186年ぶりの偉業!?世界最大のピラミッド内で未知の空間を確認
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「世界最大のピラミッドで新たな空洞を確認」というテーマで動画をお送りしていきます。
3月2日とつい先日、エジプトにある世界最大のピラミッドで186年ぶりに新たな空洞が確認されたと発表され、Twitterのトレンドにも載るほど大きな話題になっています。
今回は新発見の空洞について、そしてそれを発見した「ミュオグラフィ」と呼ばれる技術について、詳しく解説したいと思います。
●世界最大のピラミッドで186年ぶりの大発見
名古屋大学をはじめとした国際研究チームは、2015年から開始された「Scan Pyramids」というプロジェクトの一環で、ギザの大ピラミッド内で新たに空洞を確認しました。
ギザの大ピラミッドは、今から約4500年前に生きていたクフ王の墓であると考えられています。
その底面はほぼ正方形で、1辺の長さが約230mもあります。
そしてこのピラミッドの現在の高さは約140mあり、約4500年前から存在するにもかかわらず、なんと1889年にパリのエッフェル塔が建てられるまで世界で最も高い人工物でした。
このピラミッドで新たに空洞を確認した「Scan Pyramids」というプロジェクトでは、ピラミッド構造を物理的に破壊することなく内部を透視できる、ミュオグラフィという技術を用いています。
この技術の詳細は後述します。
同チームはミュオグラフィ技術を用い、2016年~2017年にかけてギザの大ピラミッド内でいくつかの空洞の存在可能性を示していました。
そのうち北側の外壁から非常に近い位置に存在する「ScanPyramids North Face Corridor」と呼ばれる空洞については、探査のしやすさなどから詳細な研究が望まれていました。
そして今回、名古屋大学などの研究チームが独自の機器を用いて、「ScanPyramids North Face Corridor」の詳細な内部構造を確定させることに成功しました。
この空洞は縦横2m、奥行き9mの大きさがあります。
さらに内視鏡のメカニズムでピラミッド内部に小型カメラを侵入させ、実際に空洞の内部を実写で可視化することにも成功しています。
実際に空間が確認されたのは、実に186年ぶりのことだそうです。
空洞内部を撮影した実写動画も公開されていたので、本動画の概要欄にてURLを記載しておきます。
そしてこの空洞は何のための空間なのかは謎のままです。
今後のミュオグラフィ探査により、新発見の空間の存在意義や、別の新たな空洞が発見されることが期待されています。
●ミュオグラフィとは?
では以降はミュオグラフィと呼ばれる技術について解説します。
ミュオグラフィは端的に説明すると、ミューオンと呼ばれる素粒子を用いて、普通では見れない内部構造を透視できてしまう技術です。
X線を用いて体内などを透視できるレントゲン技術とメカニズムが近いですが、X線は人工的に発生させるのに対し、ミュオグラフィで用いられるミューオンは、自然由来となります。
そのためレントゲンでは扱えないような巨大な構造を透視できたり、コストがかかりにくいなどというメリットが挙げられます。
○何でも透過する素粒子「ミューオン」
ミューオンとは、物質を構成する最小単位の粒子である「素粒子」の一種です。
私たちの身近にある物質を拡大していくと、「原子」と呼ばれる小さな粒が見えてきます。
そして原子をさらに拡大すると、「陽子」や「中性子」といったより小さな粒子が集まってできた原子核の周囲を、-の電荷を持った「電子」という粒子が取り巻いている、という構造をしています。
ここで、原子核内にある陽子と中性子は素粒子ではなく、「クォーク」という素粒子が3つ集まって形成されています。
一方、電子はこれ以上に分解できない最小単位の粒子なので、素粒子の一種です。
そんな電子には実は、電荷などの性質が同じであるものの、より質量の大きい、兄弟にあたる素粒子が存在します。
今回の主役であるミューオンは、この電子の兄弟にあたる素粒子の一つです。
電荷などの特性は電子と同じですが、ミューオンの質量は電子の約200倍にもなります。
粒子は重い方が不安定なので、ミューオンの寿命はたったの100万分の2秒程度しかありません。
ミューオンが寿命を迎えると電子や、ニュートリノと呼ばれるまた別の素粒子に分裂します。
ミューオンは自然でも常に生成されています。
宇宙からは常に、陽子などの粒子が超高速に加速された状態で地球に降り注いでいます。
このような宇宙からやってくる高エネルギーの粒子を、「宇宙線」と呼びます。
この宇宙線が地球の大気を構成する原子と衝突すると、様々な粒子に分裂しますが、その過程でミューオンも生成されます。
具体的には地表から約10km上空の、大気上層部でミューオンが生成されています。
そこで形成される粒子の中では比較的長寿であるミューオンは、相対性理論の効果も相まって地表に到達するまで生き残り、実際に頻繁に観測されます。
原理は少々複雑になるため詳細は省きますが、ミューオンは質量がある程度大きく、強い力で相互作用を起こさないなどという理由から、かなり高い透過力を持っていることが知られています。
その高い透過力から、厚さ数という分厚い岩盤まで通り抜けることができてしまいます。
ただし電荷すらも持たないニュートリノのように、何でもかんでも通り抜けるわけでもなく、いわば「中途半端な透過力」を持っています。
そのため非常に高密度の物質中は透過できないこともあり、ミューオンの数が減少してしまいます。
○ミューオンの透過力を生かした透視技術
ミュオグラフィとは、前述したミューオンの「中途半端な透過力」を生かした技術となっています。
ミューオンは確かに透過力が高く、上空から地下深くまで常に降り注いでいますが、何でも通り抜けるわけではなく、高密度の領域があればミューオンの数が減少してしまうのでした。
逆に、ある場所においてミューオンが到来する個数を、到来する方向毎に数えたとき、方向毎の到来数に差が存在していた場合、ミューオンの到来数が少ない方向にその透過を阻む高密度領域が存在すると言えます。
このように自然界で発生したミューオンの方向毎の到来数を測定することで、特定の物体の内部構造における密度分布を詳細に理解できる技術のことを、「ミュオグラフィ」と呼んでいます。
これは原理的にレントゲンと近いもので、X線もミューオンと同様に中途半端な透過力を持っているからこそ、人体などの内部構造を透けて見ることができます。
ミューオンは十分な個数が自然発生する点でよりエコです。
ミュオグラフィで実際に中身を透けて見れる実例として、今回話題になったピラミッドだけでなく、火山が挙げられます。
一般にマグマは周囲より低密度であるため、マグマが存在する方向からはミューオンが多く到来します。
さらに、被災して立ち入り禁止となった原子炉内部も透けて見ることができます。
実際に、東日本大震災で被災した福島第一原発の内部調査においても、このミュオグラフィの技術が用いられました。
このようにミュオグラフィは多分野において非常に実用性が高く、今後さらに発展していく将来性も非常に高い技術と言えます。