【生まれ変わるヒルトン東京】よみがえるTSUNOHAZU、はじまる新宿の食
食のヒルトン東京として期待に応える
「【生まれ変わるヒルトン東京】マーブルラウンジは今になって何故ディナーブッフェを始めるのか?」の中で、ヒルトン東京2階フロア全面リニューアルについて触れました。
2階には中国料理「王朝」、日本料理「武蔵野」、「チェッカーズ」、「鉄板グリル」といった名だたるレストランがあり、2014年5月末までに全てのレストランが一旦クローズしました。
リニューアル後は一体どうなるのでしょうか。
30年の節目を迎えた
マーケティング コミュニケーションズ マネージャー 五戸若茂子氏は「2014年年11月を目途に新しくオープンする。食の分野で確固たる地位を築いてきたヒルトン東京として、お客さまのご期待に応えたい」と意気込みを語ります。
ヒルトン東京は1963年に国内初の外資系ホテルとして永田町に開業し、その後に東京都の機能が移転するのと同じタイミングで1984年に西新宿へ移転しました。
五戸氏が言うように食の分野で注目されているのはもちろん、東京の重要なスポットで存在感を示してきたと言えるのではないでしょうか。新宿に開業してちょうど30年という節目を迎える2014年に新しく生まれ変わるというのも興味深いところです。
原点の「TSUNOHAZU」
2階フロアの企画を担当するマーケティングコミュニケーションズ コーディネーター 笹田有紀氏は「2階フロアの名前は『TSUNOHAZU』。新宿のこのあたりはかつて『角筈』と呼ばれており、アルファベットで表記した。新宿という場所を大切にし、改めて原点に返り、生まれ変わる想いを込めた」と語ります。「グランド ハイアット 東京やオープン数ヵ月後にミシュラン2つ星を獲得したフランス料理『ドミニク・プーシェ』を手掛けた気鋭の建築家である谷山直義氏がデザインした」とデザインに対しても自信を持っているとします。
重要なグリル
総料理長フィリップ・エガロン氏は「2階にはグリル、日本料理、中国料理、バー&ラウンジ、ペストリーショップを新設する」として、それぞれの説明を始めます。
「グリルは最も重要なレストランの一つと考えている。グリルでは滴った脂が肉に大きく影響する。そのため、神戸ビーフも素晴らしいが、脂が多いので難しい。肉質等級がA3くらいの褐毛和種にこだわり、赤身肉の旨味を徹底的に追求する」とポリシーを述べます。
エージングビーフやブルーロブスターも
具体的なアイテムは「北海道のテンダーロインやアメリカンのTボーン、ニュージランドのリブアイ。黒豚やペリゴールの鶏肉、ラム肉も検討している」、さらには今流行の熟成肉に関しては「エージングビーフも取り入れてお客さまの様々な好みにお応えしたい」として、今まで以上に素材によりこだわるモダンなグリルになると言います。
魚介類については「肉以上に厳選する。ノルウェーのサーモン、銀鱈、ブルーロブスターなどよいものだけを使いたい」、さらには「サイドディッシュはココットでご提供して、タパスのように気軽に召し上がっていただきたい」と、重要なレストランであると言うだけあって構想は尽きません。
ちなみに、ブルーロブスターとはブルターニュ産のオマール海老で、通常のオマール海老に比べて3倍も4倍も高価な、食味の素晴らしい希少な食材です。
コンディメントを充実
新しい試みは他にもあります。フィリップ氏は「ソース、塩、マスタードといったコンディメントを充実させる」として、1階マーブルラウンジにある豊富なコンディメントを連想させ、「お店で食べてみていただいて、お気に召したら購入できるようにもしたい」とさらに進んだ考えを提案します。
続けて「ペッパーを中心としたスパイスにこだわっている。スパイスソムリエが様々なスパイスを載せたカートを押して、お客さまのテーブルを回りたい」と、斬新なプレゼンテーションのアイデアを披瀝します。
料金やシステムについては「ディナーでは3つ程度の値段に絞り、好きな3品を選んでいただくなど、自由度を高める」とし、理由を問われると「お客さまが分かり易いように明朗会計にしたかった。お得になるので、たくさんご利用いただきたい」と答えます。
中国料理には北京ダックのオーブンや点心を
