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全日程チケット完売の大相撲九州場所がスタート 元大関・魁皇の浅香山親方が語る見どころと戻る相撲人気

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
九州場所担当部長の浅香山親方(写真:すべて筆者撮影)

本日からいよいよ大相撲九州場所が始まる。1年納めの場所開催に向けて尽力してきたのは、今年初めて九州場所担当部長に就任した、元大関・魁皇の浅香山親方だ。自身も福岡県直方市出身の親方。地元でさまざまな場所に足を運んでPRに励んだ結果、場所前に15日間すべての日程が札止め(チケット完売)となった。場所開催目前に、親方に話を伺った。

始球式などPR奔走も「力士と担当親方衆のおかげ」

――まずは、チケット完売おめでとうございます。年間で九州場所が最もチケットを売るのが難しいといわれるなかでの完売。1年通しての札止めは28年ぶりとのこと。親方は何が札止めの要因と感じていますか。

「若手力士が頑張っているからですよ。それが一番。大の里が頭ひとつ抜けたこと、ほかの関取衆がそれに刺激を受けてよりよい相撲を取っていること。そういったことが、相撲人気につながってきたのかなと思います。私は何もしていないですよ。あいさつ回りに顔を出して、協力していただく方へPRしていくといったことは我々の仕事で、もちろん、チケットが売れたことは大変喜ばしいですが、あくまで場所はこれから。15日間終わるまで気は抜けません」

――親方は先日、福岡ソフトバンクホークスの始球式も務められました。感想は。

「正直、ちゃんと投げられなかったんだけど(笑)、ああいう場に立たせてもらえること自体、ありがたいし普通経験できることでもありません。ましてや、あの場で相撲の宣伝ができるなんてなかなかない。うれしかったです。いろんなところに足を運べば、新しく得るものがあるので、大事なことだと思いました」

――地元・直方市の盛り上がりはいかがですか。

「はい、何度か足を運びました。武蔵川部屋が宿舎を構えてくれているので、町がにぎやかになるし、その部屋の力士を応援してくれる人も増えますよね。そういった地域との交流をしっかりしていくのが大事です」

――力士たちの活躍に加え、親方はじめ九州場所担当の親方衆のご尽力が、今回の札止めにつながったのだろうと思います。

「さっきも言った通り、一番は力士たちの頑張りです。とにかくいい相撲を取ってくれたので、たくさんの人が見てくれています。あとは、担当の親方衆。自分はただ見ているばっかりだけれども、みんな本当にしっかり仕事をして、かなり疲れていると思います。みんなが、とにかく札止めまでもっていこうという気持ちでやってきてくれたので、そういったことが全部積み重なってここまで来たと思います」

見どころの多い今場所 大の里の強さも

――今場所ならではの楽しみ方や新しいグッズなどはありますか?

「今回から、ベイマックスとコラボした新商品が出ます。それにしても、毎場所新しいグッズが出ていてすごいよね。担当の親方衆が考えて、こういった案も出してくれます。外にはキッチンカーもありますし、見に来るお客さんはこういうものも楽しみなんじゃないかなと思います」

今場所の新商品であるベイマックスのぬいぐるみと戯れ笑顔の浅香山親方
今場所の新商品であるベイマックスのぬいぐるみと戯れ笑顔の浅香山親方

――ファンの皆さんの土俵への期待や相撲人気を、親方自身が肌で感じることはありますか。

「どうしても大の里の話題が多くなってしまうんですが、大の里以外でも、いろんなところで、最近相撲がまた面白くなってきたねと言われることが増えました。実際、自分たちも見ていて力が入る相撲が多いと感じています。そういう相撲が増えれば、見ているほうも楽しいですから、力士たちにはそういった相撲を続けてもらいたいです」

――あとは土俵について。親方の思う今場所の見どころはどんな部分でしょうか。

「やはり一番の注目は大の里です。新大関の場所でどういった相撲を見せてくれるか。地位が人を作るとよくいわれるように、上がれば上がっただけの力を見せてくれると思います。一方で、豊昇龍や琴櫻は、いつまでも若手にチャンスを奪われていないで意地を見せてもらいたい。ご当所では、平戸海や正代、明生、佐田の海、美ノ海。地元に帰ればたくさんの人が応援に来てくれているでしょうから、いつもより力が出るでしょう。あとは、なんといっても尊富士。幕内に戻ってきました。まだ幕内2場所目ですが、どんな相撲を見せてくれるか、優勝する勢いだったらまた大変なことになるし、見どころはいっぱいありますよ」

――大の里関が話題の中心ですが、彼の強さはどんなところですか。

「圧倒的な圧力です。相手が上手かろうが何をしようが、圧倒的な力で前にもっていくでしょう。前に出ながらの攻めっていうのはやっぱり強いんです。相手に前に出てこられたら、あとは逃げるか投げるか引くかしかない。大の里からしたら、それだけ頭に入れておけば何とでもなる。だから前に出る力をつけるっていうのが相撲では大事なんです」

――親方が大の里関と対戦するなら、どう考えていくでしょうか。

「自分は現役時代、相手の研究をしたことが一切ありませんでした。相手が何をしてこようが、俺は俺の相撲をもっている。それを貫き通す。相手が誰でも関係ない。ほかのことはできないし、だからきっといつもと一緒ですね。ある意味楽なんですよ、立ち合い変化されたらどうしようかなーくらいしか考えなくていいから(笑)。でもね、相手の研究よりも、結局は自分の相撲を考えるのが一番だっていうことに、みんな気づかなきゃいけない。相手だって考えるし、いつも同じことをしてくるとは限りませんから。だから自分の相撲を鍛える。大の里がいまきっとそんな感じなんじゃないかなと思います」

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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