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深田恭子のコマーシャルはいつ消えたのか 休養発表から一週間の撤退戦略

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:アフロ)

5月26日に発表された深田恭子の休養

深田恭子の休養が発表されたのは5月26日の水曜日だった。

2日前の5月24日には熊本復興応援のイベントに駆けつけており、そのニュースは翌日5月25日もあつかわれていた。

それが26日になって急遽「適応障害による活動休止」が所属事務所より発表された。

その時点で深田恭子が出ているコマーシャルは多かった。

「放置少女」「UQモバイル」など多数のCMに出演中

印象深いコマーシャルでいえば、足立梨花らと5人で並んで歩く『放置少女〜美しい世界へ〜』があった。深田恭子はタイトなミニスカートでセンターを歩き、圧倒的な存在感を示していた。目の離せないコマーシャルだった。

モバイルUQの三姉妹のコマーシャルも継続されていた。

おなじみ、多部未華子、永野芽郁との三姉妹シリーズである。

魔女姿の三姉妹が先生役で登場して「みんなちゃんと親孝行してる?」「家に族と書いて家族」というものや、また「ママパパ+5G編」(三姉妹が青い着物で登場し、背後に阿吽の仁王像のようなパパとママが構えている)なども放送されていた。

ほかには「フェイシャルサロンできれいに」のメナード化粧品、「うちではもう揚げません“特上ヒレカツ”」などのニチレイ食品、深田恭子がピアノ演奏をしている「幸せの紅茶 午後の紅茶」、「しっかり寝たはずなのにだるオモ〜」のアリナミンAなど、いくつものコマーシャルに出演していた。

どれもかなり印象的なコマーシャルである。

何となくテレビを見ていて、深田恭子を見なかった日はない。そういうイメージがある。

ほぼトップクラスの「コマーシャルでよく見る女優」である。

深田恭子の圧倒的なコマーシャルでの存在感

複数のコマーシャルに出ている女優はほかにもいろいろいる。

若手だと、今田美桜や芦田愛菜、橋本環奈や浜辺美波などがよくコマーシャルで見かける女優さんである。

でも深田恭子はその多様さと、コマーシャルから訴えかけてくる訴求力がずばぬけている。

存在感が違う。

とても印象に残りやすい存在であり、つまりコマーシャルにとても使いたい女優だろう。

1998年夏のドラマ『神様、もう少しだけ』での鮮烈な登場以来、ずっと変わらぬ清純さが持続し、他に代えがたい存在である。とてもコマーシャル向けの存在であり、つまり、多くの日本人の心に棲みついた女優さんだったといえる。

結婚発表後の新垣結衣のコマーシャルに注目するのと同じ

5月26日水曜日に、休養が公表され、突然の知らせでもあったので、コマーシャルは流れつづけた。

週末の土日もふつうに深田恭子のコマーシャルが流れていた。

休養が発表されたあとのコマーシャルはふだんより気になる。

深田恭子のコマーシャルになると、あ、深田恭子だと、あらためて見てしまう。

しばらく前に結婚が発表された新垣結衣のときも似たようなものだった。結婚発表後に彼女のコマーシャルが流れると、いつもより真剣に見入ってしまう。意味はないのだが、あ、ガッキーだ、とおもって注視してしまった。

どれぐらいのCMが流れているかを数える

だから、深田恭子のコマーシャル出演が異様に多いように感じてしまった。

5月29日、30日の週末から週明けにかけて、深田恭子のCMがかなり目についた。

いったい一日に深田恭子のコマーシャルは何本くらい見かけるのだろうと気になった。

民放3局、夕方から深夜まで眺めていると、深田恭子のコマーシャルをどれぐらい見かけるのだろうと、数えてみることにした。

そのための録画をしたのが6月2日水曜から三日間である。

(あまり録画設備が最先端ではないから)。

それは、ちょうど深田恭子のコマーシャルが消えるときだった。

6月2日水曜には、まだかろうじて深田恭子CMが流れていた

6月2日水曜は、TBSでは午後8時41分に「メナード化粧品」の深田恭子、午後9時21分に「UQモバイル」の深田恭子を含む三姉妹のコマーシャルが流れた。

TBSの午後5時から深夜12時までで、この2本だけだった。

同時刻の日本テレビとテレビ朝日も見続けたが、こちらは一本も確認できなかった。

6月2日水曜の午後5時から12時の7時間(かける3局なのでのべ21時間)で、見かけた深田恭子CMは2本だけだったのだ。

あとから気づいたが、フェイドアウトする瞬間だったのではないか。

1日3局、手作業でのコマーシャルの確認の末

すべて手作業での確認である。

7時間ぶんを録画して、いわゆる「CM飛ばし見」の逆の作業で確認する。

ドラマ、バラエティ、ニュースの本放送部分を飛ばして(機種によっては早送りして)コマーシャル部分だけをチェックする。

ほぼ漏れのないように見たつもりだが、見落としの可能性(作業中にコマーシャルそのものを飛ばしてしまった可能性)がないわけではない。ただ、たぶん、あまり見落とすものではない。だから、この3局(東京でいえば、4チャンネル、5チャンネル、6チャンネル)では6月2日夕方以降の深田恭子のCMは2本だけだった。

