学生売り手市場で苦戦する企業。新卒採用の活路は留学生採用にあり?
大手企業の内々定出しが行われる中、中堅・中小企業は内定を出した学生からの辞退に頭を悩ませている。
昨年もそうだったが、6月は学生が「内定辞退」を完了させるピークとなる月となっている。
全国に支店を持つIT関連企業の人事担当者は、「半数程度の辞退ですめば良かったのだが、現状予想を下回っている。二次募集で埋めていかなければいけないが、説明会エントリーも集めづらくなっており採用基準を満たす学生との接触からすでに困難…」と語る。
先日書いた通りすでに19卒学生の半数近くにはなんらかの内々定が出ており、これから追加で企業にエントリーしようという学生は急激に減少している。
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そんな中、一部の企業が注目するのが「留学生採用」の市場だ。
【留学からの帰国学生はこれから就活スタート】
ここで言う「留学生」とは日本に来る外国人留学生ではなく、海外留学した日本人留学生を意味する。
留学先によって事情は異なるが、海外大に進学した日本人留学生で6月に帰国するという学生は多い。
欧米や中国への留学の場合、大体5〜6月帰国となるようだ。
中には一時帰国中に就活していた学生もいるが、多くはこれから就活を行うことになる。
企業にとって、まだ他社の手垢がついていない「就活初期」の学生は非常に魅力的な存在だ。
このことに着目し、営業攻勢を強めている採用支援会社も多い。
この手の学生が参加するイベントとしてはマイナビ国際派就職などの主催するイベントが有名だったが、近年は小規模な採用支援会社や新卒紹介会社が留学生を集めた採用直結イベントを企画する事が増えてきた。
前述の企業人事はこうも語っている。
「弊社の事業は今のところ国内のみで、海外拠点はありません。しかし留学生だからといって海外で働きたい方ばかりではありませんから。」「昨年から留学生向けのアプローチを強化しましたが、30名との面談から3名採用でき手応えを感じました。」
実際に帰国学生向けの就活イベントを開催している採用支援会社に聞いてみると、同社のように国内でのみ事業展開する企業からの問い合わせも増えているという。
【留学経験の価値が見直されたわけではない】
高まる「留学経験者の採用ニーズ」だが、これは企業側が学生の留学経験を求めた結果ではない。
むしろここまでの売り手市場になる少し前の時期(4〜5年前)には、「留学経験は評価しづらい」と語る人事もいた。
「語学ができても、他の強みを見いだせない事が多い」「留学経験しか語れないと薄っぺらく感じてしまう」など、否定的な声も多く聞かれた。
過去に選考対策を行った学生の中には、「面接で、留学した理由についてネガティブなニュアンスで質問された」という学生や、「そこまで留学、特に語学力を積極的にアピールしなかった」という学生もいた。
前述の留学生を強化したという企業も、決して留学という経験内容を重視して採用しているわけではない。
もちろん海外経験を評価する企業も中にはあるだろうが、そういった企業ばかりではなく一般の国内大卒者と同じ基準で採用する企業も多い。
「理由がなんであれ、門戸の開かれている企業からアプローチがあるのはありがたい」と歓迎する声もあれば、「せっかく留学したのだから、そこも評価してほしい」「海外展開を全く考えていない企業が数合わせで採用しようとするのはどうなのか」と疑問視する声もある。
留学経験の価値が見直されたわけではなく、当の留学経験者にとってはやや複雑かもしれない。
入社後のミスマッチにつながらないよう、採用支援会社は十分にご配慮いただきたい。