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酷暑でも行きたくなるホテルのビアガーデン「ホテビア」は何が注目か?

東龍グルメジャーナリスト
ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ(ホテル提供)

ホテビアの季節

2018年の夏は日本全国で酷暑となっており、非常に厳しい天候が続いています。これだけ暑くなってくると、ビールなどの爽やかなアルコール飲料がひときわおいしく感じられるのではないでしょうか。

日本ではビアガーデンがもはや夏の風物詩となっていますが、ここ最近はホテルでもビアガーデンに力を入れています。ビアガーデンとはいうものの、町場のビアガーデンと違うところは、非常におしゃれで快適であるということです。そこがホテルのビアガーデン=ホテビアが人気を博している理由にもなっています。

ホテビアについて、昨年は<4つのキーワードで語るホテルのビアガーデン「ホテビア」2017年のトレンド>という記事で紹介しました。

昨年は4つのキーワードでトレンドを紹介しましたが、今年のトレンドはどうなっているのでしょうか。

定番のホテビア

まずは定番からみていってみましょう。

東京プリンスホテル(ホテル提供)
東京プリンスホテル(ホテル提供)

東京プリンスホテル「ビアレストラン ガーデンアイランド」では、2018年6月8日から9月22日にかけて、「森の中のビアガーデン」が行われています。テラス席でありながらも屋根付きであり、全天候で楽しめるとあって毎年恒例です。鮑やフォアグラといった豪華な食材が使われた特別なコースも用意されていたりと、例年に引き続き高級ホテビアも提供しています。

広報の野原茉美氏が「今年から新しく加わった『エンジョイワイルドバーベキューセット』がお勧め。骨付き肉や塊肉など食べ応えのある肉を堪能できる」と述べるように、同セットには伊勢海老やズワイ蟹も含まれており、肉も魚介類も贅沢なコースとなっているのです。

ヒルトン東京お台場(ホテル提供)
ヒルトン東京お台場(ホテル提供)

ヒルトン東京お台場では2018年6月1日から9月30日にかけて、「お台場クラフトビアガーデン」が行われています。開業して初めての夏となる2016年から行われているホテビアで、東京近郊のクラフトビールが飲めたり、本格中国料理が味わえたり、台場の海が感じられたりするので、人気を博しています。夜だけではなく昼にも行われていることも、大きな特徴でしょう。

マーケティングコミュニケーションズ大塚妙香氏は「今年は6種類のクラフト生ビールと、ピザ窯を新たに導入し、さらにバージョンアップした。中国料理風のピザもご用意している。溢れ出るチョコレートが絶品の釜焼スイーツ『チョコバナカルォーネ』が人気の一品」と、昨年よりもぐっと進化していることを説明します。

新しいホテビア

定番もあれば、新しくホテビアを始めたホテルもあります。

東京マリオットホテル(ホテル提供)
東京マリオットホテル(ホテル提供)

東京マリオットホテルの「ラウンジ&ダイニングG」では2018年7月1日から9月30日にかけて「マリオット バーベキュー ビア テラス」が行われています。豊かなテラス席を有効に利用するため、今年からバーベキューをテーマとしたホテビアを開始しました。

しあわせ絆牛やニューカレドニア産の天使の海老など、幸せを運ぶような食材にもこだわっています。無煙炭火焼きのバーベキュースタイルなので、匂いが気になる人も利用しやすいでしょう。

マーケティング マネージャーの黒田博子氏は「既に好評となっているので、9月30日までのところを、10月31日までに延長することが決まった。少しメニューも変えるのでリピートしていただきたい」とホテビアの人気が高いと話します。

トレンドは地域性

こういった定番や新しいホテビアがある中で、今年注目したいホテビアがあります。

それは地域性をテーマとしたホテビアです。以下のように、地域をテーマとしたホテビアが増えてきています。

  • オーストラリア/グランド キッチン@パレスホテル東京
  • スペイン/ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ
  • 小江戸/ルーフトップテラス@ヒルトン東京
  • アメリカ/オーク ドア@グランド ハイアット 東京
  • 世界各地/トゥエンティエイト@コンラッド東京

それぞれの特徴と背景を紹介していきましょう。

パレスホテル東京

パレスホテル東京(ホテル提供)
パレスホテル東京(ホテル提供)

