マイクロソフトによる人体の活動を使用した暗号通貨マイニング特許出願が公開
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暗号通貨(暗号資産、仮想通貨)は、世界を変えるテクノロジーと言われながら、なかなか変えてくれず、今の所は投機対象の域を出でていません。
暗号通貨を普及させる上で大きな課題の一つにマイニングがあります。ビットコイン等で使用されているPoW(Proof of Work)という方式では、世界中のマイニング業者(マイナー)が計算量による勝負を行なうことで、改竄困難な取引履歴をブロックチェーン上に構築していきます。これにより特定の管理者がなくても履歴の整合性を維持し、正確な価値のやり取りが行なえます。しかし、マイニングの過程で大量の電力が消費されること、多大な電量料金を使用できるプレイヤーが支配的になってしまうこと(いわば「電力本位制」)、トランザクションの確定までに時間がかかること、マイナーに支払う手数料が高額になることなどの問題が生じます(現状のビットコインは決済システムとして見れば圧倒的に「遅くて高い」です)。
マインニングの仕組みにおける重要ポイントは、マイナーに対してそれなりに大変なタスクを行なわせることです。誰でも簡単にできてしまう作業であれば、容易にブロックチェーンの改竄ができてしまいます。現状のPoWでは、マイナーに対して、ハッシュ値の先頭に所定数のゼロが並ぶ数を見付けるという膨大な計算量を擁する計算問題を行なわせ、答を得たマイナーに新たに発行されたコインを提供するという仕組みになっています。ブロックチェーンの取引を改竄するために計算量を使うのであれば、正直にマイニングした方が儲かるという経済的インセンティブにより仕組みが回っています。しかし、この計算は現実的有用性がないものであり、そのために世界中で膨大な計算量(=電力)が使われるという問題が生じています(ビットコインは「地球に優しくない」テクノロジです)。
この問題を解決するためにPoWに代わる多くの手法が提唱されています。その一つの候補となり得るマイクロソフトのユニークな発明の特許出願(国際特許出願)が先日公開されました。公開番号は、WO2020/060606、発明の名称は、”CRYPTOCURRENCY SYSTEM USING BODY ACTIVITY DATA”、出願日は2019年6月20日(優先日は2018年9月21日)です。各国への移行はまだ確認されていません。
発明の名称にあるとおり、マイニングにおいて、人間の活動データを活用する点がポイントになっています。活動データとは、脳波、血流、心拍等ですが、明細書上は特に脳波に力点が置かれているようです。
以下の説明は、タイトル画像(Fig.1)を参照してください。暗号通貨システム(150)とは別にユーザーに所定の作業を行なわせるタスク・サーバ(110)が存在します。また、スマホ等のユーザー・デバイス(130)にはセンサー(130)が備えられています。センサー(140)は、fMRI、EEG(脳波センサー)、NIRS(脳イメージング)、心拍計、体温計等、人体の活動状況をモニターできるデバイスです。
マイニングにおいてタスク・サーバ(110)がユーザー(145)に対して所定の作業を行なうよう命じます。ここで、作業とは、広告を視聴する、サービスを使用する、情報を提供する等々です。センサー(140)により、ユーザー(145)の状態(典型的には脳の活動状態)をモニターし、実際にユーザーが作業を行なっているかどうかを検証します。ここで、CAPTCHAなどにより、作業がコンピューターで自動化されていないかをチェックすることもできます。センサーのデータが所定の基準に合致していれば、マイニングが成功し(ブロックチェーンにブロックが追加され)、ユーザー(145)またはタスク・サーバ(110)の運営者に報酬として暗号通貨が提供されます。なお、ユーザーによる作業とPoWの一般的な計算を組み合わせてもよいとされています。
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