Yahoo!ニュース

【生まれ変わるヒルトン東京】マーブルラウンジは今になって何故ディナーブッフェを始めるのか?

東龍グルメジャーナリスト
マーブルラウンジのディナーブッフェ

マーブルラウンジでディナーブッフェを

マーブルラウンジ
マーブルラウンジ

ヒルトン東京「マーブルラウンジ」はオープンした1984年という早い時期からデザートブッフェを始めたり、アーティスティックなブッフェで新しい時代を切り開いたりと、常にブッフェのブームを先取りする先駆者です。

マーブルラウンジのブッフェは、和洋中のどれもが充実し、エッグステーションが目を引くモーニングブッフェから始まり、ダイナミックな肉料理と豊富な前菜でバランスがとれたランチブッフェを経て、時に隣の「セント・ジョージバー」まで利用しなければならないほど集客力があるデザートブッフェで幕を閉じます。ディナーではアラカルト中心のメニューを提供していました。

しかし、そのマーブルラウンジでも、2014年5月26日からディナーブッフェが始められたのです。ブッフェで高い知名度を誇るマーブルラウンジで、どうして今までディナーブッフェが行われていなかったのでしょうか。

アラカルトを提供して棲み分け

マーケティング コミュニケーションズ マネージャー 五戸若茂子氏は「マーブルラウンジは2007年9月20日にリニューアルして、24時間営業のオールデイダイニングとなった。2階にあるチェッカーズは地中海ディナーブッフェが人気なので、マーブルラウンジではディナーブッフェを行わず、アラカルトをご提供することにした」と理由を説明します。

確かに、チェッカーズで行われているディナーブッフェが人気となっているので、差別化するためにも、マーブルラウンジではアラカルトメニューを提供した方がよいでしょう。その方がラウンジやコーヒーショップとしての機能が高まり、ホテルとしての総合力も高まります。

禁断ショコラ
禁断ショコラ

この棲み分けが功を奏して、マーブルラウンジでは「ビーフショートリブ」「禁断ショコラ」「ブラックフォレスト桜ボンブ」といった話題のアラカルトメニューが生まれました。

アラカルトも順調であり、棲み分けもうまくいっているにも関わらず、どうして今ディナーブッフェを始めることになったのでしょうか。

地中海ディナーブッフェをさらにグレードアップ

2013年5月に総料理長に就任し、アーティスティックブッフェで革新したフィリップ・エガロン氏は「チェッカーズがある2階は、フロア全面をリニューアルして大きく生まれ変わる。そのため2階フロアは2014年5月末で全てクローズした」と話し始めます。

続けて「好評を博していた地中海ディナーブッフェがなくなってしまうのではお客さまに申し訳ないので、マーブルラウンジで行うことにした」としながらも、「だからといって、全く同じものを行うのでは進歩がない。ブッフェで高い評価を受けているマーブルラウンジだからこそできることを考えて、チェッカーズの地中海ディナーブッフェをさらにグレードアップさせた」と熱を込めて語ります。

食材が最も輝く場所

デフューザーで加湿された食材
デフューザーで加湿された食材

マーブルラウンジのディナーブッフェについて、フィリップ氏は「食材が最も輝く場所である『マーケット』をイメージした。新鮮で質の高い野菜や魚介類を、単にご提供するだけではなく、デフューザーで加湿して最高の状態を保ったり、バスケットに食材を盛ってフランスのマルシェにいるような賑やかで楽しい雰囲気を演出している」と説明します。

バジルやタイムによる装飾
バジルやタイムによる装飾

プレゼンテーションについては「ガーデンやナチュラルもテーマにしており、タイムやバジルなどのハーブをあしらった」として、「シンプルが最も美しい。しかし、シンプルは最も難しい」と独自の哲学を真摯に述べます。

出来立てにこだわる

総料理長フィリップ氏によるパスタマシーンの実演
総料理長フィリップ氏によるパスタマシーンの実演

フィリップ氏が「パスタステーションを設け、その場で生パスタを作って茹で、ご提供している。そこまでパスタの実演にこだわっているブッフェは他にない」と自負するように、パスタを茹でるところからではなく、作るところから行っているブッフェは他に思いあたりません。

ブッフェ以外であっても、ここまで出来立てにこだわっているのは、その場でパンを醗酵させて焼いているミシュラン2つ星のフランス料理「ナリサワ」くらいでしょうか。

他にも「シーザーサラダやリゾットをパルミジャーノ・レッジャーノの器で和えてご提供している。もちろん、ローストビーフといった定番もある」、デザートについては「本格的なイタリアンドルチェにも力を入れた。実演のアフォガードは絶対に食べていただきたい」と勧め、「ひとつのブッフェでイタリア料理のコースを存分に楽しめる」と説明します。

ディナーブッフェのメニューをご紹介しましょう。

シーザーサラダ

シーザーサラダ
シーザーサラダ

ミックスレタスに、エンダイブ、トレビス、チェリートマト、水菜、ツナ、ベーコン、スモークチキン、オリーブ、ハラペーニョ、ドライトマトを自由に加えて、パルミジャーノ・レッジャーノと和えます。ドレッシングもイタリアン、ハーブ、サウザンアイランド、シーザーが用意されていて、オリジナルのシーザーサラダを作ることができます。

ローストサーロインビーフ バルサミコソース

ローストサーロインビーフ
ローストサーロインビーフ

定番のサーロインのカッティングサービスです。グレイビーソースなどではなくバルサミコソースをかけているので、さっぱりと刺激的な味に仕上げられています。

リゾット

リゾット
リゾット

リゾットもパルミジャーノ・レッジャーノで和えて提供されます。オリーブ、チェリートマト、ツナ、水菜など、好みのものを加えて作ってもらえます。シーザーサラダとリゾットで、大きなパルミジャーノ・レッジャーノが2つも使われているのは壮観です。

カスタニャッチョ

カスタニャッチョ
カスタニャッチョ

カスタニャッチョは栗粉を使ったトスカーナの郷土菓子で、日本ではあまり見掛けられません。栗粉が使われているので、味わいと香りがよいです。他ではあまり食べられない貴重なイタリアンドルチェです。

アフォガード

アフォガード
アフォガード

バニラアイスクリームにエスプレッソを合わせたイタリアンドルチェで、ビターで大人の味です。アイスクリームが溶けてしまわないように、その場で作った出来立てをすぐに提供しています。

情熱があり過ぎる

フィリップ氏は総料理長という立場であるにも関わらず、ランチブッフェ、デザートブッフェ、ディナーブッフェの開始時にはマーブルラウンジに赴き、自らやり方や手本を示して教えるほど熱心です。このことに対しては「私の欠点は情熱があり過ぎることだ。教える時には熱心になり過ぎないように、落ち着いて話をするように心掛けている」と笑って話します。

マーブルラウンジのディナーブッフェは、「ひとつのことを考え始めると、答えを見付け出すまで徹底的に追求する」と話すフィリップ氏が導き出したひとつの答えなのでしょう。

次の記事では、ヒルトン東京2階のフロア全面リニューアルについてご紹介します。

情報

詳しくは公式サイトをご確認ください。

関連記事

【生まれ変わるヒルトン東京】よみがえるTSUNOHAZU、はじまる新宿の食

参考

すみれ草201

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

東龍の最近の記事