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中国におけるゲーム/カジノ規制の波をどう受け止めるか?

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

ゲームメディアのAutmatonが報じた中国ゲーム規制に関する文書の内容には、彼の国の厳しい規制方針を逐次追いかけてきた私自身も衝撃を受けております。

中国のゲーム規制にまつわる文書が話題に。『原神』ウェンティや『アズールレーン』『信長の野望』『真・女神転生IV FINAL』など名指し

https://automaton-media.com/articles/newsjp/20210929-177345/

今年9月24日から26日にかけて中国・北京で開催された「北京国际游戏创新大会(北京国際ゲームイノベーション会議)」の内部資料がインターネット上で流通し、議論を呼んでいる。同大会は、政府主導で年に一度開催されるカンファレンスであり、テンセントをはじめ大手ゲーム会社が参加した。ここでのプレゼンテーションに用いられた資料が、インターネット上に流出したと見られている。

1)価値観、2)文化性、3)歴史観、4)宗教の4分野に亘って、具体的なゲームタイトル名とその理由を挙げながら規制対象とすべきと論ずるこの文書、中国総局の監査専門家であるChen Zhenyu氏の名前で発表されているものであり、当局の公式な方針を示したものではないですが、その考え方をかなりの部分で反映させた文書であることは間違いないと思われます。

中国では1ヶ月ほど前に規制当局によるビデオゲームの規制強化方針が報道され、これまでも「18歳未満は平日は90分以内、週末は3時間以内、午後10時から午前8時までは禁止」とされていた厳しい制限を「金、土、日曜と祝日の午後8~9時のみ」と更に厳格化することとなりました。その他、コンテンツ内容も含めて様々な規制強化が行われる中、中国ゲーム産業は現在、その対応に追いまくられるというパニック状態と言って良い様相であります。以下、同じくAutomatonからの転載。

中国でゲーム業界団体が“自主規制ガイドライン”を発表。実名認証厳守でボーイズラブも自主規制、213企業が協賛する厳しい条件

https://automaton-media.com/articles/newsjp/20210925-176916/

この様に進む中国での厳しいビデオゲーム規制でありますが、実は同じ方向性で規制強化方針が発表され、大騒動が起こっているのがマカオのカジノ業界であります。中国の特別行政区として国内唯一ギャンブルが合法化されているマカオでありますが、2022年に予定されている現行のカジノ運営ライセンスの更新にあたっての、カジノ制度改革方針が発表されたばかり。その内容が、市場側が予想していたよりも相当程度に厳しいものであったため、方針発表の翌日から香港のカジノ関連株が大暴落をするなど大きな混乱が起こっています。以下AFPBBより転載。

マカオ、カジノ規制強化検討 関連株が下落

https://www.afpbb.com/articles/-/3366388

政府はカジノの運営を監督し、地下銀行を取り締まる目的で、許可業者の取締役会に自らの代表を送り込みたい考えだ。マカオは中国で唯一ギャンブルが認められているが、政府は近年ギャンブル業界への監視を強めている。今回規制強化の対象となる可能性があるのは、ライセンスを所有するカジノ企業6社。ライセンスは2022年6月に更新期限を迎える。

現段階ではマカオ政庁からは未だその詳細は発表されておらず、大まかな規制方針を示したリストが開示されているのみであるわけですが、それだけで既に大騒動が起こるほど厳しい条件が既に示されている状況。中でも最も懸念されていることの一つが、上記AFPBBも報じている「各業者の取締役会に政府代表を送り込む」という規制。その目的は「地下銀行の取り締まり(いわゆるキャピタルフライト対策)」とされていますが、要は行政当局による各事業者の「直接管理」というものでありまして、今後各事業者に対する中国共産党の影響力がゴリゴリに強化されてゆくであろう事が確実な方向性となっています。その辺は、共産主義国ならではの発想であると言って良いでしょうか。

上記、マカオ政庁が示した規制強化方針に関しては、現在日本で言うところのパブリックコメントのプロセスに有り、各民間事業者側は何とかその規制強化方針を押し戻そうとしているわけですが、個人的には民間事業者側の押し戻しはなかなか難しいだろうな、とは思っているところ。このマカオのカジノ規制強化方針は冒頭でもご紹介したビデオゲームの規制強化方針と共に、習近平政権の社会秩序統制方針を強力に反映して行われているもの。テンセントやネットイースなど、既に世界を席巻していると言っても良い中国の巨大ゲーム産業が束になってかかっても、その規制強化方針を押し戻せなかった様な状況でありますから、マカオのカジノ産業がどんなに抵抗をしようとも「規制強化」というその方針が翻ることは、まあないんじゃなかろうかなと。その様に思っている次第です。

逆に言うのならば、我々日本も含めて自由主義圏側にいる産業人としては、この中国における強力なゲーム/カジノ規制の波をどの様に受け止め、それを「乗りこなすか」が非常に重要なポイント。ここ十余年のゲーム産業・ギャンブル産業は中華系企業が巨大な国内市場を背景にして世界を席巻するという中華覇権の時代であったわけですが、その構図はこれから急速に変化してゆくことになるのだろうなと思っておるところ。特に私が専門ど真ん中とするカジノ産業においては、長らくアジア圏の中核市場となってきたマカオの代替市場として、2020年代後半には始動すると思われる日本市場がどの様なポジションを確保してゆくのか。非常に重要な局面であり、少なくとも我々にとっては有利な状況になってきているのは間違いないと思うところ。引き続きマカオの動向を見守りつつ、来たるべき未来に備えてまいりたいと思うところであります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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