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「攻めの廃線」から5年!札幌へのバスだけではなくスーパーや飲食店も消えた…再生とは程遠い夕張の現実

鉄道乗蔵鉄道ライター
廃止後放置状態が続いている旧夕張駅(筆者撮影)

 2019年3月31日の石勝線夕張支線の「攻めの廃線」から5年余りが経過した。「攻めの廃線」によって便利になったはずの夕張市内の路線バスネットワークであるが、昨今、深刻化しているバスドライバー不足の問題から、2023年9月末をもって夕張市内と新札幌駅を結んでいた夕鉄バスの路線バスが廃止され、「攻めの廃線」の翌年2020年に約10億6000万円の費用を投じて南清水沢地区に開業した交通結節点「りすた」はバスターミナル機能を喪失した。

 さらに、2024年9月末には夕張市内と札幌駅前を結ぶ北海道中央バスの高速ゆうばり号と夕張―岩見沢間の路線バスも廃止となり、夕張市と夕張市外を結ぶバス路線が消滅する。「攻めの廃線」によって増便され便利になったはずの夕張市内の路線バスも、利用者の減少傾向が続き、限られたドライバーで綱渡りの運営が行われているのが現実だ。

営業再開の見通しが立たないホテルマウントレースイ(筆者撮影)
営業再開の見通しが立たないホテルマウントレースイ(筆者撮影)

 筆者は、2024年9月末をもって廃止となる岩見沢―夕張間の路線バスに乗車し夕張を訪問したことについては、2024年6月10日付記事(「攻めの廃線」から5年!高速ゆうばり号と共に姿消す岩見沢―夕張間路線バス 通し乗車はマニアのみの現実)と6月10日付記事(2024年9月末で姿消す高速ゆうばり号の現状 夕張市内の乗客は夕鉄本社ターミナルからの1名のみだった)で触れたとおりである。

 2011年から2019年まで2期8年に渡って夕張市長を務めていた鈴木直道氏は、夕張を再生した「自治体再建のヒーロー」ともてはやされ、その後、北海道知事に栄転するが、夕張で実際に目撃した光景は再生とは程遠い姿である。

 旧夕張駅前に現在でも建物が残るホテルマウントレースイは「攻めの廃線」の翌年にホテルの運営会社が倒産したことからそのまま営業休止となり以降営業再開のめどは立っていない。夕張市内にはこの他にホテルシューパロもあったが、こちらもホテルマウントレースイと同じ運営会社により経営されていたことから、この運営会社の倒産にともなって営業休止となり現在も営業休止状態が続いている。地元の方に話を聞いたところ、夕張市中心部からホテルがなくなったことで、それまで夕張を訪れていた本州方面からの修学旅行生などの旅行者が消滅したという。

 こうした夕張の疲弊は観光業にとどまらず、昨年2023年12月には夕張市中心部で営業していたスーパーマーケットが突如営業を休止し、その後、自己破産している。さらに、近年では飲食店の廃業も相次いでいるとのことだ。

 これが鈴木直道知事が再生したという夕張の現実だ。

廃墟となった夕張市民会館。かつては夕張鉄道夕張本町駅としての機能も持ち合わせていた(筆者撮影)
廃墟となった夕張市民会館。かつては夕張鉄道夕張本町駅としての機能も持ち合わせていた(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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