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最高裁判事候補のお披露目式典でクラスター発生か トランプ氏の選対本部長も陽性

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
クラスターの発生源として疑われているホワイトハウス・ローズガーデンでの式典(写真:ロイター/アフロ)

トランプ米大統領が新型コロナウイルスに感染したが、どうやらホワイトハウス内でクラスターが発生したようだ。ホワイトハウス内や同敷地内で開かれるイベントでは、ソーシャルディスタンスの確保やマスク着用などの感染防止策は特に取られておらず、大統領選を前に、新型コロナ対策を軽視してきたトランプ氏の姿勢や危機管理能力が有権者から改めて問われそうだ。

7人が一気に陽性

クラスターの発生源として疑われているのは、9月26日にホワイトハウス内のローズガーデンで開かれた、エイミー・バレット連邦最高裁判事候補のお披露目式典だ。ABCニュースは、少なくとも、式典に参加した7人が検査で陽性となったと伝えた。

式典には大勢の共和党関係者やバレット氏の知人らが出席。屋外で開かれていたものの、参加者が座る椅子は間隔を置かずに並べられ、参加者のほとんどはマスクをしていなかった。式の前後には参加者が互いに至近距離で会話をしたり、ハグしたりする光景も見られた。

米メディアによると、これまでに新型コロナへの感染を公表した政治家などでこの式典に参加していたのは、トランプ大統領とメラニア夫人の他、マイク・リー上院議員、トム・ティリス上院議員、バレット氏が以前、教授として働いていたノートルダム大学のジョン・ジェンキンス学長、今年8月まで大統領顧問を務めていたケリーアン・コンウェイ氏。さらに、ジャーナリストも1人含まれている。

ウィリアム・バー司法長官も式典に参加し、マスクを着けずにコンウェイ氏と親しく会話する様子が目撃されているが、司法省によると、バー長官は検査の結果、陰性だったという。1日に陽性が公表され、大統領の感染源ではないかと疑われた側近のホープ・ヒックス氏は、この式典には参加していなかった。

トランプ氏の選対本部長も

また、米メディアによると、トランプ氏の選挙対策本部長を務めているビル・ステピエン氏も陽性となった。同氏が式典に参加していたかどうかは、現時点では不明。トランプ氏のスタッフの間でさらに感染者が増える見通しとの報道もある。

一方、先日の大統領選テレビ討論会で、壇上でトランプ氏と激論を交わしたバイデン前副大統領は、検査したが陰性だったと報じられている。

米疾病管理予防センター(CDC)は、新型コロナの感染防止策としてマスクの着用やソーシャルディスタンスの維持を奨励しているが、トランプ大統領や側近らは、そうしたアドバイスを無視しての行動が目立っている。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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