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ロッキード事件の真相を闇に葬るためのNHKドキュメンタリー

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(238)

文月某日

40年前の7月27日午前6時、フーテンは東京地検の玄関前でロッキード事件で逮捕される政治家を待ち受けていた。前夜、夜回り先の川島興特捜部長がいつもとは異なる行動を見せたことが政治家逮捕を予感させ、TBSは早朝から検察庁の建物を見張っていた。

午前5時、見張り役から検察幹部が出勤してきたと連絡があり、フーテンはすぐに宿泊していた赤坂のホテルから東京地検に向かった。玄関先には数社の記者しかいなかったが、混乱を避けるロープが張られるのを見て、政治家逮捕の予感は確信に変わった。

午前7時半、夏の日差しが強くなりかけたころ黒塗りの車が地検の玄関先に滑り込み、右手を挙げて降りてきたのは予想もしない田中角栄前総理大臣であった。TBSはすぐに放送を差し替え、田中逮捕の報道特別番組に切り替えた。

その時NHKの司法担当記者は現場にいなかった。泊まり勤務の警視庁担当記者が警視総監を探して確認を取ろうとしたが、警視総監も検察の田中逮捕を知らされていなかった。確認に手間取ったNHKが特番を組んだのはTBSより1時間以上も遅れてからだ。関係者にはよく知られた話である。

ところが23日に放送されたNHKスペシャル「ロッキード事件の真実」では、実録ドラマではあるがNHKの司法担当記者が現場にいて車から降りてくる田中角栄氏を見るシーンがある。ドラマ仕立てであれば捏造は許されるということだろうか。

翌24日の続編はドキュメンタリー番組だったが、こちらにも意図的な編集が施され「ロッキード事件の真相」は捻じ曲げられている。原点とも言うべきアメリカがロッキード事件を暴露した理由についてはほとんど触れず、アメリカ政府による軍用機P3CとE2Cの売り込み工作が背景にあったことを「新たな真相」のように見せているが、ここでも田中角栄の名前だけが出てくるように作られている。

アメリカ側がロッキード事件で公表した日本人の秘密資金受領者は児玉誉士夫だが、E2Cの売り込みでアメリカ証券取引委員会が公表した秘密資金の受領者は岸信介、福田赳夫、中曽根康弘、松野頼三の4人である。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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