバーの名前を見ても、誰がどこに配置されるかさっぱりわからない、奇抜なフォーメーションで知られる“戦術家”だが、もう実験は終わりでいいではないか。

注目のメッシはバネガとのホットラインで先制ゴールを決めはしたが、ナイジェリアの同点ゴール後、最もチームが必要としていた時間帯にはまたもや消えてしまっていた。

アイスランドは勝利に手を掛けるも…

アイスランド対クロアチア(1-2)という結果だけを見ると順当のように見える。が、実際は違う。

チャンスの数で圧倒していたのはアイスランドであり、相手GKカリニッチの孤軍奮闘がなければ勝利も夢ではなかった。ボールを持てずカウンターに頼らざる得ないチームが、勝ち抜けの条件=必勝を目指すのは難しい。が、アイスランドは自陣に引いていても攻撃時には敵陣に殺到する、という脅威の運動量で十分な得点機会を築いた。唯一のチャンスを生かしたクロアチアの先制点には気落ちしただろうが、それがプレーに反映されることはなかった。

ただ、同点で迎えた残り10分、他会場の試合結果にかかわらず勝てば決勝トーナメント進出という、大事な時間帯でもう余力は残っていなかった。とはいえ、死のグループに入りながら初出場での大健闘には国民も大満足だろう。

引き分けOKなら当然こうなる

今大会の連続得点試合は37試合目、デンマーク対フランス(0-0)で途絶えた。

この初のスコアレスドローの実現に、“引き分ければともにグループステージ突破”という条件はやっぱり影響していただろうな……。前半こそ勝てば突破が確定するデンマークが攻勢に出たが、他会場の結果――ペルーが先制、さらに追加点――の報が入り、体力が消耗するにつれてインテンシティも勝利へのこだわりも下がっていった(強力な攻撃陣の影に隠れるフランスのフェキルようにアピールしたかった選手は例外として)。デシャン監督が「ローテーションできる唯一の試合」と位置付け、引き分けの倍率を最も低くしたブックメーカーの見立ては当たったわけだ。

オーストラリア対ペルー(0-2)は実力の差が出た。

この試合のペルーを見れば、グループステージ敗退済みで最終節を迎えるようなチームではないことがわかるはずだ。先制点をボレーで叩き込んだのは、チームのMVPカリージョ、2点目のやはり美しいボレーを決めたのはエース、ゲレーロ。フランスにこそ力負けしたが、優勢のデンマーク戦でPKを外し敗れたのが決定的だった。とはいえW杯で36年ぶりのゴール、40年ぶりの勝利には涙を流すファンもいた。このチーム力なら次の国際大会が楽しみだ。

在スペイン・ジャーナリスト

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟のコーチライセンスを取得し少年チームを指導。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペイン・セビージャに拠点を移し特派員兼編集長に。15年7月編集長を辞しスペインサッカーを追いつつ、セビージャ市王者となった少年チームを率いる。サラマンカ大学映像コミュニケーション学部に聴講生として5年間在籍。趣味は映画(スペイン映画数百本鑑賞済み)、踊り(セビジャーナス)、おしゃべり、料理を通して人と深くつき合うこと。スペインのシッチェス映画祭とサン・セバスティアン映画祭を毎年取材

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