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「オンライン」では、絶対に得られない大事なこと

横山信弘経営コラムニスト
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

■リアルがいいのか、オンラインがいいのか?

4月に入ってから、毎週のようにオンラインセミナーを実施している私は、とても大きな手ごたえを感じている。

リアルの私のセミナーは、ロジカルなメソッドを、激しく猛々しい勢いで喋りまくるスタイルが特徴だ。アドリブ全開で、時には話している自分も予測できない方向へと暴走することもある、「リアル感」「生々しさ」がウリだった。

「一度たりとも同じセミナーを味わえない」

多くの人から、このように言われることがある。だからか、何度でも足を運んでくれる経営者、マネジャーの方々がいる。

いっぽう、オンラインセミナーではそれが通じない。

最初のうちは、同じようなスタイルで実施した。しかしパソコンやスマホの画面を通じて「リアル感」「生々しさ」を伝えることは難しかった。

「悪くはないけど、やっぱり横山さんの話はリアルでないと」

と言われることが多かったのだ。もっと画質や音質を良くすることで、リアル感を出せるだろうかと考えた。しかし何度もチャレンジしたが、うまくいかなかった。

そこで思い起こしたのが「プロ野球」だ。

私はプロ野球が好きだが、球場へ足を運ぶことがほとんどない。球場で観戦する楽しみは十分に理解しているが、テレビ観戦も別の意味でおもしろいと思っているからだ。

いちばんは、選手の表情や動きがすぐ近くに見えるメリットだ。選手とベンチとのやり取り、雰囲気も味わえて興味深い。

球場で味わう楽しさ、興奮とは違う意味で、テレビ観戦は価値があると考えている。

オンラインセミナーに挑戦しはじめたころ、まるで歌手のコンサートのように考えていた。観客のいないコンサート会場で歌い、それを生配信するイメージだ。しかし、当然このようなスタイルなら、「やっぱり歌は生で聴いたほうがいい」と言われて当然だ。

だから私はプロ野球を参考にした。

受講者を飽きさせないよう、まず、講師である私自身が間近で見られるようにした。ワイプに映る自分の表情、手の動きをセミナー内容に合わせて工夫し、変えた。

事前に準備したプレゼン資料を次々と切り替えること、受講者を参加させるアンケート、Q&Aといったイベント性も積極的に取り入れた。

その結果、受講者の皆さんからは「リアルとは全然違って集中できた」「ものすごい緊急感を味わった」「緊張したけど楽しい!」と言われるようになった。

リアルだと、講師との間に隔てるものがないから勘違いしてしまいがちだ。野球でもそうだが、同じ球場にいることで、選手と「同じ空気を吸っている感」を味わえる。そのため、選手と近いところにいると勘違いする。

しかし、実際は違う。遠い。

選手の表情や、一挙手一投足まで観察できない。それこそ外野の席に座ったら、ピッチャーとバッターとの駆け引きなど、まったく見えない。すぐに気持ちがそれて、スマホを触っているうちに絶好の場面を見逃したりすることがある。

それはセミナーでも同じことだ。

同じ会場にいても、講師はとても遠くに見える。

■「オンライン」の最大のメリットは?

セミナーのシナリオはもちろんのこと。喋り方、資料のつくり方、参加のさせ方などを工夫することで、オンラインセミナーで実績をつくった。

1ヵ月近くですぐに対応できたのは、2年も3年も前から、オンライン会議やオンライン商談をしてきた過去があるからだ。

日本全国にクライアントがいる当社は、部下たちが率先して会議や商談、そしてコンサルティングセッションもオンライン化に取り組んできた。

オンラインの長所は、なんといっても主導権を握れることだ。ホスト側がボートを用意し、そのボートにお客様や会議出席者を乗せる感じに似ている。

とくに商談では、威力を発揮する。

お客様のところへ足を運べば、お客様の「ホーム」で私たちは戦わなければならない。当然、分が悪くなる。

コンサルティングセッションのときそうだ。相手をリードしなければならない立場なのに、クライアント企業の会議室などで実施すると雰囲気にのまれてしまうことがある。

とくに社長が進める経営改革に後ろ向きな幹部がいる場合、リアルだと大変だ。幹部たちのオーラによって「改革反対の空気」をつくられやすくなるからだ。

しかしオンラインでの開催にすれば、非常にやりやすくなる。パソコンの画面を通じてだと、その「圧」は伝わってこない。

会議でも商談でもセッションでも、そしてセミナーでも、どんな場合でも、オンラインで実施する場合は、徹底的に事前準備をする。

準備をしておけばおくほど、理路整然と相手に「正論」を伝えることができ、オンライン上では主導権を握ることができる。オンラインでは「同調圧力」といった空気を利用できないからだ。

■「リアル」でないとダメなこととは?

いちばんのベネフィットは移動コスト(お金・時間・労力)が激減することだ。しかし、それ以外にも書き切れないほど、Zoomといったオンライン会議ツールを使うメリットはある。

コロナの影響で、オンラインでのランチ、飲み会、会食も経験した。オンラインを積極的に取り入れることで、短時間でいろいろなことが実現できた。まさに「働き方改革」の恩恵を受けている。

たとえコロナが終息しても、この流れは止まらないだろう。とはいえ、忘れてはならないことがある。

オンラインでは手に入らないことがあることも事実だ。そう。誰もがそう思っているはずだ。

リアルでないとダメのこともたくさんある。

しかし、それを正しく言語化できる人はどれだけいるだろうか。もちろん、

「キャッシュレスもいいが現金もいい。というか、現金のほうが、お金のありがたみを感じられていいじゃないか」

という情緒的なベネフィットではなく。

「給料は現金で手渡ししてもらったほうが、もらった感がある」

と言っていた人が昔たくさんいたが、今はそんなことを口にする人などいない。このように情緒的ベネフィットは、いずれ機能的ベネフィットに打ち負かされる。

だから「オンラインより、やっぱりリアルのほうがいいよ。なんだかんだ言ってもさあ」などと主張しても、それは単なる感覚的なものだろうと一蹴されてしまう。

アナクロ(時代錯誤)と言われないためにも、わかりやすい機能的ベネフィットを意識し、そしてリアルとオンラインの使い分けに役立てよう。

■オンラインでは絶対に得られないこと

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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