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「金目」だけじゃない、石原環境相の驚がく発言

関口威人ジャーナリスト
住民説明会で示された中間貯蔵施設の配置図。福島第一原発をぐるりと取り囲む

福島県で国と地元との交渉が続いている中間貯蔵施設をめぐり、石原伸晃環境相が「最後は金目でしょ」と発言したことが波紋を広げています。

本人は「金で解決できるとは言っていない」と釈明したものの、「金目(かねめ)」の本来の意味は「お金に換算して、高い値になること」(新明解国語辞典)。今回の文脈だと個人的には「金に糸目をつけない」の慣用句も連想してしまい、いかにも札束を積んで交渉を進めようとする印象を受けます。

地元首長からは一斉に反発が上がり、石原氏は17日になって「誤解を招いた」と陳謝しました。

石原氏が発言したのは、国が施設建設の候補地とする双葉、大熊両町の住民らに対する説明会がひと通り終わったのを受けて。私はその最終日の15日、郡山市で開かれた説明会を聴いていました。

しかし、そもそも説明会に石原氏は出席しておらず、住民側からは「なぜ大臣が来ないのか」と不満の声が上がっていたのです。

環境省側は「今回は実務的な説明をしっかりして来いと大臣の命を受け、実務担当者が出席している」と弁明しましたが、その中身はあいまいな点が多く、終了後に双葉町の男性は「あの説明でどうやって先祖代々の土地を売れるのか」と憤っていました。「金目」発言はそうした地元の怒りに油を注ぐ結果になったのです。

15日に郡山市で開かれた中間貯蔵施設に関する住民説明会
15日に郡山市で開かれた中間貯蔵施設に関する住民説明会

30年後、土壌の半分は「公共事業に」

ところが、石原氏の驚くべき発言はこれだけではありません。

9日、参議院の決算委員会で石原氏はこう答弁しています。中間貯蔵施設で保管した汚染土壌のゆくえについての質疑です。

「放射線に汚染された土壌であっても、30年という期間でかなりの部分が減衰をしていく。減衰をしていって放射線量の下がった土砂というのは、公共事業等に供することができると、法律に明記させていただく」

これは「失言」というわけではありません。しかし、問題の本質を表すという意味で重要な発言です。

石原氏の答弁に先立つ5月21日、環境省は同様の方針を自民党の環境部会で具体的に説明していました。

放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下の土壌は、中間貯蔵が終了する30年後、公共事業の建設土などに再利用するという方針です。該当する土壌の量は、中間貯蔵施設に搬入する土壌の半数の1000万立方メートルに達する見込み。

つまり、中間貯蔵された後の土壌は、30年後に少なくとも半分が「日本全国どこか」の公共工事で使われるということなのです。

ただし、現在も放射性物質汚染対策特措法で8000ベクレル以下のがれきや汚泥は指定廃棄物、つまり放射性廃棄物とはみなされず、地方自治体や排出者が処理することになっています。すでに「どこか」にあってもおかしくないものです。

このことを知った上で、福島第一原発を取り巻くように広がる巨大な中間貯蔵施設の計画図をながめてみてください。その見る目が変わらないでしょうか。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。東日本大震災発生前後の4年間は災害救援NPOの非常勤スタッフを経験。2012年からは環境専門紙の編集長を10年間務めた。2018年に名古屋エリアのライターやカメラマン、編集者らと一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」を立ち上げて代表理事に就任。

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