大地震の後の雨は危険・警報等の発表基準の引き下げ
4月14日21時26分に九州内陸部を震源とする、マグニチュード6.5の大地震が発生し、熊本県益城町で震度7を観測しました。九州で震度7を観測したのは初めてのことです。
また、15日0時3分にはマグニチュード6.4の余震が発生し、熊本県宇城市で震度6強を観測しました。
九州の地震
九州では日向灘でマグニチュード7程度までの地震が比較的頻繁に発生し、内陸部でもマグニチュード6.5から7程度の地震が発生しています。
14日の地震は、これまで地震が起きていない場所での地震ではありません。
大地震発生後の懸念は火山と大雨
巨大地震によって地下のマグマだまりが揺さぶられたり、地殻変位がおきることで火山性の地震が増えるとされていますし、巨大地震後に火山活動が活発になることは珍しくありません。
このため、気象庁では、巨大地震のあとは火山活動を注視しています。
平成23年3月11日に最大震度7の地震(東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震)が発生し、翌12日には長野県北部にも最大震度6強の地震が発生しました。
東日本大震災のときは、地震後に日光白根山、乗鞍岳、富士山、阿蘇山など、関東から九州にかけての13の活火山における地震活動が増えていますが、噴火の前兆となる地殻変動や火山性微動は観測されませんでした。そして、その後、地震活動も減っています。
今回の地震を受けて、阿蘇山などの活火山の調査が行われると思いますが、常時監視では特に問題が出ていませんので、火山噴火が差し迫っているわけではなさそうです。
問題は大雨です。
強い揺れの地域では、地盤が脆弱になっているため、少しの雨でも二次災害の危険が高くなるからです。
大雨警報基準の引き下げと兵庫県南部地震
平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震、翌12日の長野県北部地震をうけ、気象庁では、12日から震度5強以上を観測した16都県の244市町村について、大雨警報等の発表基準を2~5割引き下げて運用しています。
このような基準の引き下げは、このときが初めてではありません。平成20年の岩手・宮城内陸地震などでも同様のことが行われており、平成7年1月17日の兵庫県南部地震のときもそうでした。兵庫県南部地震当時、私は、神戸海洋気象台の予報課長でした。
神戸海洋気象台では、観測も予報も一回も欠けることなく通常通りの業務を行っていましたが、1月22日に低気圧通過でまとまった雨の可能性がわかった20日からは「雨に関する情報(大雨情報ではありません)」などを発表して早めに警戒を呼びかけました。
その時、兵庫県庁に大雨警報等に基準を下げたいと説明に行ったのですが、「県は忙しすぎて検討する時間がない。了承するので、気象台が全体的に見て良いと思っているとおりの基準でやってほしい」ということに近いことを言われました。
今は、予め基準を下げることについての十分な検討が行われていますので、兵庫県南部地震の時のようなドタバタはなく、粛々と基準を下げると思います。
兵庫県南部地震から5日目でも、山や崖に亀裂が入り、堤防や防潮堤も損傷を受けたままで、排水溝は瓦礫で詰まり、排水ポンプも正常作動が確認できない状況で、大規模な二次災害が懸念されていました。人命救助がまっさきに行われており、多数の救援物資は野積みで、屋根が壊れている家に住んでいる人、たき火をしながら野宿している人が多数いましたので、普段では考えられないことが次々に起きる可能性がありました。
22日の雨は、ほぼ予想通りで、神戸市や西宮市などでは土砂崩れや道路の亀裂が相次いでいますが、事前避難で人的被害はありませんでした。いろいろな防災関係者の努力の結果、大きな災害や不測の事態の発生を防ぎ、雨の翌日から本格的な復興が軌道に乗りました。
土日の天気予報は雨
熊本県の土曜日は「晴のち一時雨、降水確率60%」、日曜日は「曇時々雨、降水確率80%」です。
二次災害により被害が深刻になり、復旧が大幅に遅れます。突発的に起きた大災害に比べ、被災地での活動という困難さが加わるものの、いつどこでがある程度わかる二次災害は防ぐ可能性が高いといえます。
しかし、大地震から2日目と防災対応の時間がほとんどとれない雨です。
二次災害に備え、一刻も早い支援が必要です。