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『おむすび』の『ちむどんどん』との不気味な類似 『虎に翼』『ブギウギ』との決定的な違いとは

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:西村尚己/アフロ)

朝ドラ『おむすび』には気になるところ

朝ドラ『おむすび』には気になるところがいくつかある。

おじいちゃんがホラ吹きであるというのが、かなり根本的に気になるところであるが、その次に気になるのが主題歌の流れる時間が少し短い感じがするところだ。

いまの朝ドラは8時ちょうどにドラマが始まってしまい、しばらく進んだところで、途中で主題歌が流れる。

再放送される『ちゅらさん』との違い

ちょうど2001年の朝ドラ『ちゅらさん』を地上波で再放送しているが、これはドラマは主題歌から始まっている。ヒロインが驚いているシーンから始まったりしない。

これはこれで安心する。

1分少々であるが、始まっても1分少々は待ってもらえる感じがして、なんだかちょっと落ち着くのだ。

2001年はいまとはずいぶんと勝手の違う世界だったなとあらためておもう。

テーマソングは1分少々

いまは前話のリピートがあり、ちょっと進んで、それでテーマソングとなる。

それがふつうだ。

リアルタイムで見ることもあるし、録画したものを再生して見ることもある。たぶん、半々くらいの気がする。

録画再生のときは、申し訳ないが、テーマソングのところはスキップすることがある。申し訳ないが、まあ、しかたない。

「30秒送り」のボタンがあるからそれを2回押して1分送ると、朝ドラの主題歌部分をだいたい飛ばせる。

『おむすび』の頼りない感じ

『虎に翼』や『ブギウギ』でもだいたい同じようなことをやって過ごしてきたが、『おむすび』は1分飛ばすと、すっと曲が終わる。

勝手に1分飛ばしておいてこういうのも何なのだが、ちょっと頼りない感じがしてしまうのだ。

不思議な感じである。

『おむすび』テーマソングは1分10秒で終わる

いちおう時間を測ってみた。

主題歌に入って終わるまでの秒数である。

『おむすび』1分10秒

『虎に翼』1分13秒

『ブギウギ』1分12秒

作品によってテーマソングの長さが違う

あらためて15分ドラマである朝ドラでは、テーマソングの時間は1分と10秒そこそこなのだ、ということがわかる。そして、作品によって、つまり歌によって時間の長さがほんの微妙に違うこともわかる。

もともと感覚的にそうだろうなとおもっていたのだが、あらためて計測すると、微妙だか違っていたのがわかる。

『ちむどんどん』以来の、主題歌の短さ

もうすこしさかのぼってみる。

『らんまん』1分14秒

『舞いあがれ!』1分15秒

『ちむどんどん』1分09秒

となる。

『おむすび』は『ちむどんどん』以来の、主題歌の短さなのだ。

なんか微妙な符合である。

半年で12分の差がつくテーマソング時間

並べてみて、『舞いあがれ!』の主題歌時間と、『ちむどんどん』の主題歌時間は6秒違っていたのかと、ちょっと驚く。

1回6秒差ってことは、一週間5回で30秒、一か月で2分だから、半年でだいたい12分ほど違ってくる。けっこう大きいとおもう。

比較しているのは火曜から金曜の放送ぶん

ちなみにこの時間は火曜から金曜の放送で比べている。

ご存知の方も多いだろうが、朝ドラは毎週月曜だけ、タイトルロールが少し長い。

月曜はスタッフ名が少し多く出てきて少し長い。

もうずいぶん前からそうである。ずいぶん前に気づいていたので、たぶん昭和の昔からそうだったようにおもうが、いますぐには確認できない。

月曜のテーマソング時間は20秒ほど長い

たとえばいまの『おむすび』だと、ふだんが1分10秒なのに月曜は1分32秒。

『虎に翼』はふだん1分13秒で、月曜だけ1分29秒。

『ブギウギ』はふだん1分12秒で、月曜だけ1分30秒。

つまりここのところはふだん(火曜から金曜)の主題歌時間は1分10秒そこそこで、月曜だけ20秒ほど長くて1分30秒くらい、となっているのだ。

月曜だけ長いので、基本は火曜から金曜で比較している。

『おむすび』テーマソングが短く感じられるもうひとつの理由

『おむすび』が『ちむどんどん』以来の短さで、しかも短く感じるのには、ほかにも理由がある。

このB’zの主題歌は、最後は10秒以上、歌詞がないのだ。

つまり1分飛ばすと、もう人が歌っておらず、曲のエンディングという部分になってしまうのだ。

1分飛ばすと、誰も歌ってないという主題歌は、ちょっと短い感じがしてしまう。

『おむすび』こそ朝ドラ

なんか、こういう奇妙な部分で『おむすび』が損をしてるんではないか、と気になっている。

長年、ずっと朝ドラを見ている者として、『おむすび』のようなふつうの女性が主人公の物語こそ、まさに朝ドラらしい朝ドラではないかと、私はそう信じているのだが、べつだんそうおもってない人を説得するつもりはないし、できないとおもう。

でも、こういうのがいいんだよなあ、と、そう言うしかない。

たとえば大竹しのぶがヒロインだった『水色の時』とか、秋野暢子がヒロインの『おはようさん』あたりもそうだったようにおもうのだが、シーンシーンは浮かぶけどでもそんなに強い主張はないし、女傑物語でもなかったという印象がある。

そして、朝ドラは主題歌が少し長いほうが、ここのところでは受けがいいようである。

いまは、静かに『おむすび』を見守っていきたいとおもっている。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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