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EURO2024で増加傾向を示す5バック。「後ろで守る」から「前で守る」への変更は難しい

杉山茂樹スポーツライター
EURO2024(写真:ロイター/アフロ)

 スイス、ハンガリー、スコットランド、デンマーク、セルビア、ポーランド、チェコ、ジョージア。以上は、ユーロ2024のグループリーグにおいて、5バックになりやすい守備的な3バックをメインに戦ったチームだ。その数8。本大会に出場した全24チームの3分の1に当たる。

 2022年カタールW杯では32チーム中10チーム程度だった。微増である。しかしこれがユーロ2016との比較になると一変する。当時はウェールズ、イタリアの2チームのみだった。オプションで短時間、採用したチーム(ドイツ、イングランド、ハンガリー)を含めても計5チームだった。

 大幅に増えている。今大会は、先述の8チームに加えオランダ、ポルトガル、イタリア、ウクライナもある試合において3バックを採用している。中には必ずしも守備的とは言えないものも含まれるが、いわゆる3バックが増加していることに変わりはない。

 この傾向は欧州サッカー史を振り返れば、揺り戻し現象に見える。1990年代後半からの数年間、欧州では5バック同然の守備的な3バックが全体の4割程度を占めていた。この欄では幾度となく述べてきたが、チャンピオンズリーグ(CL)決勝でレアル・マドリードがユベントスを倒した1997-98シーズンあたりから、守備的な3バックの衰退は顕著になる。2000年代の前半から先述のユーロ2016にかけては、攻撃的サッカーが世の中の9割を占めるに至った。日本国内ではともかく、欧州で守備的な3バックに遭遇する機会が最も減った時期だった。

 現在は1990年代後半の状況に近づきつつある。森保監督的な指導者が珍しい存在ではなくなっている。日本のサッカー界は欧州の流れから10年遅れていたので、同じ土俵上で括ることはできないが、パッと見、森保サッカーが異端に見えにくくなっていることは確かである。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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