【9/1は防災の日】ガラスで防火対策をアップデート!網入りガラスに変わる次世代の防火ガラスを取材
今年の夏は梅雨時期から猛暑となり、熱中症による救急搬送は5月から始まっていました。これだけの暑さが続いているため、人だけでなく「窓ガラス」にも異変が起きています。
「網入りガラス」がどのようなガラスなのか、知っている方も多いでしょう。しかし、どうしてわざわざ網入りガラスを使うのかを知っている方は少ないはず。
そこで今回は防災の日にあわせて、網入りガラスに変わる次世代の防火ガラスを取材しましたのでご紹介します。
網入りガラスの特徴や役割を詳しく解説
まずは、網入りガラスの特徴やどうして利用するのか役割などを、詳しく解説します。ここを読めば「へぇ~、そうだったんだ!」と、改めて納得する方が多いでしょう。
網入りガラスは防犯には優れていない!逆に防犯性は脆弱
網入りガラスは見た目から、割れにくく防犯に強いイメージがありますが、ハンマーで叩くと通常のガラスと同じく簡単に割れてしまいます。
また、ワイヤーも特別製ではなく一般的な金属なので、ニッパや金属製カッターにて簡単に切断が可能。
一般的に5分以上侵入に時間がかかると、約70%の空き巣が侵入を諦めるといわれています。しかし網入りガラスの場合、窓ガラスのロック部分(鍵部)を割って侵入するまで5分もかかりません。
しかも一般のガラスよりも割れる音が小さいため、防犯性としては脆弱な窓ガラスです。
網入りガラスが使われる理由は、法律で定められているから!
では防犯性が脆弱にも関わらず、なぜ網入りガラスが利用されるのか不思議ですよね。
網入りガラスが使用される理由は、建築基準法による「防火地域」または「準防火地域」にあたる地域では、法律により防火ガラスを使用することが定められているからで、その防火ガラスがこれまでは「網入りガラス」だったからです。
また、飲食店やガソリンスタンドなど火災に注意しないといけない、建築基準法で定められる「延焼のおそれのある部分の開口部」に使用することも定められています。
金属製のワイヤーが入っているため「防火」に高い効果を持つ
網入りガラスは金属性のワイヤーが入っているため「防火」に高い効果を持ちます。
そのため、先の「防火地域・準防火地域」では、火災時に窓ガラスが割れて窓からの炎によって、近隣への延焼を防ぐ役割を担っています。
特に火災時に延焼の可能性が高い部分に使用されることが多く、一般的な開口部だけでなく商業施設の天窓にも利用されています。
つまり、火災が起きた施設で炎を閉じ込める役割を担っているのです。
割れても飛散しないのも網入りガラスのメリット
ネット上で調査してみると、網入りガラスの耐火温度は約110度のようです。一方で火災が起きた住宅では、火災発生後5~10分ほどで500度に達するといわれています。
そのため、網入りガラスでは熱に耐えられず割れてしまいますが、ワイヤーが入っていることで飛散を防げます。
これにより、火災でガラスが破損しても大きく崩れ落ちないため、炎や火の粉を遮断し開口部からの延焼を防ぎます。
今年は7月に網入りガラスの熱割れが多発している!
7月5日の「テレ朝news」では、東京都内で「網入りガラスの熱割れ被害が多発していると報じています。
熱割れとは、網入りガラスが直射日光などによって高温になり、中のワイヤーが伸縮することで、ガラス部分にヒビが入る状態のこと。
今年は猛暑が早くから続いていることで、東京都内でも1日30件もの問い合わせがあったようです。
熱割れした状態をそのまま放置すれば、見た目も悪く防火ガラスとしての機能も低下。さらに、ヒビがあることから空き巣に狙われやすい状況になってしまいます。
火災時の消火活動の最も重要な目的!周囲への延焼を防ぐこと
火災時の消火活動には、主に次のような目的があります。
- 火災の鎮圧と延焼防止
- 人命救助
- 財産の保護
この中で最も重要な目的は「1.火災の鎮圧と延焼防止」です!
そのために、防火性能に優れた「網入りガラス」などを使用するよう、法律で定められています。
法律が施行された当初は「網入りガラス」が標準でしたが、近年では透明で見た目のよい、高い防火性能を持つガラスが開発されています。
日本電気硝子株式会社が開発した最新の防火ガラスを取材!
