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女殺し屋から朝ドラ『ばけばけ』ヒロイン抜擢 髙石あかり驚きの前歴

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:アフロ)

登場したときに誰かわからなかった『ばけばけ』ヒロイン髙石あかり

2025年秋の朝ドラ『ばけばけ』のヒロインが髙石あかりとなった。

予想外の人選である。

一ミリも予想できなかった。

発表されるシーンを中継で見ていたが(高瀬アナが興奮気味であった)、名前を呼ばれずに和服姿の女性が出てきて、しばらくわからなかった。

じっと見ていたがわからない。

『ベイビーわるきゅーれ』の殺し屋の人!!

司会者から「髙石あかりさんです」と紹介があってから、あらためて見て、それでもわからず、じーーと見てるうちに、あ、『ベイビーわるきゅーれ』の人かっ、とぼんやりわかってきた。

むかしの抜擢に近い人選である。

髙石あかりはいまテレビ東京で深夜にやっているドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』で女殺し屋役を演じている。

女殺し屋から朝ドラヒロインへ。

劇的すぎる。

女殺し屋さんが、和服で髪をアップで出て来ても、すぐには気がつきません。

髙石あかりの紹介は『わたしの一番最悪なともだち』一作

髙石あかりがその前に出ていた作品はとみれば、2023年10月のNHK夜ドラ『わたしの一番最悪なともだち』にヒロイン(蒔田彩珠)の幼馴染み役で出ている。

ああ、そういえばというくらいの記憶はある。

主演発表後、NHK「列島ニュース」のスタジオにやってきて高瀬耕造アナと話したのだが、彼女のプロフィールで紹介されていたのは、この一作だけであった。

『ベイビーわるきゅーれ』の新作映画ナイスデイズは、9月公開だから、まだ映画館で見られるはずである。

でも触れなかった。

殺し屋だからね。

ちょっと笑けてしまった。

深夜ドラマの女優・髙石あかり

いくつかのドラマに出ている。

2023年4月の『日本統一関東編』。

2023年の4月と、このあいだの2024年6月に続編を放送していた『墜落JKと廃人教師』。

2022年夏の『生き残った6人によると』にも生き残ったうちの1人の役を演じている。

『墜落JKと廃人教師』と『生き残った6人によると』は大阪毎日放送制作「ドラマイズム」枠のドラマだ。

ドラマイズムは私はだいたいテレビ埼玉の放送で見ている。TBSでいつやっているのかはよくわからない。

けっこう印象深いドラマが多いのだが、あまり広く見られているドラマ枠とは言えない。

『墜落JKと廃人教師』ではヒロイン役で、優等生だけれど、自殺志願のある女子高生で、これは静かな役どころだった。

女殺し屋のなかでは朝ドラヒロイン向きである

『ベイビーわるきゅーれ』のちさと役の髙石あかりは、いい。

殺し屋として有能で、親友のまひろ(伊澤彩織)とバディを組んで仕事をしている。

まひろに比べて、ちさとは明るくて元気で、女殺し屋のなかでは朝ドラヒロイン向きだなとおもいかえしているが、そもそもそのおもいかえしじたいが変である。

『ベイビーわるきゅーれ』はせつなさもあるが、軽やかなドラマでもある。

髙石あかりにとても似合う。

深夜の女優から朝ドラへの抜擢

並べてみてあらためてわかるが、高石あかりは、これまでほぼ深夜ドラマでしか見ていない。

NHK夜ドラだけが少し早いが、それでも22時45分のドラマである。

彼女が朝ドラヒロインに選ばれた。

見事な抜擢である。

ここのところの朝ドラヒロイン

ここのところすでに売れている役者が朝ドラ主演に選ばれることが多かった。

いまの橋本環奈、次作の今田美桜はまさに連ドラひっぱりだこの女優で、その前の伊藤沙莉もドラマ主演が何本もあった。

その前の『ブギウギ』の趣里は、抜擢であった。

彼女はほぼドラマ主演経験がなく(地上波の20時〜22時開始の連続ドラマ主演がなかった)そして、彼女主演の『ブギウギ』はとてもいいドラマに仕上がっていた。主演後の彼女の活躍もとてもいい。『ブラックペアン2』はインパクト強い役だったし、『モンスター』ではとても魅力的だ。

その前の朝ドラ主演をさかのぼると、神木隆之介、福原遥、黒島結菜、上白石萌音、清原果耶、杉咲花、窪田正孝……とだいたい売れている役者が主演に選ばれている。

昭和のころの朝ドラ大抜擢

髙石あかりは久しぶりの抜擢主演である。

むかしは、ほんとうにドラマ出演さえも初めてという役者さんが選ばれていた時代があった。若村麻由美や山口智子などもそうだった。

そこまでではないが、でもそんなに有名ではない役者さんの登場である。

抜擢された髙石あかりが演じるのは、小泉八雲の妻セツがモデルである。

時代ものの朝ドラになる。

昭和の戦争は描かれない。はずである。(彼女は昭和7年になくなる)。

舞台はほぼ明治時代だろう。

髙石あかりの明治の女に大きく期待

時代ものの朝ドラに、あの『ベイビーわるきゅーれ』の女殺し屋が主演するなんて、楽しみでしかない。

髙石あかりは、明治の人が似合いそうである。

こんなにわくわくする人選は久しぶりである。

『ばけばけ』はとても楽しみである。

ちなみに『ベイビーわるきゅーれ エブリディ!』はいまテレビ東京系で放送中、今週第9話放送のはずだ。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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