パレスホテル東京のオールデイダイニング「グランド キッチン」では、2018年7月2日から9月28日にかけて「Summer Terrace Gathering」が行われています。平日限定で2部制が敷かれており、4人以上から利用可能で予約が必要です。

今年の「Summer Terrace Gathering」は、世界中の食文化が溶け合い、豊かな自然に恵まれたオーストラリアをテーマにしており、 オーストラリア大使館 商務部が後援しています。

ダイナミックな肉料理や新鮮なシーフードを使ったオーストラリア料理をドリンクのフリーフローと共に、水辺のテラスで楽しめることが特徴的です。

素材本来の旨みが感じられるオーストラリア産フィレ肉のプランチャ、オーブンで大胆に焼き上げたラムチョップのグリル、火を通すことでさらに甘みを増した天使の海老とサマーベジタブルのガーリックオイルソテーなどを中心に、栄養豊富なスプラウトやキヌアのサラダ、様々な味わいのディップが用意されたスティックサラダやクラッカーなど、みんなで分け合いながら賑やかに食べられるメニューを意識しています。

パレスホテル東京(ホテル提供)
パレスホテル東京(ホテル提供)

ドリンクのフリーフローでは、安定した気候と最新の醸造技術で評価されているオーストラリアのスパークリングワイン、白ワイン、赤ワインも提供しています。

さらには、オーストラリアで夏のドリンクとして定番となっている、ライムジュースにビターズを加えたカクテル、ベリーを漬け込んだフルーティーなインフュージョンカクテルもあるなど、幅広いラインナップを体験できるようになっているのです。

料理からドリンクまでオーストラリア尽くしですが、オーストラリアがテーマとなったのは、どのような理由でしょうか。

広報の塩原沙織氏は「パレスホテル東京のサマープランはお濠を望めるテラス席で楽しめるということで、夏の風物詩として毎年好評となっている。様々な国のお料理をテーマにテラスプランを開催している中で、今回は他ではなかなか提供していない、様々な食文化が交わるオーストラリアをテーマに選んだ」と理由を述べます。

特徴を尋ねると「ボリュームたっぷりのオーストラリア産の肉料理を中心とし、しっかりと楽しめる料理を用意した」と説明します。

広大かつ肥沃な大地をもつオーストラリアは豊かな食材を持っています。南半球にあり、日本が真夏の時には真冬となっているので、涼をイメージしたい日本のホテビアにはピッタリな地域ではないでしょうか。

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ(ホテル提供)
ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ(ホテル提供)

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイでは2018年6月20日から9月14日にかけて、「ビアガーデン スパニッシュナイト」が行われています。

スペイン政府観光局が協力し、スペインのバル料理やグリル料理、フリーフローで東京の夏をのりきるためのホテビアを提供しており、「フラメンコショー on MONDAY」と謳われた月曜日にはフラメンコショーも鑑賞できます。

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイで行われるホテビアの特徴は、雨天や暑さ、虫も気にせず快適に過ごせる室内ビアガーデンであることです。グループ全員にデザートが当たるトランプゲームも実施されています。また、関連施設「ザ ストリングス 表参道」でも、同様に室内でホテビアを楽しめるようになっており、テーマも同じようにスペインです。

ホテル内の居心地のよいバンケットでありながらも、ビアガーデンの雰囲気を楽しめるとあって毎年高い人気を得ていますが、今年はなぜスペインをテーマとしたのでしょうか。

ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ(ホテル提供)
ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ(ホテル提供)

営業企画・個人営業支配人の奥園恵美子氏は「今年は日本とスペインの外交樹立150周年という節目なので、企画が持ち上がった。少しでもスペインの雰囲気を味わっていただこうと月曜日にフラメンコショーの開催。スペインで夏に飲まれる『クラーラ』ビールにレモンジュースをいれた、さわやかなドリンクも新しく提供した」と述べます。

広報担当の白石貴子氏は「スペインバルで提供している料理は、ビールやアルコールに合うので以前から注目していた。スペインバルでは、タパスやフリッター、肉料理やパエリアを食べながら、ビール、カクテル、ワインを飲み、男性も女性も楽しく過ごしている。同じような賑やかさを再現したいと考えて、スペインをテーマにした。夏の暑い雰囲気と情熱の国スペインがビアガーデンのイメージにぴったり当てはまる」と話します。

