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2016年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:1]──宇宙少女、Red Velvetなど

松谷創一郎ジャーナリスト
順調にキャリアを重ねるRed Velvet

いまだに堅調に推移するK-POPですが、2016年もやはりK-POPは面白かったです。そこで2016年を振り返りたいと思います。

詳しくは総論に譲りますが、2016年のK-POPはここ数年続いてきた世代交代が一段落したという印象です。つまり、若手がしっかり台頭し、ベテラングループが解散したりメンバーの個人活動が一層盛んになったりする状況となりました。

そんなこんなで、私が楽しんだK-POP(ガールズ編)トップ30を3回に分けて記しておきたいと思います。それぞれ公式のミュージックビデオを貼っておきますので、興味ある方はご覧ください。

なお、あくまでも私の趣味であることは、ご了承ください。これらの曲をきっかけに、それぞれのアーティストの他の曲を聴いてみたり、あるいはご自身の趣味を開拓されたりなど楽しんでいただければ嬉しいです。まずは、30位から21位までです。

30~26位

▼第30位:チャ・ジヨン x LDN Noise「My Show」

ベテランミュージカル女優のチャ・ジヨンと、ロンドンのプロデューサー集団・LDN Noiseのコラボ曲のEDM。さらに、この背景には、SMエンターテインメントが毎週1曲ずつデジタル音源配信をする「STATION」があります。実験的なコラボレーションが数多く観られるこの「STATION」は、2016年のランキングにいくつもの曲が入っています。歌手とプロデューサーの力量を確かめる面白い場になっています。LDN Noiseは、2016年はテヨン(少女時代)の「Why」をはじめ、EXOやNCT127、f(x)、SHINeeなどSMエンタのアーティストに楽曲提供をしており、今後も注目されます。

▼第29位:C.I.V.A「Why (feat. Miryo)」

C.I.V.Aは、7月にこの曲でデビューした、バラエティ番組発の3人組アイドルグループ。注目すべきは、この楽曲の良さです。アイドルらしいポップスでありながら、ダンスミュージックの要素もあり、さらにどこかしら懐かしさもあります。新しさと古さが上手く同居しているのですが、そもそもこの曲は1998年にヒップホップ系3人組アイドルグループDivaが発表した、「ウェブルロ(なぜ呼ぶの)」のカバーなのでした。それを知ると、いろいろ納得つきます。聴き比べると、アレンジの時代性も見えて面白いです。

▼第28位:宇宙少女 (WJSN/Cosmic Girls)「MoMoMo」

宇宙少女も2016年2月にデビューした新人アイドルグループです。最近K-POPのグループは大人数になる傾向がありますが、宇宙少女も13人組です。デビュー曲はどのグループも勝負をかけてきますが、この曲も十分に面白みがある曲。宇宙少女というグループ名をどこかしら感じさせる宇宙感があるような気がします。その後、「Catch Me」「Secret」と新曲を発表しましたが、ともに安定しており、滑り出しとしては上々ではないでしょうか。ただ、路線としては2016年に大ブレイクしたTWICEとのキャラかぶりは否めず、2017年以降はより個性を発揮してほしいところです。

▼第27位:DIA「Mr. Potter」

デビュー2年目のDIA(ダイア)は、T-ARAと同じMBKエンタ所属の7人組。しかし、T-ARAのような変化球はほどほどに、この曲をはじめとして正攻法のアイドルグループとして勝負してきました。この「Mr.Potter」も、アイドルソングながら非常に安定感のあるポップソング。ダンスミュージックとしてのアレンジも非常に現代的で、このへんのK-POPの底力を感じさせます。なお、さり気なくよくできているのがミュージックビデオ。パステル調のこの色味は、簡単そうで難しいです。MBKエンタは中国進出に舵を切っているので、日本での活動は望めませんが、来年以降に大ブレイクしそうな気配もあります。

▼第26位:Mamamoo「Decalcomanie」

2014年デビューしたMamamoo(ママムー)は、2016年にやっとスマッシュヒットを飛ばした4人組です。可愛さやセクシーさをアピールするアイドルグループが多いなか、MamamooはR&Bなどレトロ調の曲が多く、歌唱力で勝負しようとする実力派です。そのため派手さやフレッシュさには欠けるところはありますが、2016年になってやっとその実力を認められたという印象です。アイドルグループにもかかわらず、こんなに力強いヴォーカルやラップを披露するのが当然であるのも、K-POPの豊かさを感じさせてくれます。

