Yahoo!ニュース

マイクロソフトによる人体の活動を使用した暗号通貨マイニング特許出願の現在

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:WO2020/060606公報

昨年の3月に書いた「マイクロソフトによる人体の活動を使用した暗号通貨マイニング特許出願が公開」と言う記事(一部有料)が、今になっても、たまにツイッターで引用され、その結果、アクセス数が伸びたりしています。

ビットコインなどで使用されているパブリック・ブロックチェーンは、世界中に分散したマイナーに対して複雑な計算の競争をさせることで取引履歴の改竄を防ぐProof of Work(PoW)という仕組みを採用しています。これらの計算は実際の役に立つものではなく、電力を無駄に消費するだけであり、その結果、ビットコインは「地球に優しくない」という点が問題になっています。

何の役にも立たない計算パズルではなく、もっと意味のある作業でマイニングを行わせるべきだということで、人間の脳波をモニターして、広告視聴、サービスの使用、情報提供等の何らかの価値を生み出す活動によってマイニングを行い、報酬として暗号通貨を提供するようにしようというのがこの特許出願の基本的アイデアです。

ちょっとサイバーパンクぽい怖い話でもありますし、ワクチンを使ってどうしたこうしたという陰謀論的な流れで今頃になって記事のアクセス数が増えているのかもしれません(この点には深入りしません)。

昨年3月時点では、この出願(WO2020/060606)は国際公開されていただけで、各国の審査は進んでいなかったのですが、先日調べたら、この国際出願の優先権基礎出願である米国出願(16/138,518)が放棄(拒絶理由通知に非応答)されていました。国際出願の方も各国に国内移行した形跡はないので、マイクロソフトは特許化を断念したものと思われます。

なお、特許化を断念したということは、この発明が実施できなくなったというわけではありません。むしろ、誰でも実施できる(マイクロソフトが独占できなくなる)ことを意味します。

この記事は有料です。
栗原潔のIT特許分析レポートのバックナンバーをお申し込みください。

栗原潔のIT特許分析レポートのバックナンバー 2021年10月

税込880(記事1本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔の最近の記事