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【NHLアウォード】今季のMVPは20歳! 癌と診断された妻のためにチームを離れたGKも受賞!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ハートトロフィー(レギュラーシーズンMVP)に輝いたコナー・マクデイビッド(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

昨夜(現地時間)ラスベガス(ネバダ州)で、今季の各賞を発表、表彰する「NHLアウォード」と、来季から31番目のチームとして加盟するベガス ゴールデンナイツの顔ぶれが決まる「エクスパンションドラフト」が開催されました。

★エクスパンションドラフト」については、筆者当サイトに掲載したこちらの記事をご覧ください。

▼51年ぶりの新人賞

「アウォード」で最も注目されたのは、最優秀新人賞にあたるカルダートロフィーの行方!

なぜなら、今季はドラフト全体1位指名でアリゾナ生まれのオーストン・マトュース(19歳)と、全体2位指名でフィンランド出身のパトリック・ライネ(19歳)という二人のFWが、ともにルーキー離れしたプレーを披露。

“チームの顔”と呼ばれるほどの大活躍をしたからです!

個人成績を見ても、わずかに5ポイント差。ライネが負傷のため欠場し、出場試合数が5試合少ないことを差し引くと、甲乙つけ難いと言えるだけに、記者投票も大接戦かと思われましたが、、、

マトュースがベストルーキーに選ばれました!

しかも前評判に反して、1位票(=記者投票は1位から5位まで選手名を記し、順位ごとのポイント数の合計で受賞者が決定)は、マトュースの「164票」に対して、ライネは「3票」のみ・・・。

メディアの数が多く、注目度の高いチームに在籍している恩恵なのか? マトュースが思いもよらない大差をつけ、トロントの選手では、実に51年ぶりのカルダートロフィーに輝きました。

▼癌と診断された妻を愛し続けるGKも受賞

その他の賞に視線を移すと、オタワ セネターズのゴールを守ったクレイグ・アンダーソン(36歳)が、ビルマスタートン トロフィーを受賞!

この賞はホッケーに取り組む姿勢やスポーツマンシップなど、広範囲からの視点で評価されますが、今季のアンダーソンは、癌を発症した妻のニコールと寄り添うために、チームを離れる決断を下しました。

しかし、2か月のブランクを経てチームに戻ってからは、再び守護神としてゴールを守り続け、チームの歴代最多勝記録を更新。プレーオフでもカンファレンスファイナル(3rdラウンド)へ導いた働きが評価された模様。

プレーオフ中に医師から伝えられた診断結果では、ニコールの癌細胞は見られなくなったとのこと。まだ経過観察を要するものの、アンダーソンの想いが通じたようです。

”激動のシーズン” と呼んでも過言ではない今季の締めくくりに、トロフィーを受け取ったアンダーソンは、受賞スピーチの際に思わず目を潤ませていました。

▼ペナルティは2つだけ

ビルマスタートン賞よりも、スポーツマンシップを問われるのが、レディビングトロフィー

と言っても、近年は分かりやすく、ペナルティの少ない選手が受賞していますが、今季はカルガリー フレイムスのジョニー・グゥドロー(FW・23歳)の手に!

今季のグゥドローは、(10試合ほど休んだものの)72試合に出場し、ペナルティは「2つ」だけ。シーズン通じてのペナルティタイム(基本は2分)は、わずかに「4分」

チームメイトを見渡しても、レギュラーシーズンの半分(41試合)以上に出場した選手の中で、グゥドローに続くのは、ショーン・モナハンの「20分」。

ちなみに、昨季に同賞を獲得したアンゼ・コピタ(ロサンゼルス キングス)のペナルティ時間が「16分」とあっては、グゥドローのペナルティの少なさは受賞に値します。

3季前のライアン・オライリー(当時:コロラドアバランチ)が記録した「2分」(80試合出場)には及ばなかったとは言え、グゥドローは、カルガリーで最も多いポイントをマークした選手。攻撃の核を担っていたため、相手チームから厳しいマークを受ける中で、ペナルティを2つしかしなかったのは、特筆すべき数字です。

▼クロスビーを圧倒したMVPは20歳

最後に、レギュラーシーズンのMVPに手渡されるハートトロフィーに輝いたのは、

エドモントン オイラーズのコナー・マクデイビッド(20歳)!

カルダートロフィーに選ばれた「トロントでは51年ぶり受賞」のマトュースほどではないにしても、エドモントンの選手がハートトロフィーを受賞するのは、マーク・メシエ以来、「27年ぶり」!

記者投票では、次点のクロスビーに投じられた数の10倍以上の1位票を集め、文句なしのMVPに輝きました。

NHL史上最年少(19歳266日)で、キャプテンに就任したマクデイビッドでしたが、ハートトロフィー受賞時の年齢では、ウェイン・グレツキーと、クロスビーには及ばず・・・。

しかし、これから長く続いていくNHLキャリアの中で、どのような記録を打ち立てていくのでしょうか? 

尚、本文で紹介できなかった賞については、NHLのオフィシャルサイトを、ご参照ください。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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