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EURO2024。欧州で進む二極化。続々と誕生する強力ウイングとウイングのいない5バックの関係

杉山茂樹スポーツライター
ジェレミー・ドク(ベルギー・右)(写真:ロイター/アフロ)

 ユーロ2024。前回のこの欄で、後ろで守る5バックのチームが増えている。その数3割強。揺り戻し現象が起きていると述べた。しかし、その一方で優れたウィンガーの存在も数多く目に止まる。

 基本的に5バックにはウインガーは存在しない。マイボールに転じたとき5-2-3(3-4-3)になる5バックを除き、サイドアタッカーはウイングバック1人に限られる。

 そのウインガーの活躍がいつになく目立つということは、二極化が進んでいるという言い方ができる。約7割弱を占める攻撃的サッカー陣営と3割強を占める守備的サッカー。攻撃的サッカーが当たり前だった時代から、両者が対立する時代を迎えている。1990年代後半の欧州に戻った感じだ。

 だがかつては、4-2-3-1の3の左右、4-3-「3」の「3」の左右を無理なくこなすことができる典型的なウインガーは少なかった。時代は変化した。新しい時代が到来している。

 5バックになりやすい3バックと、オーソドックスな4バックとの違いはサイドの枚数に現れる。前者は先述の通りウイングバック1人であるのに対し、後者はサイドバック(SB)とウイングの2人になる。フィールドプレーヤーは10人なので、5バックが真ん中に人員を5人配備できるのに対し、オーソドックスな4バックは4人となる。

 サイドの人数で勝るのはオーソドックスな4バック陣営であり、真ん中での人数で勝るのは5バック陣営だ。

 サイドと真ん中。数的優位を発揮しやすいのはサイドだ。タッチライン際はピッチの廊下と呼ばれる。相手のプレッシャーは片側からしかこない。360度、四方からプレッシャーを浴びる真ん中より推進力を得やすい。まさに滑りやすい場所なので、そこでの数的有利不利は鮮明になる。おのずとピッチ全体に波及しやすくなる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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