今後も強い寒気が断続的に南下、クリスマスの頃と大みそかの頃
強い寒気が南下
日本列島には今冬一番の寒気が南下し、北海道の上空約5500メートルには氷点下42度という寒気が19日にかけて通過中です(図1)。
上空約5500メートルで氷点下30度が強い寒気の目安、氷点下36度が大雪の目安とされていますので、氷点下42度というのは、真冬でもめったにない強い寒気です。
そして、氷点下30度以下という等温線は、東北地方南部から北陸地方まで南下し、19日もほぼ同じ位置の見込みです。
全国的に冷え込んだ12月18日は、最低気温が氷点下の冬日は、全国で気温を観測している915地点のうち680地点(約74パーセント)と今冬最多となり、最高気温が氷点下の真冬日も192地点(約21パーセント)と2日前に観測した228地点(約25パーセント)に迫りました(図2)。
真冬とは違って地上付近の気温はまだ冷え切っていないことから、真冬の氷点下30度の寒気南下より、今回の氷点下30度の寒気の方が、上下の温度差が大きくなります。
このため、同じ温度の寒気でも、より激しい現象が起きますので、北陸地方や北日本は冬の嵐で週明けの19日も大雪のおそれがあります。
日本海側の地方では、大雪やふぶきに警戒が必要で、一気に積雪が増えるおそれもあります。
新潟県との県境近くにある福島県金山では、18日の18時から21時までの3時間に21センチの記録的な降雪を観測し、「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されましたが、このような短時間に強い雪が降って深刻な交通障害が発生する恐れがあります(図3)。
【追記:12月19日16時】
新潟県魚沼市守門でも12月19日1時から7時までの6時間で45センチの雪を観測したため、「顕著な大雪に関する気象情報」が発表となりました。
また、九州北部や四国などの西日本も19日の午前中にかけて雪が降り、平地でも積雪となる所がある見込みです。
日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)
シベリアから南下する季節風は、白頭山など朝鮮半島北部にある2700 メートルを超える高い山で強制的に東西に分流されると、それが合流する場所では、積乱雲が特に発達します。
日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)といいます。
この収束帯がかかる日本海側の地方では、強雪や雷などの激しい現象が起きることがありますが、今回は、この収束帯が北陸にかかってくる予想です(タイトル画像参照)。
また、寒気が非常に強く、雪雲が発達しますので、普段はブロックされる山脈の間や低い山を乗り越えて太平洋側にも雪雲が流れてきます。
雪に対する備えが十分ではない太平洋側の地方では、少しの雪でも交通機関に影響が出る可能性がありますので注意が必要です。
平地でも雪となる目安とされるのが、上空約1500メートルで氷点下6度以下です。
つまり、降水現象があれば雪として降る上空約1500メートルで氷点下6度以下の範囲は、19日朝には、九州南部と南西諸島を除くほぼ全国をおおう見込みです(図4の左)。
12月18日は、鹿児島や和歌山などで初雪を観測しましたが、19日も初雪の便りが届くと思われます(表1)。
これまで、気象庁が初雪を観測した40地点では、平年より早かったのが7地点、平年同日が2地点、遅いが31地点ですので、初雪から見た今冬は、冬の訪れが遅かったということになります。
ただ、九州は、鹿児島や福岡で平年より早い初雪で、大分、長崎、熊本で平年より遅かったことを考えると、ほぼ平年並みの冬の訪れといえるかもしれません。
この傾向は、初冠雪でも見られます。
初冠雪は、夏が終わった後、山麓の気象官署から見て、「山頂付近が初めて積雪などで白く見えること」をいい、全国で44の山が観測対象になっています。
現在、初冠雪を観測していないのは、前橋地方気象台の榛名山と、高知地方気象台の国見山だけです(表2)。
榛名山の初冠雪の平年は12月9日ですので、平年より遅い初冠雪となりますが、国見山の初冠雪の平年は1月8日ですので、現段階では早いとも遅いともいえません。
国見山を除く43山では、平年より早いが九州や四国の山を中心に16山、同日が5山、遅いが22山となっており、全国的には遅い初冠雪の方が多くなっています。
周期的に寒気が南下
19日にかけて、強い冬型の気圧配置が続きますので、北日本から西日本の日本海側を中心に、積雪や路面凍結による交通障害に注意・警戒が必要です。
電線や樹木への着雪、なだれにも注意が必要です。
ただ、図4の中でも示したように、今週の中頃には少し暖かくなります。
寒気が後退し、日本に高気圧が張り出してくることから、冬型の気圧配置が西日本から緩んでくるからです(図5)。
しかし、その後、クリスマスの頃と大みそかの頃に再度、強い寒気が南下してきます。
多くの人が出かけたり移動するときに強い寒気の南下です。
このように、大雪の後に南から暖気が入ってくると雪の表面が少し溶け、その後の寒気で雪面が凍った所への大雪となりますので、新雪雪崩が起きやすくなります。
冬の始めの頃は、比較的気温が高い時の雪ですので、湿って重く、雪が付着しやすいという特徴があります。
樹木が雪の重みで倒れたり、送電線が寸断されて大規模停電のおそれがあります。冬場に比べ、積雪量の数値以上に影響が大きいので、十分に注意する必要があります。
また、冬の始めは、ノーマルタイヤで出かけ、立ち往生してしまう人が少なからずいますが、その人だけの問題にとどまりません。
立ち往生した車が道をふさぐため、スノータイヤ装着など、雪対策をしている車まで巻き込まれて立ち往生し、走行する車にとっては影響のない降雪まで積もり重なって大きな事態になります。
すこしぐらいの距離だから、私だけならという言い訳をせず、雪の予報が出たら、ノーマルタイヤの車では出かけないでください。
ラニーニャ現象と今冬の寒さ
現在、東太平洋熱帯域の海面水温が低くなるラニーニャ現象が、令和3年(2021年)秋から続いており、西太平洋熱帯域の海面水温が上昇し、西太平洋熱帯域で積乱雲の活動が活発となっていることから、寒気が南下しやすい冬と予想されています。
しかし、気象庁の「エルニーニョ監視速報」によれば、現在のラニーニャ現象は終息に向かい、冬の終わりには平常の状態となる可能性高いとなっています(図6)。
寒気の南下が長続きしない12月ですが、クリスマスの頃と大みそかの頃に再度寒気が南下してきます。
年末以降は寒気の南下が続くようになり、本格的な寒さに注意が必要です。
ただ、「ラニーニャ現象であるから厳冬になる」とは、はっきりと言えない状況にはなっています。
タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図2、表1、表2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図3、図6の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図5の出典:気象庁ホームページ。