冷戦の決着はまだついていなかったのか
フーテン老人世直し録(67)
弥生某日
ロシアのプーチン大統領がクリミヤ自治共和国をロシアに編入すると宣言した。編入すれば経済制裁を強化すると警告していた欧米は制裁強化に向かう事になる。しかし各国の対応には温度差があり、そこをプーチン大統領に見透かされている。
フランスはロシアと武器取引の関係があり、それが制裁の対象になればフランスの武器輸出は打撃を受ける。またイギリスの金融市場はロシア財閥の資金に依存しており、それが制裁の対象になればイギリス経済も影響を受ける。そしてドイツはエネルギー源をロシアの天然ガスに大きく依存している。従って経済制裁と言ってもやれることには限界がある。
フーテンは以前のブログで、欧米はロシアの軍事侵攻と騒いでいるが、そもそもソチ・オリンピックでロシアが軍事行動を取れない時期に、ウクライナの反政府デモを後ろから支援したのは欧米で、だから欧米の首脳は誰もオリンピックの開会式に出席しなかったと書いた。
またプーチン大統領の狙いは黒海艦隊の本拠地があるクリミヤ半島を欧米に脅かされないようにすることで、落としどころはウクライナの分割か、クリミヤ自治共和国の独立か、ウクライナの中立化ではないかとも書いた。
最終的にどう決着するかはまだ分からないが、いずれにしても事態は冷戦後の国際秩序を変える契機になりそうだ。冷戦が終わってアメリカの一極支配が確立し、「歴史の終わり」と思っていたら、「まだ終わっていなかった」というストーリーが始まるのである。
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