ウクライナ情勢で露呈した安倍外交の稚拙さ
フーテン老人世直し録(64)
弥生某日
ウクライナ情勢が緊迫している。ロシアのプーチン大統領は親露政権を打倒したウクライナに対し、ロシア軍の投入を議会に認めさせ、ロシア系住民の多いウクライナ南部のクリミア半島に軍を進駐させた。
これにオバマ大統領をはじめ欧米各国は反発し、6月にロシアのソチで開かれる予定のG8の準備会を中断し、経済制裁の可能性も表明した。こうした情勢を「新冷戦の始まり」と見る人もいる。
日本のメディアはもっぱらロシアの軍事介入を非難しているが、それはいつもながらのアメリカのソフト・パワーに呑まれた報道姿勢である。これで国民にはまたアメリカの洗脳情報が刷り込まれる。
フーテンはロシア軍の投入を戦争を始めるためとは見ていない。欧米各国と話し合うための交渉手段と見ている。交渉の落としどころはウクライナの分割か、またはクリミヤ自治共和国の独立か、あるいはウクライナの中立化ではないか。その交渉力としてプーチンは軍を投入した。
日本のメディアはロシアの軍事介入を非難するより、欧米の首脳がみな欠席し、またアジアでは韓国大統領も欠席したソチ・オリンピックの開会式に、安倍総理が出席してプーチン大統領と親密さをアピールし、今年の秋に日本を訪問する約束を取り付けた外交センスを問題にすべきである。
と言うのも、今回の事態はソチ・オリンピックが閉幕してから起こった事ではない。ウクライナの親欧米派による反政府デモは昨年末から始まり、親欧米派はオリンピックの最中にロシアが軍事介入できない事を知っていて、そこを狙ってデモを激化させ、暴力で親露政権を打倒した。
それが分かっていたから欧米の首脳はみなオリンピックの開会式を欠席した。「同性愛を認めないロシアとは価値観が異なる」とメディアには報道させたが、ウクライナを巡る欧米とロシアの綱引きはオリンピック前から始まっていたのである。
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