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広い範囲で黄砂が襲来 目視による観測の減少とひまわり8号以降のカラー画像による観測

饒村曜気象予報士
北海道に接近中の日本海北部の濃い黄砂(4月12日13時)

低気圧からのびる寒冷前線の通過

 令和5年(2023年)4月12日は、間宮海峡付近の発達した低気圧からのびる寒冷前線通過により、西日本から北日本の広い範囲で、一時的に強い雨が降りました(図1)。

図1 地上天気図と日本列島を通過中の帯状の雲(4月12日12時)
図1 地上天気図と日本列島を通過中の帯状の雲(4月12日12時)

 また、南西諸島は晴れたり曇ったりとなり、北部では所によりにわか雨がありました。

 しかし、寒冷前線の後から移動性高気圧が進んできたため、西日本から北陸、北海道では次第に晴れ間が広がりました。

 しかし、移動性高気圧の中では下降流が発生しています。

 現在、偏西風にのって中国大陸から顕著な黄砂が日本上空に飛来しています(タイトル画像参照)ので、高気圧通過時には、上空の黄砂が地表付近に降りてくる見込みです(図2)。

図2 黄砂予報(4月13日9時の黄砂分布予報)
図2 黄砂予報(4月13日9時の黄砂分布予報)

 お出かけの際はマスクを二重にしたり、洗濯物は部屋干しにするなど、対策を行うようにしてください(図3)。

図3 黄砂の注意点
図3 黄砂の注意点

黄砂の観測

 黄砂の地上での観測は、観測者による有人観測(目視観測)です。

 測候所の無人化が進んだ昨今では、有人の気象官署数が約3分の1の約50カ所に減っており、地方気象台等の観測の自動化も進んでいますので、黄砂などの目視観測は全国の11カ所しかありません。

 今回の黄砂では、4月13日3時の段階で、東京と那覇を除く9地点(札幌、仙台、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島)で黄砂を観測しています。

 なお、今回のように大規模な黄砂の場合などは、各気象台の判断で目視観測を実施し、地方情報や府県情報に付して発表していますので、これを含めても黄砂の観測は約50カ所しかありません。

 しかし、気象衛星ひまわりは、静止気象衛星としては世界で初めてカラー画像でも観測を行っていますので、黄砂や火山の噴火などの観測も可能となっています。

 このカラー画像での観測が始まるまでは、見やすさのために色を付けて表示することがありましたが、新しい情報が得られていたわけではなかったのです。

 平成26年に打ち上げられたひまわり8号以降は、現在使われているひまわり9号も含めて、可視光の3つの色(青、緑、赤)で観測して合成し、トゥルーカラー画像と呼ばれる、実際の見た目での観測が加わっています(タイトル画像参照)。

 テレビなどで、「ひまわりでは黄砂がはっきり映っている」という報道がなされていますが、昔から黄砂がはっきり映っていたわけではありません。

【追記(4月13日11時30分)】

 気象庁は4月13日6時37分に東京で黄砂を観測したと発表しました。目視観測を行っている11地点のうち、那覇を除く10地点で黄砂を観測したことになります。

 黄砂によって視程が悪くなりましたが、気象庁が黄砂観測を発表した時の視程は、札幌で5キロ、高松、新潟、福岡で8キロで、東京を含めた6地点では10キロ以上でした。

高気圧と低気圧が交互に通過

 今週は、高気圧と低気圧が交互に通過する見込みです。

 移動性高気圧が日本の東海上に去った、4月14日には、東シナ海で低気圧が発生し、週末には日本列島を横断する見込みです(図4)。

図4 予想天気図(4月14日9時の予想)
図4 予想天気図(4月14日9時の予想)

 日本付近は春に多い天気変化となっていますが、熱帯低気圧がフィリピンを東から西に通過し、南シナ海に入る見込みです。

 この熱帯低気圧は、一時、台風に変わるという予想となっていました。

 台風1号の発生とはならなかったのですが、そろそろ夏の気配となっています。

 週末にかけて低気圧の通過ということは、低気圧は上昇流ですので黄砂は地上付近にはおりてきません。

 ただ、低気圧の通過後は、再び西日本から黄砂に覆われる見込みです(図5)。

図5 黄砂予報(4月15日21時の黄砂分布予報)
図5 黄砂予報(4月15日21時の黄砂分布予報)

 春は黄砂の季節でもありますので、しばらくは黄砂に注意が必要です。

東京の気温変化

 令和5年(2023年)の東京は、1月下旬から2月上旬にかけて厳しい寒さがあったものの、2月に入ると暖かい日が多くなり、3月には記録的な暖かさとなっています。

 このため、3月14日には過去最早タイでさくらが開花しています。

 そして、さくらの開花後にちょっとした寒気が南下してきたため花冷えとなり、開花から満開の期間が少し長くなっています。

 また、3月22日の満開の後にも寒気が南下してきたため、再度の花冷えとなり、見頃が終わるまでの期間が少し延びていますが、例年に比べれば、早いさくらの季節の終わりでした。

 これまで、最高気温が25度以上という夏日は、3月24日と4月11日の2回ありますが、ともに25.0度とギリギリでした(図6)。

図6 東京の最高気温と最低気温の推移(4月13日~19日は気象庁、4月20日~28日はウェザーマップの予報)
図6 東京の最高気温と最低気温の推移(4月13日~19日は気象庁、4月20日~28日はウェザーマップの予報)

 今後も、最高気温、最低気温ともに平年より高い日が続き、寒気が入って下がっても平年並みでという傾向は続きそうです。

 季節は冬から春真っ盛りとへ移ってきました。

タイトル画像、図1、図2、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページ。

図6の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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