桜を見る会Factcheck(1) 「行政処分を受けている人が招かれていた」は不正確
チェック対象
結論【不正確】
ジャパンライフがマルチ商法で行政処分や家宅捜索を受けたことは事実だが、行政処分を受けたのは2016年以降。「桜を見る会」の招待状が送られたとされる2015年春の当時、まだ行政処分は受けていなかった。ただ、2014年に行政指導が行われた事実はある。
<検証>
政府主催「桜を見る会」に不適切な人物が招待されていたとの疑惑に関連して、立憲民主党の枝野幸男代表は11月29日の記者会見で「マルチ商法で行政処分や家宅捜索などを受けられている方が、桜を見る会に招かれていたことが明確になった」と発言した。
野党は国会で、ジャパンライフ元会長が2015年春の「桜を見る会」に招待されたことを宣伝していた問題を追及しており、枝野氏のいう「マルチ商法で行政処分や家宅捜索などを受けられている方」はジャパンライフの山口隆祥元会長のことと考えられる。
ただ、消費者庁のジャパンライフに対する行政処分が行われたのは2016年以降で(4回)、家宅捜索が行われたのは今年だった。消費者庁は2014年に行政指導を行っているが、当時、公表していなかった。
行政指導は、業務停止命令などの「行政処分」とは異なり、強制的な措置ではない。招待状が送られたのが行政処分の前であったか後であったかでも、意味は異なる。枝野氏の発言は、時系列を正確に説明していないため、ジャパンライフが「行政処分」を受けた後に「桜を見る会」に招待されていたとの誤解を与える可能性がある(枝野氏の真意は「後に行政処分を受けるような人物が招待されていた」ことであったとも考えられるが、定かでない)。
共産党の田村智子議員も11月25日の参議院行政監視委員会で、ジャパンライフについて「2014年に行政処分を受けていた」と事実誤認の発言をしていた(動画)。
「行政処分を受けている人が桜を見る会に招かれていたことが明確になった」という枝野氏の発言はフジテレビが報道した。東京新聞も、この問題を報じた際、「共産党が入手した資料によると、元会長は招待されたが、当日は欠席したという。同社は一四年以降、消費者庁から相次いで行政指導や行政処分を受け、一七年にマルチ商法の認定を受けていた」と指摘したが、行政処分が2016年以降に行われたことは明示していなかった。ツイッター上では、2014年にジャパンライフが行政処分を受けていたとの誤情報(正しくは、2014年に行われたのは行政指導)も出回っている。
これまで判明した事実関係を時系列で整理すると、次のようになる。
ジャパンライフと「桜を見る会」をめぐる経緯
- 2013年ごろ
消費者庁、ジャパンライフによる被害を認知し、調査開始=発表・報道なし。(2019年11月29日、参議院地方創生および消費者問題に関する特別委員会で日本共産党・大門議員が指摘)
- 2014年9、10月
行政指導(書面の記載不備等)=発表・報道なし。2017年4月、日本共産党の調査で判明
- 2015年3月
桜を見る会(4月開催)にジャパンライフ会長を招待、宣伝チラシに記載=しんぶん赤旗11月26日
- 2015年9月
消費者庁がジャパンライフに立入り検査=発表・報道なし。2017年4月、日本共産党の調査で判明
- 2016年12月
消費者庁が行政処分(3ヶ月の業務停止)=発表・報道あり
- 2017年3月
消費者庁が行政処分(9ヶ月の業務停止)=発表・報道あり
- 2017年9月
ジャパンライフ被害対策中部弁護団が結成される
- 2017年11月
消費者庁が行政処分(取引停止命令12ヶ月)=発表・報道あり
- 2017年12月
消費者庁が行政処分(業務停止命令など)=発表・報道あり
- 2018年1月
衆議院予算委員会で、ジャパンライフ元会長に桜を見る会の招待状が送られていた問題が取り上げられる。(2018年1月30日、衆議院予算委員会で国民民主党・大西健介議員が指摘)
- 2018年2月
ジャパンライフが破産申立て=消費者庁長官談話・報道あり
- 2019年4月
ジャパンライフや元会長宅など関係先を家宅捜索=報道あり
政府は山口元会長を招待した際にジャパンライフの問題を認識していたのか
枝野氏は29日の会見で「この商法が問題をはらんでいるのではないかということは、従来から社会的に問題になっていたなかでのこと。こうしたマルチ商法的なものに推薦、評価した方が政府関係者であれば、その責任から逃れることはできない」とも発言している(会見映像)。
ジャパンライフのマルチ商法は1985年、国会でも取り上げられるほど大きな問題になったことがあった(衆議院商工委員会流通問題小委員会、同年12月10日)。ただ、新聞データベースで調べたところ、2000年以降、「桜を見る会」の招待状が送られたとみられる2015年3月までに、ジャパンライフが消費者庁から行政指導や行政処分を受けたとか、被害が出ているといった報道は確認できなかった。
ただ、今後、政府がジャパンライフ元会長を「桜を見る会」に招待した際に、ジャパンライフの問題性をどこまで認識、把握していたのかも、焦点になる可能性がある。
ジャパンライフが作成した宣伝チラシには「安倍晋三内閣総理大臣から山口会長に『桜を見る会』のご招待状が届きました」「山口会長は出張のご予定があるため、出席できません」と書かれていた。2015年3月に送られたとみられる招待状の写真が掲載され、「ご予定があるため、出席できません」との表現から、4月の「桜を見る会」開催前に作成し、宣伝に利用されていた可能性が高い。
山口元会長が「総理枠」で招待されたとの指摘もある(立憲民主党によると、内閣府側は「総理・長官等の推薦者」の枠で招待したと認めた)。
政府は山口元会長を「桜を見る会」に招待する前からジャパンライフの問題を認識していたのかどうか。
2000年以降はジャパンライフの問題が取り上げられることはなかったが、消費者庁は、2014年にジャパンライフに対して「行政指導」を行っていたことを認めている。行政指導の具体的内容は明らかになっていないが、共産党は「書面記載不備」であったと指摘している。
共産党の大門実紀史議員は、2013年ごろから消費者庁がジャパンライフによる被害を認知して調査を開始していたことや、2016年12月の1回目の行政処分が2015年1〜3月の被害事実に基づいて行われたことなどを指摘している(11月29日、参議院地方創生および消費者問題に関する特別委員会)。これらの事実関係は消費者庁がまだ認めていないが、事実だとすれば、2015年3月に招待状を送る前から、消費者庁内部ではジャパンライフに関する問題を認識していた可能性が高い。招待状を送ったのは内閣府だが(消費者庁は内閣府の外局)、情報共有等に問題があった可能性がある。
<結論>
ジャパンライフがマルチ商法で行政処分を受けたのは2016年以降で、「桜を見る会」の招待状が送られたとされる2015年3月ごろの時点ではまだ行政処分は受けていなかった。ただ、2014年に行政指導は受けていた事実はあり、消費者庁が問題を認識していた可能性は否定できない。よって、「不正確」と判定した。
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この記事は、ニュースのタネより転載。ニュースのタネのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。