47歳独身。同級生には子や孫がいる。婚活話ができる機会はなかなかありません~スナック大宮問答集61~
「スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催150回を超えた。のべ3000人ほどと飲み交わしてきたことになる。
筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。
その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めてオンラインで対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。
***ナオコさん(仮名。独身女性、47歳)との対話***
結婚相手が見つかったら嬉しいけれど、それが参加の主目的ではありません
――ナオコさんは5年以上前からスナック大宮に何度か参加してくれていますね。参加理由を教えてください。
一番は大宮さんに会うことです! 参加者一人ひとりにちゃんと声をかけて気遣いをしてくれることに感動しています。
――すみません。完全に言わせちゃっていますね(笑)。
いえいえ。本当ですよ~。それから、参加している方々が安心できる感じのいい人が多いので、仲良くなれる人がいたらいいなと思っています。
――ナオコさんは以前から婚活をしていましたよね? スナック大宮で結婚相手候補を探している、という側面はありますか。
それもちょっとはありますけど、主目的ではありません。学生時代の友だちはほとんど結婚していて子育て中だったりするんです。孫がいる人もいます。職場も含めて、婚活や晩婚の話ができる機会はなかなかありません。スナック大宮でそういう話が聞けるのは嬉しいです。
もちろん、他のお話も楽しく聞いています。先日は、副業でローチョコレートを作って販売しているという女性がいました。私の周りには副業をしている人はいないのですごく興味深かったです。
――それはよかったです。参加者の中には「たまには私の話を聞け!」という気持ちを隠し持っている方もいます(記事はこちら)。普段は仕事でインタビューをしている僕も、酒場ではそういう気分になることが多いです。ナオコさんは大丈夫ですか?
私は他の人に話しかけたりする勇気すらないほうなので……。私に向かって何かしゃべってくれるだけで嬉しくなっちゃいます。話題は何でも構いません。
20年以上働いた常駐先があっさり契約打ち切り。社員と協力会社の壁は厚いと知りました
――なるほど……。お仕事は何をされているんでしたっけ?
高校を卒業して以来、ほぼ一貫してシステム関係です。プログラミングはできません。客先に常駐して、ある端末の設定などを担当しています。前のお客さんは20年以上もお世話になりましたが、コロナのときに契約が切れてしまったんです。今は新しいお客さんのところで働き始めたばかりなのでそれほど忙しくありません。
――20年以上も常駐というのは、ほとんどその会社の社員ですね。
はい。とても良くしていただき、私もできることは何でもやりました。自分の業務範囲だけでなく、電話応対やお茶入れなどの雑用も含めてです。真っ黒なものでも、お客さんが白と言ったら白なのだと思って働いていました。だから、何度も契約を延長し続けてくれたのだと思っています。でも、契約を切られるときは意外なほどあっさりだったので、やっぱり社員さんと協力会社の壁は厚いんだなと思いました。
――その会社の社員になりたかったんですか?
それはもちろんです。でも、大手企業だったので学歴的にも難しいのかなと思いました。私にできることはすべてやったので後悔はありません。
――次の客先で心機一転し、しかも今は忙しくない。婚活のチャンスとも言えますね。
婚活は以前にめっちゃ頑張りました。結婚相談所にも入っていたのですが難しかったです。私は最低限の清潔感さえあれば見た目などの条件は相手に求めていません。15歳以上年上の60代男性とお見合いしたこともあります。でも、断ったり断られたりして結果は出ませんでした。
――例えばどんなケースですか?
私は「いいな!」と思ったけれどお断りされてしまったのは、ボランティアで子どもに柔道を教えている方でした。見返りを求めない精神が素晴らしいと感動したのですが……。お断りされた理由はよくわかりません。
他の人とのお見合いでは、いきなり「料理はしますか?」と聞かれて、「味付けは濃くしてほしい」と要求されたこともあります。好きになって結婚したら私が家事をするのは構いません。でも、初対面の話題は他にあるだろうと思ってお断りしました。
――「いいな」と思った人には断られ、「あなたじゃない」という人から求められる。婚活あるあるですね……。今はお休みの日はどう過ごしているんですか?
スイーツ巡りや美術館巡りです。私はミーハーなので、有名な画家や彫刻家の展覧会があるとよく行きます。美術や世界史の教科書に載っているような絵を生で見られると感動しますね。思った以上に大きな絵だったりして印象が全然違うんです。美しいものにはパワーがある! ストレス発散にもいいなと思っています。
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特定の誰かに好かれる前に、場そのものから好かれて輝くと様々な特典が舞い込んでくる
以上がナオコさんとの対話だ。客の一人ひとりに気を遣っているとほめてもらったが、それはスナックの店主やイベントの主催者が果たすべき最低限の役割だと思う。その場の支配者とも言える立場なので、寂しそうな客がいたら話しかけて、他の人に迷惑をかけすぎている客がいたら注意しなければならない。
筆者の場合は、友人や常連客には勝手に楽しんでもらうことにして、初対面かつ初参加の客と多めにコミュニケーションをとるようにしている。店主が常連客とばかり盛り上がっているような飲食店を他山の石としているつもりだ。なお、自分が客の場合はそのような気遣いは一切しない。気の合う人とだけしゃべっている。
婚活に関して言えば、ナオコさんのように店主や主催者(スナック大宮の場合は筆者)から好かれることは重要だと思う。店主や主催者は「場」そのものなので、愛されると後光のように魅力の源になり、他の客からモテる要因になるからだ。アルバイトに誘われるぐらい気に入られると良い。
特定の誰かに好かれる前に、場から好かれて輝く。それができれば様々な「良い話」が舞い込んでくる。良縁が混じっているかもしれない。