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【NHL】「Game7の呪縛」を解いてファイナルに勝ち進むのは、ピッツバーグか? オタワか?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
昨季のチャンピオン ピッツバーグペンギンズのシドニー・クロスビー(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

NHLのプレーオフは佳境に差し掛かっています。

ウエスタン カンファレンスの戦いを制した ナッシュビル プレデターズ が待つスタンレーカップファイナルへ、イースタンから勝ち上がるのは、ピッツバーグ ペンギンズか? それともオタワ セネターズか?

両チームのシリーズ(カンファレンスファイナル=3rdラウンド )は、第6戦を終えて3勝3敗

いよいよ今夜(現地時間)雌雄を決する第7戦が行われます。

▼NHLのプレーオフ

NHLのプレーオフは、東西両カンファレンスの上位8チームによって争われ、各ラウンドともにベストオブ7(7回戦制4勝先勝方式)で繰り広げられます。

NBAのプレーオフと同様に、レギュラーシーズンの順位が上回るチームは、第1戦と第2戦、さらにシリーズがもつれた際は第5戦と、最後の第7戦を、ホームアリーナで開催。

今夜行われるイースタンのファイナルは、ピッツバーグ(2位)がオタワ(6位)より上位だったため、第7戦の舞台はピッツバーグです。

2連覇を狙うピッツバーグは、慣れ親しんだホームアリーナで、しかも多くのファンの前で戦うアドバンテージを有します。

しかし、その他にも、NHLをはじめアイスホッケーの試合を戦う上で、戦略にも影響を及ぼすホームアドバンテージがあるのです。

それは、「セットメンバーのマッチアップ権」です。

▼NHLのホームアドバンテージ

アイスホッケーの試合中に氷上で同時にプレーするのは、GKを除いて5人。

リードしている時、反撃に転じたい時、さらに、ペナルティを犯した退場者が出て、相手チームより人数が多くなったり(=パワープレー)、少なくなった時(=ペナルティキリング)といった状況に応じ、ヘッドコーチは適した働きのできる選手を送り込みます。

その際、プレーがストップしていた時は、ビジターチームから先に選手を送り込まなければなりません。

つまりホームチームは、試合の状況や相手の顔ぶれを見てから、自チームの顔ぶれを決められる、いわば “後出し” ができるのです。

▼「Game7の呪縛」~ピッツバーグの場合~

このようなホームアドバンテージがあるのに加え、昨季の覇者とあって、敵地での第6戦で敗れたあとも、ピッツバーグのメディアからは、楽観的とも受け取れる論調が見られます。ところがピッツバーグには、ありがたくない第7戦のデータが・・・。

それは、

敵地での第6戦に敗れてホームでの第7戦に臨むと、これまで「7戦全敗」

果たしてピッツバーグは、逆王手を掛けられたあとの「Game7の呪縛」を解くことはできるでしょうか?

▼キーマンは8季前のプレーオフMVP

キーマンとなるのは、FWのエフゲニ・モルキン(30歳)

エフゲニ・モルキン(Photo:Jiro Kato)
エフゲニ・モルキン(Photo:Jiro Kato)

ワールドカップのMVPに輝いたキャプテンのシドニー・クロスビーと、プレーオフの通算出場試合数、通算得点ともに1つずつしか違わないモルキンですが、Game7の成績に特化すると、クロスビーを圧倒して12ポイント(6ゴール6アシスト)

1990年代前半の2連覇を支えたマリオ・ルミュー(現チェアマン)らと並び、ピッツバーグの歴代全選手の中で2位タイ。(トップはヤロミール・ヤーガの17ポイント)

8季前の優勝時には、コンスマイストロフィー(プレーオフMVP)にも輝いただけに、期待が集まります。

▼「Game7の呪縛」~オタワの場合~

一方、カナダ勢最後の砦として、ジャスティン・トルドー首相からも、熱い声援を受けているオタワにも、ありがたくない第7戦のデータがあります。

それは、

チーム創設以来、プレーオフの第7戦は「5戦全敗」

第7戦を2試合以上戦ったチームの中で、一度も勝ったことのないのは、アリゾナ コヨーテス(5戦全敗=旧ウィニペグジェッツ時代も含む)と並んで、ワーストタイ。

NHL以外に視線を広げても、NBAのユタ グリーズリーズ(3戦全敗)と、MLBのボルチモア オリオールズ(2戦全敗)だけしかいないとあって、オタワも北米4大スポーツでワーストとなる「Game7の呪縛」を、そろそろ解き放ちたいところです。

▼キーマンは癌と診断された妻のためにチームを離れたGK

キーマンとなるのは、守護神を担うGKのクレイグ・アンダーソン(36歳)

クレイグ・アンダーソン(Photo:Jiro Kato)
クレイグ・アンダーソン(Photo:Jiro Kato)

今季の序盤に妻のニコールが癌と診断され、愛する妻のためにチームを離れ、闘病の手助けをしたアンダーソン。

チーム挙げてのサポートもあって、ニコールの容体は、ここしばらく小康を保っている様子ですが、「妻のために必ずスタンレーカップを勝ち取る!」との決意を秘めてアンダーソンは奮起。

エリミネーションゲーム(負ければシーズン終了の試合)となった一昨日の第6戦では、自チームが放った数の1.5倍となる46本ものシュートを浴びながら(目安のシュート数の平均は1試合あたり30本程度)、好セーブを連発し1失点で抑え、逆転勝利を呼び込む立役者になりました! 

さらに一昨季のプレーオフでも、モントリオール カナディアンズに3勝1敗と王手を掛けられたあと、エリミネーションゲーム3試合で、アンダーソンは93本ものシュートを放たれながら、2失点に抑えているだけに、土俵際に追い詰められてからの活躍は実証済み。

それだけに、今夜も好セーブを連発して 「Game7の呪縛」を打ち払い、オタワを10年ぶりのスタンレーカップファイナルへ導く働きが求められます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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