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日本の大麻をいますぐ解禁せよ:日本産大麻ビジネスの破壊的影響力

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 月刊『WiLL』の11月号に「日本の大麻と“ドラッグ大麻”ここが大違い!」と題する記事が載せられた。筆者の所属する皇學館大学現代日本社会学部長、新田均教授の記事である。

 筆者はずいぶん前からこれについての話を聞いていたのだが、実際に記事を読んでみると、やはり日本の大麻は「解禁」しなければならないと強く思うようになった。

 以下、記事の重要な点を二点要約して取り上げるとともに、「解禁」されたときの我が国におけるメリットを挙げていくことにしたい。

日本の大麻は麻薬ではない

 わが国において、大麻が規制の対象となったのは、占領中である。

 もともと日本では、古来より大麻を生産していたが、麻薬として吸引する習慣はなかった。それもそのはず、大麻の麻薬成分であるTHCがほとんど含まれていないからである。加えて日本の大麻には、THCの薬効を打ち消すCBDという成分が含まれている。そのため、現在そのほとんどが栽培されている栃木県では、子供たちが通っている道端で大麻が植えられており、また繊維として有効利用される茎以外の部分は、なんと畑で燃やされているのである。それによって子供たちは決してハイな気分になったりはしない。

 新田教授のいうように、「ノン・アルコール・ビール」(日本産大麻)も「ビール」(大麻)なのだから「酒」(麻薬)であるという論法が通用しているのが、我が国の現状である。

大麻取締法は日本の大麻を守るための法律

 大麻取締法は、日本の大麻を禁止することを目的につくられた法律ではない。

 連合軍総司令官より日本政府に対して発せられた覚書『麻薬の統制及び記録に関する件』の中には、「マリファナ」の栽培禁止に関する条項があったが、厚生省はこの「マリファナ」を「印度大麻草」と翻訳し、従来から我が国で栽培している「タイマ」は、この省令には該当しないものとしていたようである(『特産課・特産会・二十五年誌』)。

 しかし当初、GHQは、勘違いによって日本産大麻を禁止した。よって農林省は、わが国の主要農産物である日本産大麻の栽培許可を要望し、連合軍総司令部と何度も折衝した。「マリファナ」は「タイマ」ではない。ファインプレーである。ついには連合軍総司令官より『繊維の採取を目的とする大麻の栽培に関する件』という覚書が出される。一定の制約条件のもとに、日本産大麻の栽培が許可されたのである。かくして昭和23年、大麻取締法が制定された。つまり大麻取締法は、日本の大麻の生産を維持するため、あるいは容易にするために制定されたのである。

 さらに重要なのは、次の点である。現行の大麻取締法第二十二条の二には、「この法律に規定する免許又は許可には、条件を付し、及びこれを変更することができる」とあるが、そのすぐ後には「前項の条件は、大麻の濫用による保健衛生上の危害の発生を防止するため必要な最小限度のものに限り、かつ、免許又は許可を受ける者に対し不当な義務を課することとならないものでなければならない」と明確に記されているのである。ようするに「大麻の濫用による保険衛生上の危害」が発生する恐れがない日本産大麻の栽培については、「原則として許可」することを法律は命じているのである。

 新田教授の話では、現在、各県において大麻栽培は「原則禁止」の行政が行われているとのことである。これはおかしい。日本は法治国家である。法によらなければ、行政は民間の自由な市場参入を阻めることはできない。日本産大麻の栽培は「解禁」しなければならない。

日本産大麻ビジネスの破壊的影響力

 じつは大麻は、驚くほど汎用性のある植物である。強い植物であるため、農薬などを使わずとも勝手に育つ。気候を問わずどこでも栽培することが可能である。はっきりいって無尽蔵の資源といえるのである。ゆえに大麻という植物を我が国の資源と捉え、産業目的として利用することで、大きな経済効果が見込まれる。(今回はCBDを用いた医療目的での利用は割愛する)

 まず、大麻の種からは油がとれる。食品としてみると、必須脂肪酸がバランスよく大量に含まれているため、健康によい。ほかには化粧品や石鹸などにも使われる。加えて大麻の油は、いまや石油に代わるエネルギー資源としても注目されている。しかも石油とは違い、短期間で再生が可能、かつ枯渇しない、バイオマス資源である。我が国は久しくエネルギー資源に乏しいと言われてきたから、大麻を利用しない手はない。エネルギー資源は国家の生命線である。

 次に茎である。茎は繊維として利用でき、木材の4倍ほどの繊維パルプが含まれている。また、木が成長するのには数十年という年月が必要だが、大麻は屋外の場合3、4ヶ月ほどで成長するため、きわめて資源効率がよい。ゆえに古来より様々な用途に使われており、衣類のほか、非常に強い耐久性をもつ紙にもなる。昨今において注目すべきは建材としての用途であり、コンクリートに代わる非常に頑丈な建材として、ヘンプクリートというものが存在する。これはカビや腐敗に強く、耐火性、耐久性にも優れているという。いうまでもなく、コンクリートは生成過程で二酸化炭素を排出するが、大麻は植物であるからむしろ吸収する。

 また同様に、大麻からはバイオプラスチックも作ることができる。このプラスチックは石油で作ったプラスチックとは異なり、土の中で分解する。しかも従来のプラスチックと同等の強度でありながら、重さは軽いため、自動車の内装などに使用することで燃費向上に効果がある。まさに大麻はエコの面で非常に優れた植物なのである。

 最後に葉と根である。大麻の葉と根は、一次産業、すなわち農業に効果がある。大麻の葉は収穫期になると枯れ落ちてしまう。つまり葉は、腐葉土となって土地を肥やすのである。根のほうは、1mを超えるほど非常に深くまで張っているため、土地を柔らかくするし、収穫後の根は腐って肥料になる。大麻が強い植物であるゆえんである。わが国の生産する主要な農産物の一つとして、加えていかない手はないのである。

 ざっくりとまとめたが、産業目的で使われる大麻は、いまや世界中で研究開発の対象となっている。それほどまでに、大麻は可能性のかたまりなのである。ぐずぐずしているとすべて他国にもっていかれてしまう。すぐさま日本産大麻を「解禁」し、日本の産業競争力を強化しなければならないのである。

皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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