今冬、バイオマス発電所が軒並み稼働停止!
再生可能エネルギーの一角を占めるバイオマス発電。カーボン・ニュートラルでCO2を出さないと、木材を燃料にする発電への注目が増しているようだが……実は、急速にブレーキがかかっている。
完成したバイオマス発電所を稼働させない・稼働を止める事態が、各地に頻出しているのだ。
まず兵庫県の朝来市の関電の朝来バイオマス発電所は、2016年に稼働し始めたが、今年年内いっぱいで停止する。燃料、つまり木材が、世界的な木材価格を高騰させたウッドショックや、ロシアのウクライナ侵攻の影響で輸入を禁止したことで調達が難しくなったからだ。
朝来発電所の発電出力は5600キロワットで、年間約8万トンの木材を燃やす。ざっと13万立方メートルだ。この量を安定的に調達しなければならないのだが、集まらないのだ。
すでに赤字覚悟で買取価格を当初より約1.4倍に上げているが、それでも難しいという。
そして2015年稼働の茨城県の宮の郷木質バイオマス発電所も、今月7日から一時停止させた。こちらも燃料が十分に集まらないからである。
どちらも内陸部に位置する発電所で、燃料も国産材の未利用材に限っている。しかし、未利用材は搬出困難な山の中にある。しかも年々遠距離になって、コストは通常の木材搬出より高い。
加えて外材が手に入らないから国産材を求める動きが強まっており、さらに製紙チップ需要も増えているため取り合いの状態なのだ。
円安で輸入燃料は軒並み高騰
一方、燃料を海外に依存するバイオマス発電所もピンチだ。理由は、こちらも燃料価格が跳ね上がったため。
とくにパーム油を燃やす発電所は8カ所すべて止まった。宮城県のHIS角田バイオマスパークは、今年1月に稼働を始めたばかりだが、すぐに停止し、HISは発電事業から完全に撤退した。ほかにもパーム油を燃料とするバイオマス発電所は、次々と稼働を停止している。
理由は、産地のマレーシアでコロナ禍のため農園労働者が減り、パーム油の生産が減って、そのため価格が2倍以上に高騰したからだ。加えて、燃料生産の合法性や持続可能性を証明する認証の審査も滞り、取得が困難になってきた。認証がないとFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)からはずされるから、事実上使えなくなる。
同じことは、ヤシ殻でも言える。価格高と認証の問題で行き詰まる。
また、主に東南アジアやカナダなどの木質ペレットも、円安に加えて世界的な品薄で価格が暴騰した。とくに日本がもっとも輸入しているベトナム産木質ペレットの一部は、合法性や環境配慮を示す森林認証の偽装がばれて認証を剥奪された。こちらも認証されていないものは使えない。
脱炭素ではないと研究者が警告
ヨーロッパの環境NGOや研究者らは、木材を原料とするバイオマス発電は、すべて再生可能エネルギーの枠組から除外すべきだと訴え始めた。今のやり方では森林破壊を助長しかねず、CO2排出量の削減にもならないからだ。
木材を燃焼させて出す炭素を回収するには、燃やした木材と同じ量を植林して育てなければならないが、それまで何十年もかかる。さらに木材などの栽培や伐採、加工、輸送まで含めたCO2排出量を計算したら、「カーボン・ニュートラル」ではないという指摘がされているのだ。
加えて森林を伐採すると、森林土壌を破壊しやすい。すると土壌に含まれている炭素を放出させてしまう。こうした点は、以前にも指摘した。
もともと日本のバイオマス発電は、木質燃料の多くを輸入しており、その時点でCO2の総排出量は石炭を燃やすより多いという指摘もある。国内でも、伐採跡地の再造林は約3割しかしていないし、建材になる木材まで燃料にしている。しかも発電だけで熱利用していないため、5割以上のエネルギーを無駄にしている。
もはやバイオマス発電は、燃料価格だけでなく脱炭素の意味からも破綻しているのだ。今回の経済的な理由による稼働停止は、むしろ僥倖かもしれない。
森林を切り開いて建設するメガソーラーや風力発電なども、環境破壊的だと反対運動が相次いでいる。
この冬の電力不足が指摘される中で、再生可能エネルギーが軒並み黄色信号をつけているのだから非常に厳しい状況だ。
しかし落ち着いて考えると、温室効果ガスの削減には役に立たないとされている電力源を無理して稼働させることは地球環境のためにならない。
燃料不足と価格高騰を機会に抜本的にエネルギー政策を見直すべきだろう。