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快進撃のバレーボール男子日本代表に韓国が「最高の時代を迎えている」と注目するワケ

金明昱スポーツライター
バレーボール男子日本代表の山内晶大(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

「日本バレーボールが最高の時代を迎えている」

 記事の冒頭からそう伝えたのは、韓国スポーツ紙「スポーツワールド」だ。

バレーボール・ネーションズリーグ(VNL)の男子決勝で、世界ランキング2位の日本がフランス(同5位)と対戦し1-3で敗れた。それでも1977年W杯バレー以来、47年ぶりの主要国際大会で2位となる快挙を成し遂げたことに、韓国メディアも驚きのようだった。

18年のVNL最下位の韓国とは対照的

「フィリップ・ブラン監督が率いるバレーボール男子日本代表は1日、フランス代表とのVNL決勝戦で1-3で敗れ、準優勝となった。2018年からスタートしたVNLで日本は近年、成長が著しい。22年の5位に続き、23年にはアジア初の3位で銅メダルを獲得。韓国が18年に1勝14敗の最下位で降格し、VNLの舞台から姿を消したのとは対照的のニュースだ。今年はさらに早い成長を見せ、予選を9勝3敗4位で通過。準々決勝ではカナダを下し、6月30日のスロベニアとの準決勝では、3-0で勝利し史上初の決勝進出に成功した」

日本は果敢な世代交代が成功

 さらに記事では、決勝でチーム最多17得点を挙げた石川祐希が「ベストアウトサイドヒッター賞」を受賞し、山本智大が「ベストリベロ」に選ばれたことも伝え、「今回の日本の結果は、果敢な世代交代が成功したのに加え、しっかりとした基本技術をベースに身体的に不利な部分を高強度のトレーニングでカバーした成果が出た。2021年9月に東京五輪終了後、首席コーチを務めていたフランス出身のフィリップ・ブラン監督に指揮を任せ、その結果、今回の銀メダルにつながった」と報じている。

パリ五輪で日本のメダル獲得にも興味

 一方で、バレーボール男子韓国代表は厳しい状況が続いている。

「スポーツ京郷」は「一時はアジアで(日本と)ライバル関係だった韓国男女バレーボールにとって、(日本の活躍ぶりは)うらやましい限りだ。韓国は男女ともに五輪出場権獲得に失敗。韓国男子バレーはVNLに復帰できない状況で、今年バーレーンで開催された2024アジアバレーボール連盟のチャレンジカップで3位にとどまり、優勝チームに与えられるFIVBチャレンジャーカップ出場権の獲得にも失敗した」と嘆いている。

 韓国メディアがもう一つ気にかけているのは、今月開幕するパリ五輪での日本の結果だ。

「日本は1972年ミュンヘン五輪の金メダル以降、52年ぶりのメダル獲得を目指している。1996年アトランタ五輪から2016年リオ五輪まで、予選落ちが5回の日本は、2021年開催の東京五輪で7位に入った。3年ぶりに変貌を遂げた姿のなかで、メダル獲得に挑戦する」(スポーツワールド)

パリ五輪後に韓国挑戦のフィリップ監督に関心

 日本のメダルに期待を寄せつつ、悲しいのは韓国がパリ五輪の団体競技にほとんど出場できないこと。男女サッカー、男女バスケ、男女バレーなどでパリ五輪出場権の獲得に失敗しており、出られるのは女子ハンドボールが唯一。韓国選手団が掲げる金メダルの目標数も「5個」で、エリートスポーツの低迷が深刻な状況にある。それと対照的な今回の日本のバレーボールの快進撃のニュースは、確かにうらやましく見えて当然だろう。

 また、これだけ日本男子バレーの結果を気にかけているのは、フィリップ・ブラン監督がパリ五輪終了後に韓国Vリーグの天安現代キャピタル・スカイウォーカーズ監督に就任することも関係している。

 パリ五輪の次に韓国バレーボール界にやってくるフィリップ監督の手腕や采配にも注目している。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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