スペインオムレツ、ガスパチョ、小海老とマシュルームのアヒージョ、タコのピリ辛トマト煮込みといったスペイン料理が用意されており、アサヒスーパードライ、アサヒ ザ ドリーム(糖質オフ)、レーベンブロイとビール3種が飲み比べできたり、スペインカクテルやサングリアを好きなだけ楽しめたりします。

楽しく賑やかに過ごせるスペインバルは、まさに活気に溢れるホテビアに相応しいでしょう。他ではあまり見られないフラメンコショーを鑑賞できるのも嬉しいところです。暑さを忘れるくらい盛り上がれる夜になるのではないでしょうか。

ヒルトン東京

ヒルトン東京(ホテル提供)
ヒルトン東京(ホテル提供)

ヒルトン東京では、2018年6月15日から9月16日にかけて、7階「ルーフトップテラス」で毎年恒例の天空のビアガーデンが行われており、今年は「都会の摩天楼で楽しむ小江戸風ビアガーデン」と題されています。

入場料には90分のフリーフローが付いており、料金を追加すれば、一角を竹垣で囲われ、リラックスしながら落ち着いて過ごせる畳のVIP席を利用できます。

小江戸風がテーマというだけあって、演出にも凝っています。新宿中央公園や高層ビル群を一望できるルーフトップテラスに一足踏み入れると、和傘や江戸時代の家屋をイメージしたフードコートが登場し、浴衣が似合う賑やかな江戸の町風な設えが現れ、お祭り気分が高まるようになっているのです。

ビーフ、チキン、ポーク、ラムなどバラエティに富んだ肉料理、ひんやりおでんや厚揚げ豆腐などのヘルシーな和のおつまみ、暑い夏にぴったりの激辛ラムカレー、数人で楽しめる見た目にもインパクトが大きい550gのトマホークステーキなど、注目の料理がいくつもあります。

生ビール、赤ワイン、白ワイン、ハイボール、各種カクテル、ソフトドリンクに加えて、日本茶カクテルといったオリジナリティ溢れるドリンクもあります。

ヒルトン東京(ホテル提供)
ヒルトン東京(ホテル提供)

小江戸をテーマとした理由について、マーケティングコミュニケーションズ マネージャーの五戸若茂子氏は「大人気となっている1階マーブルラウンジのデザートブッフェと同様に、浴衣や着物など和の装いで楽しめる場所が提供できたらと考えた。今年は花火大会も去年と比べて少ないようなので、日本の夏の粋を西新宿の高層ビル群で楽しんでいただきたい」と説明します。

さらには「ヒルトン東京のビアガーデンは比較的、宿泊する外国人ゲストも多い。そのため、日本らしさを手軽に感じていただける空間を作ることで、モノよりコトを伝えられると考えている」と背景について述べます。

週末には不定期でDJや日本の夏を感じられるイベントも予定しており、例年と一味違う天空のビアガーデンに仕上がっていますが、訪日外国人客はますます増え、日本文化に興味が持たれているだけに、この小江戸風ホテビアもきっと訪日外国人に好評となるのではないでしょうか。

グランド ハイアット 東京

グランド ハイアット 東京(ホテル提供)
グランド ハイアット 東京(ホテル提供)

グランド ハイアット 東京のステーキハウス「オーク ドア」では、2018年6月1日から9月30日にかけて、本場アメリカのバーベキュー料理をシェアスタイルで楽しめる「アメリカン ビアガーデン」を開催しています。

前後半に分かれており、6~7月にはサウスウエスト バーベキュー、8~9月にはノースイースト シーフードボイルと、アメリカらしい2種類のメイン料理を用意しています。

前半のサウスウエスト バーベキューは終了しましたが、後半のノースイースト シーフードボイルでは、まるごとのロブスターをムール貝などのシーフードや野菜、ソーセージとともにダイナミックにボイルしたアメリカスタイルのメインディッシュをシェアスタイルで提供しています。

