「刺客」小池百合子の「乱」が9年前の夏の記憶を呼び覚ます
フーテン老人世直し録(233)
文月朔日
小池百合子衆議院議員が都知事選への立候補を表明した。05年の郵政選挙で「刺客」の第一号に名乗りを上げ、郵政民営化に反対する勢力を自民党から一掃することに力を与えた彼女が今度は何を狙うのか。
フーテンには07年の参院選で自民党を惨敗させたにもかかわらず、退陣することを拒んだ安倍総理を退陣に追い込む役割を演じた彼女の姿が甦る。安倍総理と小池百合子議員とは因縁の間柄なのである。
小泉政権下で郵政民営化を巡り自民党が分裂状態に陥ったとき、兵庫6区を地盤としていた小池氏は誰よりも早く選挙戦で「刺客」になることを宣言し、郵政民営化法案に反対票を投じた小林興起衆議院議員の地元東京10区からの立候補を表明した。
それにつられるように次々に「刺客」が現れた郵政選挙は郵政民営化派が圧勝し、自民党は296議席を獲得して小泉総理は「自民党中興の祖」となることができた。自民党分裂で「漁夫の利が得られる」とたかをくくっていた民主党の岡田克也代表は結党以来の大敗を喫し即日辞任を表明する羽目に陥った。
小池氏は小泉政権時代には環境大臣として「クール・ビズ」の旗振り役を演じていたが、第一次安倍政権になると、安倍総理は郵政造反組を復党させる方針を採り「刺客」となった議員たちは冷遇されることになる。
その中で小池氏は国家安全保障問題担当の総理補佐官となり、失言で辞任した久間章生防衛大臣の後任として初の女性防衛大臣になる。一方で郵政造反組を復党させたところから支持率の低下を招いた安倍政権は07年の参院選で歴史的大敗を喫する。
しかし安倍総理は自分が議長を務めることになる洞爺湖サミットを意識したためか退陣を拒み、開票が終わらないうちから続投を表明する前例のない行動に出た。こうして07年の暑い夏がやってくる。
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