【ベルリンマラソンの衝撃の世界記録は、暑さの恩恵もあってのこと?】ベルリンマラソンの驚きの文献より
9月24日にベルリンマラソンが行われました。結果女子は、ティギスト・アセファ選手が驚異的な世界記録で優勝しました。男子もエリウド・キプチョゲ選手が2時間2分台の好タイムで優勝しています。ベルリンマラソンは記録が望める高速レースとして有名ですが、まだ初秋のためにマラソンにしては暑くなることがあります。
今年もスタート時の気温が14度と、エリートランナーにとっては高温でした。ですが実はベルリンマラソンは、気温が上がった方がエリートランナーの記録が良くなるという文献があるんです。
ベルリンマラソンの記録を解析した文献より
文献は2021年のスイスからのもので、タイトルもそのまま「Elite Marathoners Run Faster With Increasing Temperatures in Berlin Marathon(ベルリンマラソンでは、エリートランナーは気温が上がった方が速く走る)」というものです。
文献では、1974年の第1回大会から2019年までのベルリンマラソンの完走者882540人について調べています。上位3位以内、上位10位以内、上位100位以内、全てのランナーの記録に対する気温や降水量、日照、気圧の影響を分析しています。
タイムと気温の相関行列
結果Top3とTop10のランナーのタイムは平均・最高・最低気温と負の相関があり、逆にTop100と全てのランナーのタイムについて調べると平均・最高・最低気温と正の相関がありました。要はTop3・Top10のランナーについて調べると気温が高い方が速くなっていて、Top100・全体について調べると気温が高い方が遅くなっていたということです。
実際にタイムをみると
実際にタイムをみてみましょう。例えば平均気温でみると、8-15度ではTop3の男性は2時間10分18秒で女性は2時間33分42秒でした。ですが15-30度の高温の条件では男性は2時間10分12秒で女性は2時間31分51秒でした。特に女性において、高温の方がタイムが速くなっています。逆に全体のタイムでみると、8-15度では男性は3時間55分31秒で女性は4時間25分26秒でした。そして15-30度では男性は4時間00分34秒で女性は4時間27分59秒と、Top3の結果とは逆に高温の条件の方がタイムが遅くなっています。最高気温・最低気温でみても同様です。
「エリートランナーは高温の方が速くなる」というのはこの結果からです。それでは今年のベルリンマラソンはどうだったのでしょうか。
今年のベルリンマラソンは?
ベルリンマラソンは9時15分スタートで、制限時間は6時間15分、なので競技終了は15時30分となっています。Racecast.ioで調べると、今年のベルリンマラソンの最低気温は13度で最高気温は20度でした。なので平均気温は16.7度くらいになると思われます(公式の発表とは異なるかもしれません)。過去のベルリンマラソンの平均は、最高気温18.02±3.80度、最低気温8.33±3.10度、平均気温12.70±2.65度なので、今年は高い方だったようです。気温が高いときは特に女性が速くなる傾向にありますので、そんな気温が今年の驚異的な世界記録を後押ししたのではないでしょうか。
何故ベルリンマラソンは、気温が高い方が速くなる?
一般的には高温ほどマラソンのタイムは遅くなると言われています。ですがベルリンマラソンのエリートランナーの研究では、逆の結果になりました。それはトップ選手はケニア・タンザニアといった東アフリカの選手が多く、暑さに強いことが考えられます。軽くて小柄な体は、暑さに有利に働く可能性があります。また、特に女性の方が暑さに強いというのは、ストックホルムマラソンの研究でも言われているようです。
極端に暑くなればタイムが落ちるかもしれませんが、「ベルリンマラソンの適度な暑さ」は東アフリカのエリートランナーには有利に働くようです。