ここまで網入りガラスの特徴や役割を解説してきましたが、最大の役割は「防火」にあります。
しかしながら、最近では網入りガラスの利用は減少。前述したとおり近年では、各メーカーによって網入りガラスに代わる、高い耐熱性能を有した透明な防火ガラスが開発・販売されているからです。
そこで今回は、日本電気硝子株式会社が開発した「特定防火設備・防火設備用ガラス」を取材させて頂きました。
熱膨張係数がほぼゼロの「ファイアライト」
ファイアライトは熱膨張係数がほぼゼロのため、800度に熱して冷水をかけても割れないほど熱衝撃に強い、超耐熱結晶化ガラスで構成されています。
火災時の高熱にも耐えて、消火時に外側からの放水による急冷でも破壊しない特徴を持つ、唯一の特定防火設備・防火設備用ガラス!
東京消防庁の火災実験にも採用されたり、アメリカのUL規格に適合するなど「高い防火性能」が実証されたガラスです。
さまざまな用途で利用可能
ファイアライトは商業施設やオフィスビル、ホテル、マンション、一般住宅などさまざまな建物に利用されています。
網入りガラスよりも防火性に優れており、見た目もファッショナブルなため、どのような建物にも似合っています。
ここでは、日本電気硝子の公式サイトの「施工写真ギャラリー」から、ファイアライトの施行事例を紹介しておきましょう。
Co-Housing Tamagawa-Denenchofu(東京都)
- 建築設計:アルセッド建築研究所
- 施工:奥村組
- 写真:ヴィブラフォト/浅田美浩
Hotel Rakuragu(東京都)
- 設計:小大建築設計事務所
- 施工:日向興発
- 写真:大丸剛史
カンデオホテルズ 熊本新市街(熊本県)
- 設計:コイケデザインワークス
- 施工:光進建設
- 写真:鳥村剛一写真事務所(内装)、写真工房匠(外観)
そのほかの施行例は「防火ガラスの施工例一覧」からご覧いただけます!
「耐熱衝撃性+衝撃安全性」ファイアライトプラス/ファイアライトプラスネオ
ファイアライトプラスは、2枚のファイアライトで特殊樹脂を挟んだ合わせガラスです。
この仕組みにすることで、ファイアライトの特長である「耐熱衝撃性」に「衝撃安全性」をプラス。万が一、ガラスが割れても飛散の心配がないため、学校や病因、公共施設など、不特定多数の人が集まる施設に最適なガラスです。
『ファイアライトプラスネオ』5つの特徴!
ファイアライトプラスに使用されている「特殊樹脂フィルム」が、新しくなった製品が「ファイアライトプラスネオ」です。
ここでは、ファイアライトプラスネオの、5つの特徴を紹介します。
1:とにかく熱衝撃に強い
800度に加熱した後に冷水をかけても割れない防火ガラスは、熱膨張がほぼゼロの耐熱結晶化ガラスのファイアライトだけです。
火災時のスプリンクラーや、消火活動の際の放水に耐えられます。
2:高い衝撃安全性
合わせガラスなので、万が一、人や物が衝突して割れても破片の飛散や落下、脱落がほとんどありません。
「JIS R 3205合わせガラス」における、耐衝撃試験の基準を満たしています。
3:自然破損のおそれがない
耐熱強化ガラスには、外力が加わっていないにも関わらず、不意に破損する問題がありますが、ファイアライトはその心配のないガラスです。
4:メンテナンスフリー
合わせガラスなので、経年劣化がほぼありません。
5:優れた遮音性能
ファイアライトプラスは、JIS A 4706に規定される遮音等級の、T-2等級に相当する遮音性能を有します。
防火ガラスは施設における火災の備えとして重要!
本記事では9月1日の防災の日にあわせて、網入りガラスの特徴や役割を解説。そして、近年では網入りガラスではなく、もっと耐熱性に優れた透明な防火ガラスが誕生し、住宅を含め多くの公共の場の防災に、活用されている現状をお伝えしました。
今回はご縁があり、優れた耐熱性を誇り高い衝撃安全性を持ち合わせた「ファイアライトシリーズ」を開発・販売している、日本電気硝子さんに取材させていただきました。
筆者も改めて「網入りガラス」について勉強できましたし、最新の防火ガラスについても知ることができました。恐らくこれから商業施設などで、網入りガラスを探してしまうでしょうね。