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冬季五輪開催。ウインタースポーツ初心者のため会場、競技、強豪国など紹介。やはり「あの国」が圧倒するか

坂東太郎十文字学園女子大学非常勤講師
延慶区の会場で整備するボランティアの姿(写真:ロイター/アフロ)

2月4日から北京冬季オリンピックが開催されます。人によってはなじみの薄い競技や意外な強豪国もたくさん。筆者もウインタースポーツを初めて取材した時がそうで困り果てました。その際に作ったメモや経験が少しでも役に立てばとご紹介いたいます。

日本になぞらえれば「長野五輪」?

 冬季五輪は「雪」か「氷」を前提にして行われる競技ですから縁のない地域や国が世界中にあります。直近の夏季五輪である東京大会が205の国と地域(+難民選手団)の約11000選手が参加したのに対して平昌大会(直近の冬季大会)は同92・3000選手と半分から3分の1程度。種目数(金メダル数と一致)も約3分の1。

 開催都市の北京市の面積は昨年夏季五輪を開催した東京都の約7.5倍です。北京は08年に夏季大会を開いていて「『同一都市で夏も冬も』なんて可能なのか」と思いがちですが、この広さのお陰。

 何も天安門広場で競技するわけでなく、屋内で可能な「氷」系こそ中心部ですが「雪」系の一部と「氷」系のうち屋外の「そり競技」が市街から75キロ離れた延慶区、大部分の「雪」系は同じく180キロも離れた隣の長家口市で実施します。日本の縮尺で当てはめると75キロとは「東京-栃木」間、180キロは「東京-新潟・長野」間といった感じ。「雪」系に限って日本でなぞらえれば東京五輪と銘打って実は長野五輪とのイメージ。

 ただ長家口市は十分寒いながら乾燥していて人工雪にほぼ全面的に頼るもよう。人工雪自体は日本のスキー場でもありふれた存在ですが、屋内など人工ゲレンデを除くと「雪を降らせる」というより「保つ」役割が大。かつて筆者が取材で触ってみた印象だとフワフワのパウダー状から連想したら氷に近いものでした。天然における状況の悪化は「ビシャビシャ」であるのに対して人工雪は元から硬めで気温が低いままだとどんどん氷化していきます。

「雪」競技が「4」で「氷」も「4」

 各競技の起源は北欧・中欧および北米北部が主。わかりやすくわけてみました。(カッコ)内は種目数で各種(金銀銅)メダル数と一致します。国際オリンピック委員会(IOC)が定める「競技」や国際競技連盟(IF)の区分とは異なるのでご注意を。「増」とは前回の平昌五輪から増えた種目数です。

【雪】

●スキー

・クロスカントリー(12)

・ジャンプ(5)1増

・ノルディック複合(3)クロスカントリー+ジャンプ

・バイアスロン(11)クロスカントリー+射撃

・アルペン(11)

・フリースタイル(13)2増

●スノーボード(11)1増

【氷】

●スケート

・スピード(14)

・ショートトラックスピード(9)1増

・フィギュア(5)

●そり(橇)競技

・ボブスレー(4)

・スケルトン(2)男女

・リュージュ(4)

●アイスホッケー(2)男女

●カーリング(3)

 さらに簡略化すると、【雪】は北欧(ノルディック)を起源とした①「ノルディック競技」(スキーで走る・歩く・上り下りする・飛ぶ)がクロスカントリー・ジャンプ・複合・バイアスロンで計31。中欧のアルプス山脈を語源とする②「アルペン」(11)、北欧および北米由来で1988年から加わった③フリースタイル(13)、履き物が異なる④スノーボード(11)は北米由来で98年から五輪競技となっています。ただしIFとの関係性が複雑で「アメリカのX Gamesの方こそ主戦場」という考え方も根強く残っているのです。

 【氷】のうち⑤スケート(計28)は低地で貿易国として発展した結果、多数整備した運河および河川が凍結したのを移動する手段として普及したオランダが主な発祥国。⑥「そり競技」(10)はスイスです。⑦アイスホッケー(2)の男子プロが北米のナショナルホッケーリーグ(NHL)で大人気なのは知られる通り。⑧カーリング(3)はイギリス発祥で英連邦のカナダで発展しました。

人口540万人の国が冬季大会総メダル獲得数歴代1位

 発祥・発展の歴史と結果は密接に関係しています。

 ①「ノルディック競技」(31)で群を抜く強さを発揮するのが発祥地にあるノルウェー。同国は平昌大会まで通算金メダルおよび総メダル獲得数歴代1位で平昌のみでも金14、総計39とトップでした。うちノルディック競技だけで金10、総計26と荒稼ぎ。人口約540万人を勘案すると通算2位のロシア(旧ソ連を含む)、3位アメリカ、4位ドイツをしのぐ成績には脱帽です。

 ⑤スケート(計28)も発祥地オランダが平昌で金8、総計20と同国が獲得したすべてを占めています。人口約1740万人はノルウェーより多いものの米ロなどよりは圧倒的に少ない。一点集中して母国の名をほしいままにしているのです。

 平昌大会でノルウェーと同数の金計14を得たドイツは欧州大陸発祥の⑥「そり競技」(10)で金6と圧倒。他に①「ノルディック競技」でノルウェーのプレゼンスが唯一低い「複合(3)」の金を独占しました。

 平昌大会で金計11のカナダは起源の1つである③フリースタイル(13)で金4と強みを見せるほか、アイスホッケーが盛んな国柄らしく⑤スケート(計28)で金4を獲得。金計9のアメリカはX Gamesの本場らしく④スノーボード(11)で金4を得ています。

羽ばたくか日本のX Games勢

 日本勢の平昌大会の結果は金4銀5銅4で計13。金の内訳はスピードスケート女子3、フィギュア男子1。スピード女子は92年大会の橋本聖子(銅)を嚆矢とする伝統があって、今回も有望視される小平奈緒、高木美帆の両エースがいます。フィギュア男子は10年大会の髙橋大輔(銅)の後、2大会連続で制した「絶対王者」羽生結弦が健在。

 大いに期待されるのが男女ともに東京夏季五輪でメダルラッシュを現出したスケートボードと同じく冬季X Gamesで複数活躍している選手群。

 X Gamesおよびそこで成績を残している選手ほど米欧と日本での知名度が異なる(若者は別として)競技は珍しい。ゆえに最近の大会で日本勢が信じられないほどの好調を維持しているのも人口に膾炙していません。もしかしたらその乖離を思い知る五輪になるかも。

 ジャンプは男女とも金が期待されるところ、注目はやはり高梨沙羅。彼女はW杯で男女を通じた通算最多勝利記録61勝を有するのみならず人気薄に苦しんでいたジャンプ女子の草創期から競技を引っ張ってきた「創業者」でもあります。平昌大会では銅メダル。「ぜひ金を」と願われる半面で五輪の結果がどうであれ既に十分に評価されるべき至宝でもあるのです。

 前回「銅」のカーリング女子は同じ「ロコ・ソラーレ」チームが出場します。五輪切符を手に入れるための国内および世界最終予選は激闘の連続でした。レギュラー4人全員が所在地の北海道北見市出身。なかでも司令塔の藤澤五月は高梨とはアングルこそ違えども「伝説の天才」といえます。

十文字学園女子大学非常勤講師

十文字学園女子大学非常勤講師。毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事などを務める。近著に『政治のしくみがイチからわかる本』『国際関係の基本がイチから分かる本』(いずれも日本実業出版社刊)など。

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