本音をちらちら見せてどうするの
フーテン老人世直し録(68)
弥生某日
23日に自民党の萩生田光一総裁特別秘書が河野談話の作成過程検証について「新たな事実が出てくれば、新たな談話を出す事はおかしなことではない」と発言し、それを翌日に菅官房長官が「ありえない」と否定する一幕があった。
河野談話の見直しについては安倍総理が14日の参議院予算委員会で「安倍内閣で見直す事は考えていない」と明言し、それを受けてオランダのハーグで開かれる核セキュリティ・サミットでアメリカが主導する形の日米韓首脳会談が行われることになっていた。
隣国同士の首脳が就任以来一度も会談出来ない異常事態を、アメリカの仲介でようやく会談にこぎつける矢先の出来事である。おそらく萩生田氏は安倍総理の本音を代弁し、菅官房長官が政治的なバランスを取る役目を果たしているのだろう。しかしそれが日本の外交的利益になるかと言えば、フーテンには全く逆としか思えない。
このパターンは昨年末の靖国参拝を巡ってもあった。アメリカは安倍総理に対し、靖国参拝を控えるよう様々なシグナルを送っていたが、それを無視する形で安倍総理は参拝を行った。アメリカはそれに「失望」を表明した。
日本の総理の国内での行動をアメリカが批判する事は内政干渉になる。「行くな」とは絶対に言えない。しかしアメリカが裁いた戦争犯罪人を神と祀る神社をアメリカが快く思うはずはない。第二次大戦後の国際秩序は勝利した側を正義と考える所から出発し、国際政治はその枠内にある。それをおかしいと言えばもう一度戦争をするしかない。
戦後秩序の枠内で国際政治には「敵の敵は味方」という力学が働き、そしてダブル・スタンダードもトリプル・スタンダードもありうる。民主主義を正しいとしながらも国益のためには非民主主義の独裁政権と手を組むことがある。何が利益で何が不利益かが判断の分かれ目になる。
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