メイン料理はシェアスタイルで、賑やかに取り分けながら食べることになるので、ビアガーデンらしく盛り上がることでしょう。

グランド ハイアット 東京(ホテル提供)
グランド ハイアット 東京(ホテル提供)

フリーフローのカクテルには、オーク ドア バーで作る本格的なフローズンマルガリータとフローズンモヒートをそれぞれ2種類も用意しています。

ドン・ペリニヨンなどの高級シャンパーニュを好きなだけ楽しめ、バーベキューとシーフードの両方を体験できるVIPビアガーデンプランが用意されているのも見逃せません。

アメリカをテーマにした理由について、広報の津曲修二氏は、「ビアガーデンといえばバーベキュー料理で、バーベキュー料理といえばアメリカ。新しく料理長となったパトリック シマダもアメリカ人。アメリカのバーベキューは、ダイナミックな料理を大切な人たちとシェアして楽しめるオーク ドアのコンセプトと親和性が高い」と答えます。

日本の夏は長いだけに、2ヶ月で内容が新しくなるホテビアは、リピーターが多いグランド ハイアット 東京にとって、ちょうどよいプロモーションではないでしょうか。後半はシーフードがメインとなっているので、魚介類好きの日本人にもお勧めです。

コンラッド東京

コンラッド東京(ホテル提供)
コンラッド東京(ホテル提供)

コンラッド東京のバー&ラウンジ「トゥエンティエイト」は、18時30分から21時30分までの3時間限定で、フリーフローとともに8種のアミューズブーシェを楽しめる「コンラッド・アペロ」を2018年5月23日に開始しました。

アペロはアペリティフの略で、「アペロしませんか?」と誘い合うヨーロッパ発祥の食前酒の習慣。好きな飲み物とおつまみで夕食前の楽しい時間を過ごすリラックスしたひとときです。「コンラッド・アペロ」では、フリーフローで様々なドリンクを楽しめるだけではなく、ドリンクと相性のよい一口サイズのアミューズブーシェ8種が提供されています。

アミューズブーシェは世界各国の料理をテーマとしており、ピタブレッドを使ったトルコ風の前菜や、インド風フライであるサモサ、スペインのアヒージョから小さいハンバーガー、さらには日本の焼き鳥までと幅広いです。

8種類のスペシャル・カクテルはシンガポールスリング+紫蘇やマンハッタン+梅、モヒート+スダチ、カイピリーニャ+ゆずといった和を意識したものが印象に残ります。

コンラッド東京(ホテル提供)
コンラッド東京(ホテル提供)

世界各地をテーマとした理由はなぜでしょうか。

マーケティングコミュニケーションズディレクター谷端理絵氏は「今回のメニューを考案したコンラッド東京のスーシェフPawan Duttaは、クルーズシェフとしてこれまで約80もの国に滞在してきた経験を持つ。お酒を引き立てる世界の個性的なおつまみで、各国の風土を感じてもらいたかったので、各地域の食文化で生まれた独創的な8種をセレクトした」と説明します。

また、もうひとつの理由として、焼き鳥を食べるとビールをおいしく飲めるので、世界各地の焼き鳥的なおつまみを集めたとも述べています。

世界各地の料理が用意されていますが、特にお勧めのメニューに関しては「シェフのお気に入りは地中海、中東、インドの料理。特に、ポテトとグリーンピースのサモサはシェフの故郷の味なので是非とも食べていただきたい」と勧めます。

様々な地域の焼き鳥的なおつまみを食べながら、お酒を飲めれば、この上なく楽しい時間となるでしょう。食の体験も広まって、非常に有意義なホテビアとなるのではないでしょうか。

新たな可能性を示したホテビア

今年は日本全国で極めて厳しい暑さが続いており、ビールを飲めるビアガーデンで暑さを吹きとばせないくらい、外は酷い環境となっています。

そういった状況では、室内で開催されていたり、日よけなどがしっかりと設置されていたりする、ホテルのビアガーデン=ホテビアがよいのではないでしょうか。

ホテビアは成熟して競争が激しくなっているので、より特徴をだすために、地域性を意識するようになりました。これによってますます料理の幅が広がっていき、料理の幅が広がることによってドリンクの幅も広がっていきます。

2018年のホテビアは、ホテルのビアガーデンにおける新しい可能性を示したのではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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