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伝統を重んじる大相撲における「令和のファンサ」の実態とは? 元幕内・木村山の岩友親方に聞く

飯塚さきスポーツライター
「大相撲ファン感謝祭2022」の企画に携わる岩友親方(写真:日本相撲協会提供)

連日盛況の大相撲秋場所。本土俵は序盤戦ながら、3日目を終えて、すでに全勝の役力士が消えるという混戦ぶりを見せている。鶴竜親方が語ったように、出稽古や巡業の解禁が、力士たち全体のパフォーマンスの底上げにつながっているのだろう。

今回は、そんな秋場所をファンサービスで盛り上げる社会貢献部の取り組みに注目。10月6・7日に控える「大相撲ファン感謝祭2022」にもスポットを当てる。イベントを中心になって進める、元幕内・木村山の岩友親方に話を伺った。

商品開発と動線にも工夫

今回の秋場所では、特に新商品が多く出ている印象。リニューアルしてさらに洗練された、おなじみのお土産「力士タオル」から、レトルトの「湯豆腐のたれ」、さらには人気力士の顔が大きくプリントされた「力士の顔ハンカチ」、名物・焼き鳥を模したポーチなど、インパクト十分な変わり種までそろう。

「“食欲の秋”ということで、山崎製パンとコラボして、国技館やきとり風味パンや北の富士カレーのランチパックなども販売しています。まあ、お相撲さんは年中(食欲の)秋みたいなもんなんですけどね(笑)。パンの売り場や、今場所からの新商品もあるガチャポンは2階に置くことによって、1階席のお客さんに2階にも来ていただけるような動線づくりを工夫しました」

2階にあるパンの売り場(写真:筆者撮影)
2階にあるパンの売り場(写真:筆者撮影)

ちなみに、岩友親方に今場所の土俵の見どころを伺ったが「えっ、相撲の話? 相撲はわからないんだよね…」ということで、ご愛敬。と、これは冗談だが、実際本当になかなか本土俵を見られない状況が続いているそう。

17年ぶりの「大相撲ファン感謝祭」開催に向けて

では、相撲も見られないほどに、岩友親方は現在、何に力を入れているのか。それは、10月6・7日に国技館で開催される「大相撲ファン感謝祭2022」だ。ファン感の開催は実に17年ぶり。「1分間で色紙に押した手形の最多数」「同時に四股を踏んだ最多人数」のギネス記録に挑戦する企画や、「関取と卓球」「塩まき体験」「大相撲のど自慢」など、楽しい企画が目白押しだ。お昼から夜9時まで続く同イベントの開催概要等詳細はホームページを参照いただきたい。

岩友親方に、今回のファン感の見どころや、開催にかける意気込みについて伺った。

「楽しんでもらいたい気持ちがあふれるあまり、企画が多すぎるのもよくないなと思い、頑張って絞り込みました。一部有料のスペースもありますが、無料でも楽しめるように最大限工夫しています。力士たちとふれあえる多くの企画や、子どもたちへ向けた行司・呼出し体験なんかは無料です。普段は力士にしかスポットが当たらないけど、呼出しさんに呼ばれないと力士は土俵に上がれないし、行司さんが“はっけよい”と言わないと力士は相撲を取れません。床山さんがいないと髷も結えない。そんな裏方さんと呼ばれる皆さんに注目してもらえる企画も取り入れました。大相撲のいろいろな裏側を、ぜひ楽しんでもらいたいですね」

ファン感へは、大相撲ファンクラブの無料会員登録をすれば誰でも入場可能。物販や飲食など、すべてはリストバンド決済で、まるでテーマパークのような感覚だ。「大相撲の魅力は距離」と岩友親方が話すように、コロナ禍で忘れかけていた大相撲ならではの近い距離感で、力士や親方衆、協会員の皆さんとのふれあいを、多くのファンの皆さんに楽しんでいただきたいと願う。

スポーツライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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