桜を見る会Factcheck(2) 菅官房長官「反社会的勢力の定義は定まっていない」は不正確
チェック対象
結論【誤り】
2007年に犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」が策定され、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』」と定義されている。
<検証>
菅官房長官は27日午後の記者会見で、「桜を見る会」に「反社会的勢力」とされる人物が出席していた問題について問われ、次のように答えた。
Q 桜を見る会について伺います。きのう、長官が会見で過去の桜を見る会に反社会的勢力の人が出席していたことを認める旨の発言をされたことを受けて、野党側は進退にかかわる問題だと長官の責任について問う姿勢です。長官は桜を見る会に反社会的勢力が出席していたことについて、責任をどう捉えているか聞かせてください。
A この点についてでありますけれども、まず、桜を見る会の個々の招待者については、招待されたかどうかを含めて、個人に関する情報であるために従来から回答は差し控えてきています。その上で、内閣委員会において質問がありました。桜を見る会の会場におきまして、私自身多くの方と写真撮影をし、委員ご指摘の人物と面識はありませんし、個々の招待者の参加について承知しておりませんと申し上げた上で、本人確認、またセキュリティーの向上策について、今後全般的な見直しの中で必要な対応をしていきたいということを申し、答弁したところです。
反社会勢力についてさまざまな場面で使われることがあり、定義は一義的に定まっているわけではないと承知しております。また、昨日の記者会見で、この場でありますけれども、このようなやりとりを念頭に、もし桜を見る会の会場で一緒に撮った写真があるというなら、私自身は把握していないが、その方、その方は結果として会場にいらしたんだろうということを申し上げました。反社会勢力が桜を見る会に出席していたということは私自身は申し上げておりません。
「反社会勢力」の定義について政府・行政機関が言及しているものがないか調べたところ、法務省のウェブサイトに「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」が公表されていた。これは、犯罪対策閣僚会議(閣議決定により2003年9月設置)の幹事会申合せ文書で、指針の冒頭で次のように記されている。
そして、「反社会的勢力」の定義については、脚注であるが次のように記していた。
この定義は、金融庁の「主要行等向けの総合的な監督指針」にも引用されている。金融庁は行政処分の判断基準の一つに「反社会的勢力の関与の有無」を設け、「反社会的勢力の関与」を理由にした行政処分を下したこともある(金融庁ウェブサイト参照)。菅長官は「一義的に定まっているわけではない」という言い方をしているが、政府機関で「反社会的勢力」について上記と異なる定義を示したものは確認できなかった。
ただ、金融庁に対するパブリックコメントで「いかなる属性・行為をもって反社会的勢力と認定するかは、明確に統一された基準がない」との指摘があり、金融庁が「反社会的勢力はその形態が多様であり、社会情勢等に応じて変化し得るため、あらかじめ限定的に基準を設けることはその性質上妥当でない」と回答したことがある。
他方、民間では、日本証券業協会は定義を設けているが(日本証券業協会ウェブサイト)、「反社会的勢力」の統一的な定義が定まっているわけではない。
<結論>
政府は公式に「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』」と記して反社会的勢力の排除のための指針を定め、金融庁もこれに基づき行政処分を行っている。政府を代表する菅官房長官の発言は、公式の定義がないとの意味にとらえられるが、定義がないとは言えない。ただ、具体的な集団や個人が、定義された「反社会的勢力」に当てはまるのかどうかは、基準が明確でなく、見解が分かれる場合もあると考えられる。よって、「不正確」と判定した。
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この記事は、ニュースのタネより転載。ニュースのタネのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。