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このチームの「新監督」は別のチームとの契約期間中に移籍。史上初の女性監督は誕生せず

宇根夏樹ベースボール・ライター
ボブ・メルビン Jun 21, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンフランシスコ・ジャイアンツは、レギュラーシーズンが終わる直前に、ゲーブ・キャプラー監督を解雇した。それについては、こちらで書いた。

「続投発言から半月後に監督を解雇。オーナーの心変わりは何が理由だったのか」

 新監督は、早くも決まったようだ。ジ・アスレティックスアスレティックのアンドルー・バッガリーによると、ジャイアンツは、10月25日の朝にオラクル・パークで記者会見を開き、ボブ・メルビンの監督就任を発表する予定だという。

 メルビンは、2022年からサンディエゴ・パドレスで監督を務めていた。来シーズンは3年契約の3年目だが、パドレスを去り、同じナ・リーグ西地区のジャイアンツで采配を振ることになる。

 契約期間中にもかかわらず、ジャイアンツの面接を受けることをパドレスが許可したのは、ポストシーズン進出を逃したことよりも、編成責任者のA.J.プレラーとメルビンとの関係悪化が理由らしい。また、サンディエゴ・ユニオン-トリビューンのケビン・エイシーによると、パドレスは年俸総額を減らすつもりでいるという。こちらも、理由の一つかもしれない。

 メルビンが監督として指揮を執るのは、シアトル・マリナーズ(2003~04年)、アリゾナ・ダイヤモンドバックス(2005~09年)、オークランド・アスレティックス(2011~21年)、パドレス(2022~23年)に続き、ジャイアンツが5チーム目となる。

 ポストシーズン進出は、2007年、2012~14年、2018~20年、2022年の8度。今年の最優秀監督に選ばれることはなさそうだが、これまでに3度、2007年、2012年、2018年に受賞している。

 契約期間中の監督が移籍することは珍しいが、メルビンは、前回もそうだった。こちらも、3年契約の2年目が終わったところで、アスレティックスからパドレスへ移った。その移籍については、こちらで書いた。

「来シーズンの契約が残っている監督が、他球団の監督に就任。去られた球団は、なぜ移籍を許可したのか」

 2002年のオフに、シアトル・マリナーズの監督だったルー・ピネラがタンパベイ・デビルレイズの監督に就任した際には、契約期間中ということで、デビルレイズはピネラ(とマイナーリーガー1人)と交換に、レギュラー外野手のランディ・ウィンをマリナーズへ譲った。だが、メルビンがアスレティックスからパドレスへ移籍した時、こうした「補償」はなかった。今回もないと思われる。

 なお、ジャイアンツの監督候補には、メルビンの他に、ベンチ・コーチのカイ・コレイアやアシスタント・コーチのアリッサ・ナッケンに、元捕手のスティーブン・ボートジェイソン・バリテックらの名前が浮上していた。現在、ボートはマリナーズのブルペン・コーチ&クオリティ・コントロール・コーチ、バリテックはボストン・レッドソックスのゲーム・プランニング・コーディネーター&キャッチング・コーチだ。彼らのうち、ナッケンが監督に就任すれば、メジャーリーグ初の女性監督となっていた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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