6月3日木曜以降は、杳としてその姿が見えず

6月3日木曜は、局を変えて、TBS・テレビ朝日・フジ、この3局で午後5時から深夜12時までぶんをチェックした。

深田恭子が出ているコマーシャルは確認できなかった。

翌6月4日金曜は、日本テレビ、TBS、フジの3局。この日は午後6時から11時までと少し狭めたが、ここでも確認できなかった。

6月3日以降、深田恭子のコマーシャルを見かけなくなった。

全局ではないし、全時間ではないので、見られた範囲ないでのことしか言えないが、以上の局のチェックによると、深田恭子のコマーシャルは6月2日水曜には、まだ、ほんの少しだけ流れていたが、6月3日木曜以降は、杳として行方知れず、見当たらなくなったのである。

一週間の猶予期間と、緩やかなる撤退作戦

休養が発表されたのが5月26日水曜の午後遅くであり、その一週間後の、6月2日水曜まではコマーシャルが流れていた。

ただ6月2日はかなり減っていた。

発表から8日たった6月3日以降は見かけなくなった。

それまではふつうにテレビを見ているとどこかで見かけた「深田恭子のコマーシャル」は6月3日以降は、見なくなったのだ。

おそらく流されていないのだとおもう。

今回は、急な発表だったので、少し特例だったのだろう。

発表して、すぐさますべてのコマーシャルを取り止めるというのは、いろいろとむずかしい。ゆっくりと軟着陸するために、段階的な緩やかな撤退がおこなわれたようだ。

発表直後、数日間は、ふつうに流れていた。

そのあと、撤退が始まり一週間で見かけなくなった。

テレビコマーシャルがもっとも大事にしていること

テレビコマーシャルというのは、人に「印象」を植え付けるのを主たる目的としている。

情報を入れ込んでいる場合もあるが、企業広告の多くは、印象が最優先されている。

「何となくこの会社はいい」「何となくこの商品にはいいイメージがある」という「何となくの好印象」がとても大事なのだ。

その好印象のため、莫大な費用を投資している。

だから、撤退のときにも、あまり気づかれないように、何となく、いつの間にか見なくなった、という戦法が採られるのだろう。

今回は、たまたま、このタイミングでテレビを見続けたので、どこを境目に「深田恭子のコマーシャル」が見られなくなったのかに気がついた。

休養発表から7日間は流され、(おそらく)8日目から流れなくなった。

「人々の印象」への問題だから、「何となく見なくなった」というイメージが大事なのだろう。「休養」のニュースと同時に突然コマーシャルでも見なくなったら、それはそれで目についてしまう。妙な話題にもなるだろう。

発表から一週間、その前から少し減らしていって、一週間たてばたぶんニュース項目でも下位に下がるので、その時点でのコマーシャル放送も一時、休止する、との判断だったようだ。

ひょっとしていまの世の中は「人の噂も七日」ということなのかもしれない。

むかしより六十八日も短くなってしまった。

無理のない復帰を期待

もちろんいまの時点での状況を「ただテレビを見る立場から」判断してるまでである。

何らかの不思議な変更がされて、この先、深田恭子のコマーシャルが流れるということがあるのかもしれない。まあ、ふつう、考えにくい。

しばらく流れなくなる。

おそらく一番苦労するのは「UQモバイルの三姉妹」なのではないかとおもわれる。

無理なく、深田恭子の復帰を待つ、というのが期待される。

---2021年6月11日追記:永野芽郁と深田恭子二人による「UQモバイル」新CMが6月10日より放送されはじめた。深田恭子CMが完全には消え去らない模様である--

コマーシャルだけを見続けると、確実に削られる

あらためてテレビ地上波の放送(民間放送)は、コマーシャルがメインであることを痛感する。

ドラマやニュースやバラエティを7、8時間ぶん一挙に見てもあまり疲れないものだが、コマーシャルを7、8時間ぶん(それを一日に3局)見ると、想像以上に疲れる。

映像の力が強く、情報が多く、訴求力があまりにも強い。

作り手が15秒に(ときに30秒、60秒に)込めたパワーが尋常でないことを痛感する。

コマーシャルはあまりまとめて一挙に見ないほうがいい。何かを確実に削られてしまう。合間合間に見るのがちょうどいいように作られているから。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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