ズッコケK-POP

K-POPと言っても、もちろんすべてが素晴らしいわけではありません。なかにはズッコケてしまうものもあります。ピンとキリで言えばキリもあるわけですね。ここでは2016年を代表すべきキリとして以下のミュージックビデオをご紹介します。

▼番外編:SIXBOMB「10年だけ待ってBAYBY」

チープなサウンドにヘンテコなダンス、さらに後半になるとピンク色の全身タイツとなるこのミュージックビデオは、「メンバーがかわいそう」と注目されました。SIXBOMBは2012年デビューの4人組ですが、これまでろくに売れたことがありません。“SIX”BOMBなのに、6人からスタートして4人というあたりも、なんだか悲しいです。この曲はセクシー路線とコミカル路線をダブルで狙ったもののすっ転んだという印象ですが、結果としてはそれによって目立ってしまいました。YouTubeでも1.1万Goodに対し、その3倍近い2.97万Badを獲得。『ハフィントン・ポスト・コリア』では、「見ないことをお勧めしますが、必ず見る人がいるのは仕方ない」とさじを投げられています。とほほ。

25~21位

▼第25位:エイリー「Home (Feat. Yoonmirae)」

ソロシンガー・エイリーは、K-POP界トップクラスのヴォーカリストとして2016年も活躍してくれました。ただ、これまでは力強さだけが前面に出ていたのに対し、この「Home」は抑揚がかなり効いており、エイリー姐さんのヴォーカリストとしての成熟を強く感じさせてくれます。また、この曲はラップパートを韓国随一のラッパーであるユン・ミレがやっており、楽曲のクオリティは非常に高いです。エイリーは韓国系アメリカ人でもあるので、今後はグローバルな活動も期待されます。

▼第24位:Red Velvet「Russian Roulette」

2014年にデビューしたSMエンタ所属のRed Velvetは、2015年にやっとスマッシュヒットを飛ばしましたが、2016年はイマイチぱっとしませんでした。しかしこの「Russian Roulette」は、楽曲はさすがSMエンタという水準。作曲は、少女時代やE-girlsなどにも楽曲提供している日系ドイツ人のアルビ・アルバートソンなどですが、柔らかいポップさと可愛さが上手く同居しています。ただ、ひとつ疑問なのはRed Velvetのコンセプト。少女時代とf(x)というふたつの先輩グループと比べると、イマイチ彼女たちの方向性はフラフラしているような気がします。この体操服コンセプトも、こんなに幼いイメージかなぁ?と思いました。

▼第23位:ヒョリン「Love Like This (Feat. Dok2)」

SISTARのヒョリンのヴォーカルがK-POPでもトップクラスなのはよく知られていますが、最近はソロ活動もかなり盛んです。この曲は、ビヨンセやリアーナに楽曲提供してきたプリンス・チャールズのプロデュース曲。ブラックミュージックのテイストをふんだんに取り込んだR&Bとして、かなりのレベルに達しています。メンバーのひとりがここまでの実力を発揮してしまうと他のメンバーの立場がけっこう厳しくなりますが、4minuteとともにSISTARもその代表例でしょうか。

▼第22位:ユリ、ソヒョン「Secret」

少女時代のユリとソヒョンによるこの曲も、前述したSMエンタのデジタル音源配信チャネル「STATION」から生み出された一曲。CM「パンテーン」とのコラボでもあります。デビューから10年目を迎えた2016年の少女時代は、日本ツアーはおこなったものの、メンバーのソロ活動ばかり目立った一年となりました。テヨンに続き、ティファニーやヒョヨンが本格的なソロデビューをし、ユリとスヨンはより俳優業にシフトしています。この曲は欧米の4人の作曲家陣と前述LDN noiseの編曲によるものですが、非常にクールなEDMです。「STATION」の可能性は、こういう実験的なチャレンジのなかで見つかった良さをどこまで今後展開できるかということでしょう。

▼第21位:Berry Good「Don't believe」

Berry Goodは2014年にデビューしたものの、メンバーが半分以上入れ替わり、出す曲のコンセプトがまるで一貫せず、迷走を続けています。が、2015年に発表した「Because Of You」は非常にきれいなメロディをしたスローテンポのポップスでした。この「Don't believe」も悲しい雰囲気を醸し出す、ミドルテンポのダンスミュージック。ダンスや衣装のセンスの悪さは気になりますし、コンセプトワークも雑だなぁとと思いますが、これはかなりいい曲です。

【⇒2016年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:2]──I.O.I、TWICE、AOAなど】

【⇒2016年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:3]──Oohyo、BLACKPINKなど】

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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