今回のリニューアルで唯一レストラン名を継承する「王朝」。中国料理について、フィリップ氏が「モダンだがクラシックを大切にする」と述べると、その理由として、五戸氏は「中国料理『王朝』というブランドは高く評価されていて、ファンのお客さまも多い」と説明します。
新しい要素に関して、フィリップ氏は「柳谷雅樹料理長には中国などへ行ってもらい、新たなメニューやサプライズな演出を考えてもらっている」としながらも、「石造りの北京ダック専用オーブンを導入したり、点心師を採用し、日本における点心の概念を覆す洗練された点心や中国菓子を充実させたい」と自身でも構想を練っています。料金体系については「グリルと同じように、ディナーは3つくらいの値段に絞りシンプルにする」と一貫性を持たせるとします。
続けて「日本料理では寿司、鉄板焼、懐石料理をご提供する。寿司では長いカウンターを設けてダイナミックにし、鉄板焼では専用の個室をご用意して寛いでいただく。雰囲気のよいモダンな日本料理になるはずだ」と説明します。
世界トップクラスのペストリーショップを
ペストリー出身であるだけにパンやスイーツにもこだわるフィリップ氏は「ペストリーショップは美しさにこだわり、世界トップクラスの店にしたい」と力強く語ります。フランス高級チョコレート「ヴァローナ」主催のデザートコンクール「C3世界大会」で、2010年と2012年に準優勝を果たしたペストリーシェフの坂倉加奈子氏に大きな期待をかけている証左でもあるでしょう。
「フランスの伝統菓子と内装やパッケージなどのプレゼンテーションを大切にする。典型的で王道のパティスリーにしたい」として、フィリップ氏のフランスに対する愛情を、フランス料理がない代わりにペストリーショップに全て注いでいるように感じられます。
降り立つと、そこにはバー
フィリップ氏が「バーはとても楽しい場所にしたい。そのために誰もが一流と認めるバーテンダーを採用した。インタラクティブ性があり、トレンディーなバーを創造する」と説明すると、笹田氏は「見られることを意識した大人のバーになる。1階のオーセンティックなセント・ジョージバーとは全く差別化される」と補足します。さらには「エレベーターを降りると、そこはいきなりバーの中になっている。瞬く間に非日常へと誘う」と、サプライズな演出もあると話します。
メニューについて、フィリップ氏は「他では見掛けられないような、薬草を使ったカクテルをご提供する」と自信を持って話します。
ヒルトン東京のレストランが変われば新宿の食が変わる
五戸氏は「ヒルトン東京には<ホスピタリティ業界の先駆者であるヒルトン>、そして<ホテルが位置する新宿>という2つのアイデンティティがある。ヒルトン東京のレストランが変わることにより、新宿の食が変わるというぐらいの気持ちでプロジェクトに取り組んでいる」と述べます。ヒルトン東京のレストランはテレビや雑誌で取り上げられることが多く、注目されていることを鑑みれば、新宿の食をリードしているとことは確かでしょう。
フィリップ氏は新宿に留まらず、「日本の食はとてもクオリティが高いので、日本人は誇りに思うべきだ。世界の名声あるシェフはみんな日本に行きたがる。日本に来れば本当の美を体現できると思った」と日本に対する想いを述べます。
誰も見たことがなく、食べたいことがないものへ
「TSUNOHAZU」=「角筈」は、新宿が好きな浅田次郎氏の「鉄道員(ぽっぽや)」に収録されている「角筈にて」にも登場する昔の地名です。「角筈にて」は郷愁感や喪失感を漂わせながらも、過去を受け入れて、新しい未来へと向かっていく名作です。
「休みの日も新しいインスピレーションを得るために、常にインターネットで料理の写真ばかりを見ている」と真面目に話し、「誰も見たことがなく、食べたいことがないものを作りたい」と目を輝かせて語るフィリップ氏は、どのようにして喪失した「角筈」から「TSUNOHAZU」をよみがえらせるのでしょうか。
その答えが生まれるのは、2014年11月です。
情報
詳しくは公式サイトをご確認ください。
関連記事
【生まれ変わるヒルトン東京】マーブルラウンジは今になって何故ディナーブッフェを始めるのか?
【生まれ変わるヒルトン東京】TSUNOHAZUはどのようによみがえったのか?
参考
TSUNOHAZUについてはレストラン図鑑で詳しく紹介していますので、ご参考にどうぞ。