マイクロソフトによる人体の活動を使用した暗号通貨マイニング特許出願の現在
昨年の3月に書いた「マイクロソフトによる人体の活動を使用した暗号通貨マイニング特許出願が公開」と言う記事(一部有料)が、今になっても、たまにツイッターで引用され、その結果、アクセス数が伸びたりしています。
ビットコインなどで使用されているパブリック・ブロックチェーンは、世界中に分散したマイナーに対して複雑な計算の競争をさせることで取引履歴の改竄を防ぐProof of Work(PoW)という仕組みを採用しています。これらの計算は実際の役に立つものではなく、電力を無駄に消費するだけであり、その結果、ビットコインは「地球に優しくない」という点が問題になっています。
何の役にも立たない計算パズルではなく、もっと意味のある作業でマイニングを行わせるべきだということで、人間の脳波をモニターして、広告視聴、サービスの使用、情報提供等の何らかの価値を生み出す活動によってマイニングを行い、報酬として暗号通貨を提供するようにしようというのがこの特許出願の基本的アイデアです。
ちょっとサイバーパンクぽい怖い話でもありますし、ワクチンを使ってどうしたこうしたという陰謀論的な流れで今頃になって記事のアクセス数が増えているのかもしれません(この点には深入りしません)。
昨年3月時点では、この出願(WO2020/060606)は国際公開されていただけで、各国の審査は進んでいなかったのですが、先日調べたら、この国際出願の優先権基礎出願である米国出願(16/138,518)が放棄(拒絶理由通知に非応答)されていました。国際出願の方も各国に国内移行した形跡はないので、マイクロソフトは特許化を断念したものと思われます。
なお、特許化を断念したということは、この発明が実施できなくなったというわけではありません。むしろ、誰でも実施できる(マイクロソフトが独占できなくなる)ことを意味します。
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